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■13.花火大会③

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パン!パン!


開始の合図の花火が、乾いた音を立てて鳴る。


会場にアナウンスが流れると、夜空に色鮮やかな花火が次々に打ち上げられた。



「わぁ!デカ!!今の!!
めっちゃキレ~!!」

「スゲーな、ここ。
打ち上げ場所から近いから迫力あるな。」



星吾と花火を見ながら盛り上がる。
ふと周りを見渡せば、若いカップルだらけ。


ヤバ​─────ッ////

もしかして私たちも周りから見たら、カップルに見られてるのかな!?


そう思うと急にドキドキしてきた。



花火大会なんて、生まれてこの方家族としか行ったことがないイベント。


私の隣には、あの、中学時代に憧れた星吾くん。

よくよく考えると、夢の様なシチュエーション。
ドキドキしないわけがない。

今日って私の事、わざわざ誘いに来てくれたのかな?
暇つぶしで声掛けてきただけ…ではないのかな?
どういうつもりなの?星吾。


中学の時のように、ふざけた事するのは流石に飽きたよね?
もう高校生だから、そんなガキみたいな事するわけないか。


私を誘いに来たのは、友人として??
『仲間』って感じ?
いや、でもいいんだ。
ずっと友人でいる事も悪くないし。


けれども花火じゃなくて、星吾の横顔ばかり見てしまう。

見とれちゃうくらい整ったこの顔は、中学の頃、随分私の心を揺さぶってくれたね。


「花火見ないの?」


 ∑(*゚ω゚*)気付かれた!?


「見てるよ!もうそろそろラストかな?」



ヒュ~~~~

ドン! ドン! ドン!

華やかに重なり合いながら、連続打ち上げする花火。


花火が終わったら帰らないといけない。
まだ終わって欲しくない。
この状況をもうちょっと噛み締めたい。


その願いも叶わず、大輪の枝垂柳がキラキラと散った後、花火大会は終わりを告げた。


「綺麗だったね!」

「だなー。」


終了の余韻に浸る間もなく、周りの人々は立ち上がり、ゾロゾロと帰り始めた。


「グズグズしてると、またはぐれるぞ?」

「ハイ(汗)」


「即、帰るの?」

「ウン。もう帰らなきゃ。」


21時手前。
我が家では有り得ない帰宅の時間。
花火大会へ行く事を許されたのが奇跡の様なものだから、それ以上の駄々は捏ねられない。


「送ってく。」


星吾がそう言ってくれたから、自転車は海の家に置いたまま、最寄り駅まで、徒歩で送ってもらうことにした。


星吾は智に私を駅まで送ってから合流するとメールを送った。


駅までの帰り道。
人の波でギュウギュウ。
今度ははぐれないように、しっかりと手を繋いだ。


ドキドキドキ。

別れ際、駅の改札口の前で手を振る。

「またな。明日もバイト?頑張れよ。」

「ウン。誘ってくれてありがと。
楽しかった。」

「ん。じゃあな。」


ドキドキドキ。


………。

………。


あ~~~~~。
もう。


帰り際、キスされたかった​───!!!
(心の叫び)



桐島との初キス、アランくんとのキスを経験した私は、キスへ対するハードルが下がっていた。

だから、中学の時は星吾からのキスを拒否ってしまった癖に、図々しくそんな事思ってしまいました。


花火一緒に見れただけで、幸せだと思わなきゃなのにねw

…はぁ。こんな高ぶった気持ちの時こそ、されたかったなぁ。
上手くいかないね。
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