14 / 42
■14.昇り龍①
しおりを挟む
星吾と見た昨日の花火大会を思い出し、ルンルン気分で働く私。
「やぁ。るあちゃん。
また来たよ。頑張ってるね。」
その声にギョッとする…。
海の家にやって来た二人組のお客さん。
実は、この二人組……。
バイト初日に声をかけられ、
片方の男性に名前と自宅の電話番号を教えてしまっていたんです。
(アホです。私。)
教えてしまったのは理由がありまして……。
……その日はバイト初日とあって、全然大人の男の人の対処に慣れてなかった…っていうのもあったし、なんといっても彼らの『風貌』が恐ろしくて断ることが出来なかったのです。
声をかけてきた二人組の一人、『谷口』と名乗る20代後半くらいの男性は、背中全面と腕にかけて鮮やかな昇り龍が刻まれていた!
もう一人の人は、記憶にあまりないけれど、この人も背中に模様が入っていたと思う。
谷口さんは、龍さえなければ、ごく普通の青年の様にも見えるが……
物凄く落ち着いた穏やかな話し方で、機知に富んだ会話のセンスから、頭の回転の良い人なんだろうなという印象。
優しい笑みを浮かべる……でもその奥に何かあるような。アチラの業界の方らしい独特な雰囲気を漂わせていた。
お店で横暴な態度をとったことはない。
気前が良いし、良客である。
だけど、私は話しかけられるのが怖かった。彼らがとても苦手だった。
そりゃそうだ。
高校生だもの。
背中に龍なんて怖いに決まってるよね…… 。
「最近、家に帰ってないんだって?」
背中に龍を背負っている谷口さんは、私にそう言った。
谷口さんは、私が教えた自宅の番号に
電話をかけてきていた。
度々電話があり、その都度『今いない』と家族に居留守を使ってもらっていたのです。
「何か家に帰りたくない事情があるの?
俺で良ければ相談に乗るから話してみな。」
嘘をついている事を、この人に悟られてはならない。
下手な言い訳は言えず、返答に困り
「いえ、心配して下さってありがとうございます。大丈夫です。」
ただ引きつった作り笑顔を向けていた。
だが、きっと彼は気付いていた。
私が居留守を使っている事。
それを咎めないのが怖い。なんだかのまれそう。
谷口さんの雰囲気に。
谷口さんは口を開く。
「いつも、るあちゃんがここで一生懸命働いている姿を見るのが、自分の励みになるよ。
たまには息抜きに一緒に旅行でもどうかな?」
何故か大変、谷口さんに気に入られてしまっている。
「旅行」という言葉にサ──ッと青ざめる。
どうやったら穏便に断われるのか、未熟な私には言葉が浮かばず、、、
困っていた所に、「おーい!オネェちゃんオーダー!」と、タイミング良く他のお客さんに呼ばれたので、谷口さんに会釈をして、逃げる様にその場を去った。
注文を受け、オーダーを入れに厨房に入ると
「スゲ~。流石ぁ~!モテんじゃんw
なんだって?カワイイって言われたの?」
同じくオーダーを入れに来た金髪チャラ男、光くんに、谷口さんと私とのやり取りを空気読めない感じで茶化された。
「やぁ。るあちゃん。
また来たよ。頑張ってるね。」
その声にギョッとする…。
海の家にやって来た二人組のお客さん。
実は、この二人組……。
バイト初日に声をかけられ、
片方の男性に名前と自宅の電話番号を教えてしまっていたんです。
(アホです。私。)
教えてしまったのは理由がありまして……。
……その日はバイト初日とあって、全然大人の男の人の対処に慣れてなかった…っていうのもあったし、なんといっても彼らの『風貌』が恐ろしくて断ることが出来なかったのです。
声をかけてきた二人組の一人、『谷口』と名乗る20代後半くらいの男性は、背中全面と腕にかけて鮮やかな昇り龍が刻まれていた!
もう一人の人は、記憶にあまりないけれど、この人も背中に模様が入っていたと思う。
谷口さんは、龍さえなければ、ごく普通の青年の様にも見えるが……
物凄く落ち着いた穏やかな話し方で、機知に富んだ会話のセンスから、頭の回転の良い人なんだろうなという印象。
優しい笑みを浮かべる……でもその奥に何かあるような。アチラの業界の方らしい独特な雰囲気を漂わせていた。
お店で横暴な態度をとったことはない。
気前が良いし、良客である。
だけど、私は話しかけられるのが怖かった。彼らがとても苦手だった。
そりゃそうだ。
高校生だもの。
背中に龍なんて怖いに決まってるよね…… 。
「最近、家に帰ってないんだって?」
背中に龍を背負っている谷口さんは、私にそう言った。
谷口さんは、私が教えた自宅の番号に
電話をかけてきていた。
度々電話があり、その都度『今いない』と家族に居留守を使ってもらっていたのです。
「何か家に帰りたくない事情があるの?
俺で良ければ相談に乗るから話してみな。」
嘘をついている事を、この人に悟られてはならない。
下手な言い訳は言えず、返答に困り
「いえ、心配して下さってありがとうございます。大丈夫です。」
ただ引きつった作り笑顔を向けていた。
だが、きっと彼は気付いていた。
私が居留守を使っている事。
それを咎めないのが怖い。なんだかのまれそう。
谷口さんの雰囲気に。
谷口さんは口を開く。
「いつも、るあちゃんがここで一生懸命働いている姿を見るのが、自分の励みになるよ。
たまには息抜きに一緒に旅行でもどうかな?」
何故か大変、谷口さんに気に入られてしまっている。
「旅行」という言葉にサ──ッと青ざめる。
どうやったら穏便に断われるのか、未熟な私には言葉が浮かばず、、、
困っていた所に、「おーい!オネェちゃんオーダー!」と、タイミング良く他のお客さんに呼ばれたので、谷口さんに会釈をして、逃げる様にその場を去った。
注文を受け、オーダーを入れに厨房に入ると
「スゲ~。流石ぁ~!モテんじゃんw
なんだって?カワイイって言われたの?」
同じくオーダーを入れに来た金髪チャラ男、光くんに、谷口さんと私とのやり取りを空気読めない感じで茶化された。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる