19 / 27
【19】修学旅行④
しおりを挟む『フレリアぁ、シよう。』
「何をですか…って、《剣精サマ》ではないですか。ご無沙汰しております。」
『そう、そう、それや。わいの惚れたんは、その笑顔や!』
フレリアはわいの言葉に首を傾げる。
かわいい! 好きだ!! いつか抱きたい!!!
わいは前世の記憶を振り返った。
わいの前世での記憶は、高3の夏までやった。
それ以降は受験勉強やら部活引退やら諸々あって、記憶の濃度が薄い気ぃがするんや。
それが、たった11ヶ月しか違わない癖にまだ高2で青春真っ盛りな弟がやっていたゲームで、わいの記憶はバラ色になった。
恋をしたのだ。
ゲームのヒロイン、フレリアに。
フレリアは、最終的には登場人物の男という男に抱かれる。
ロマンチックだったのは僅かで、酷かったり、激しかったり、変態チックだったり、性奴隷のようだったり、いろいろな方法でヤられ、喘いでいた。
でも、わいが好きになったのはエロシーンやない。その前の、相手役の男達と恋に落ちて、だんだんその気持ちを意識し、告白するまでの期間の、恋するフレリアに恋をしたんや。
それで、わいの成績は大変なことになった。
高3の夏休み直前、希望していた5番目の学校まで全てが圏外になった。
でもわいには、後悔などなかった。
フレリアの恋を見守ることだけが、わいの生きる希望やったからや。
でも、思えば《見守り方》があかんかったんやろう。
わいは、弟がプレイする画面の中のフレリアに恋をしていたから…
ある日、弟が言った。
わいのことを《キモい》と。
そんなに気になるなら、自分でゲームを買ってプレイしろと。
その日は朝からクーラーの調子が悪くて、室内は室外と同じくらい暑かった。
やから、たぶん弟もイラついていたんやろう。
どこからかナイフを取り出すとわいの胸をぷすりと刺し、そのまま引き抜いた。
弟は、あんなに震える手ではナイフを掴んでいられなかったのだろう。
その場にナイフを落とし、奇声を発しながら玄関を飛び出した。
わいは、その場で膝をつき、そのまま横に倒れた。
目の前には、わいの血の付いたナイフ。
もうダメだと思ったその時、わいの頭に走馬灯のように駆けたのは、フレリアと、一番応援していた《剣聖》と呼ばれていた攻略対象の騎士のスチル。
「生まれ変わったら、フレリアのいる世界に行きたい。《剣聖》と呼ばれる強い男になって、フレリアをあいつらから守りたい!」
『よし、その願い、儂が叶えてやろう。』
目が覚めたら、フレリアのいる世界で《剣精》になっていた。
──神様よ、《ケンセイ》違いやろうが!!!
わいがこの世界で最初に叫んだのは、この言葉だった。
で、それからウン100年…
わいはとうとう、フレリアに出おうた。
それにフレリアは、わいにキッスもしてくれた。
わいは《剣精サマ》の持つ様々な力を使って、フレリアを守った。
ケド、やっぱり実体をもっとらんのは不利や!
結局、将来の《剣聖》にフレリアを取られてもうた。
『フレリア、好きやで!』
「《剣精サマ》、まさか今日でお別れですの? フラグ立ってません?」
『わいは消えん! フレリアをイかすまでは!!』
「はぁ。でも《剣精サマ》、私をイかせてしまえば消えてしまうかもしれませんわ。でもそれは嫌。いつまでも、愉快な話し相手になってくださいませんと。」
『フレリア~! わかった。わいはフレリアをイかせん!』
「はい、言質、頂戴致しました!!」
『なんやと? でもイかせんでも、キスくらいはしたる!』
チュッ
「…んっ……あんっ! どこにキスしてるの!」
『あ・な』
「いやぁ~んっ!!!」
バシッ
『あう~っ』
フレリアのビンタは、今日も強烈だった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男装女子はなぜかBLの攻めポジ
コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
恋愛
身代わりで全寮制男子校に潜入生活の私は女子。
この学校爛れすぎてるんですけど!僕の男子の貞操の危機じゃない⁉︎なんて思ってた時もありました。
陰で女王様と呼ばれて、僕とのキス待ちのリストに、同級生に襲われる前に襲ったり、苦労が絶えないんだけど!
女なのに男としてモテる僕、セメの僕⁉︎
文化祭では男の娘として張り切ってるのに、なぜか仲間がうるさい!自覚って何の自覚⁉︎
#どこまで男で頑張れるか #なぜかBLっぽい #キスしまくりな僕
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる