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ボクはこの『手』をしっている
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頭を撫でる優しい手。
――――僕はこの『手』を知っている。
目を開くとぼんやりとした世界が広がった。僕は目がとても悪い。だから、目が覚めたらまずは手探りで眼鏡を探すところから始めなければならない。
心当たりのある周辺を手で探ったがなかなか目的のものは見つからない。すると、手の甲を軽くポンポンと叩かれた。
――――タイムリミットか。
素直に負けを認めて手のひらを差し出すと目的の眼鏡を置かれた。
眼鏡をかけると、ようやく視界も意識もクリアになる。いつもこの瞬間、ホッとする。
――――それにしても、僕はいつの間に眠ってしまったのだろう。
腕を組んで考える。その隙に彼女がクスクス笑いながら僕の髪を整え始めた。彼女の手にかかれば僕の芸術的な寝癖はたちまち落ち着いていく。不思議なものだ。終わったのだろう。トントンと肩を叩かれた。
僕はその手を捕まえて、頬を擦り付ける。彼女の頬が真っ赤に染まった。
いつまで経っても変わらない反応が可愛くて思わず笑うと、彼女は拗ねて背中を向けてしまった。
背中を向けた彼女を見て、思い出す。
――――そうだ。眠ってしまう前も彼女はこうして背中を向けて、スマホを触っていた。
最近、彼女はスマホゲームにハマっている。昨晩も僕が横にいるというのに彼女はゲームに夢中になっていた。
普段ゲームなんてしない彼女を夢中にさせたゲームがどんなものなのかと気になった僕は「そんなに面白いの?」と言って、彼女の背中越しに画面を覗き込んだ。
でも、しばらく見ていてもどこが面白いのかわからなかった。だから、プレイ中の彼女に直接聞いてみた。
彼女曰く、別に面白いとは思わないけれど、気になるキャラがいるせいで止めるに止められない……らしい。
聞き捨てならないセリフに僕は「どれ? どんな男?」と強めに聞いた。
僕は真剣に聞いたのに、彼女は目を丸くして笑いだした。
彼女が気になると言ったキャラは攻略キャラでもなく、男性キャラですら無かった。
彼女が気になったのは主人公のライバル、『悪役令嬢』。
と言ってもゲーム知識がない僕には『悪役令嬢』が何なのかよくわからない。
僕の表情でそれは伝わったようで、彼女が簡単に説明してくれたけど……それでもやっぱりよくわからなかった。
ただ、『悪役令嬢』がどことなく彼女に似ていたから、僕も気になり始めた。彼女の横で一緒に最後まで見ていた。悪役令嬢の結末を。
そして、見終わった僕は何故か言いようのない怒りに襲われた。
悔しくて、たまらなくなって、感情を抑えられなくなって泣いた。
泣き出してしまった僕の頭を彼女は困った顔で撫でくれた。
――――こんなに、彼女の手は優しさで溢れているのに。どうして、どうして……。
――――――――
ゴシュジンはやさしい。
けったり、いしをなげたりしないし、おいしいものをくれる。
あと、いっぱいアタマをなでてくれる。
でも、フマンもある。
ゴシュジンは、よくボクをおいてどこかにいってしまう。
べつに、ボクだってひとりになりたいときもあるからそれはいいんだけど。
ただ……かえってきたゴシュジンはいつもこわいカオをしているから。
ボクはしっているんだ。
そのカオが、ほんとうは『なく』のをがまんしてるカオだって。
だから、ボクは「ないていいよ」ってゴシュジンにつたえようとするんだけど……ざんねんなことにボクのことばはゴシュジンにはつたわらない
ゴシュジンは、ボクのアタマをなでて、すこしさみしそうにわらうだけ。すこしもなかない。
ゴシュジンは、ナミダがでないひとなのかな。
ゴシュジンのイモウトは、いつもないているのに……。
ボクはゴシュジンのイモウトが、ゴシュジンのツガイにだきついてないているのをなんどもみた。
そのたびに、ゴシュジンがおこって、ツガイもおこって……ボクうるさいのきらいだから、すぐにげちゃうけど。
そのあと、ゴシュジンはオトウサンにおこられて、こわいカオになってボクのところにかえってくる。
そんなカオをするくらいなら、へやからでなければいいのに。
ボクがそのぶんあそんであげるし、おひるねもいっしょにしてあげるのに。
ボクといっしょにいたらそんなカオさせないのに。
――――――――
きょうも、ゴシュジンはいない。
つまらない。
ボクはゴシュジンのにおいがするベッドのうえでゴロゴロした。
せなかをこすりつけるのがキモチイイ。
どなりごえがきこえてきた。ビックリしてカラダがビクッてなった。
バタバタあしおともきこえてくる。ボクはこわくなっていそいでベッドのしたにかくれた。
へやにだれかがはいってくる。……ごそごそしてる。
だれ? だれなの?
こっそりカオをだす。
なんだ! ゴシュジンだ! もーびっくりさせないでよ!
ゴシュジンにかけよる。するとゴシュジンはボクをだきかかえて、そとにとびだした。
おどろいた。いつもはしったりしないゴシュジンがはしってる。
ボクはこわくてめをとじた。
しばらくして、ゴシュジンがあるきはじめた。ゆっくりとめをあける。
ウエをみあげれば、ゴシュジンのカオがかたほうはれていた。でも、なんだかすっきりしたカオをしている。
それから、ボクとゴシュジンだけのまいにちがはじまった。
やまのなかにあるおうちで、ボクとゴシュジンだけのゆめのようなまいにち。
ゴシュジンもボクといっしょでうれしいみたい。
まいにち、にこにこしている。
どこにいくにも、なにをするにも、ボクらはまるでツガイのようにいっしょだった。
でも、とうとう、おわかれのときがやってきた。
ボクはしっていた。
だって、ボクはゴシュジンとはちがうから。
どうしてもゴシュジンをおいていってしまう。
ゴシュジンは、ボクがいなくなってもダイジョウブかな。
なかないかな。……なかないか、ごしゅじんはなけないひとだから。
でもきっと、あのこわいカオになるんだろうな。
せっかくあのカオしなくなったのに……
ボクは、ゴシュジンにこわいカオになってほしくなくて、がんばっておうちをぬけだした。
アシがふるえて、なかなかとおくにはいけそうにないけど、がんばった。
がんばって、がんばって、もうあるけなくなった。
ねむたい。
めがだんだん……とじていく。
こえがきこえた。ここにはいるはずのない、ゴシュジンのこえ。
ふわりとカラダがういて、あたたかいナニカにつつまれた。がんばってめをあける。
あ、ごしゅじんだ。あーあ、みつかっちゃった。
ぽとぽと、みずがおちてきた。
ゴシュジンがボクのなまえをよんでる。
へんじをしたいのに、こえがでない。
ゴシュジンのやさしいてが、ボクのアタマをなでてくれる。
すこしだけアタマをもちあげて、すりつけた。
あれ? ……もしかしてゴシュジンないてる?
はじめてごしゅじんがないた。ぼくがなぐさめてあげなくちゃっ。
からだが、うごいてくれない。なんで。
ゴシュジン、ゴシュジン、なかないで。
かみさま。
おサカナをあげます。ゴシュジンがたまにくれるすごーくおいしいやつです。
ぜんぶたべていいです。
だから、どうか、つぎはボクをにんげんにしてください。おねがいします。
人間になったらボクがご主人の番になるんだ。
ご主人が寂しくないよういつも傍にいて、色んな悪いものから守ってあげる。
そして、ご褒美に頭を撫でてもらうんだ。
あの優しい手で、いっぱい、いーっぱい。
――――――――
「あの、これあなたのですよね?」
「あ、すみません。いつのまにか落としていたみたいで……」
あの日、彼女の手に触れた瞬間、心が震えた。
――――ボクはこの『て』をしっている。
――――僕はこの『手』を知っている。
目を開くとぼんやりとした世界が広がった。僕は目がとても悪い。だから、目が覚めたらまずは手探りで眼鏡を探すところから始めなければならない。
心当たりのある周辺を手で探ったがなかなか目的のものは見つからない。すると、手の甲を軽くポンポンと叩かれた。
――――タイムリミットか。
素直に負けを認めて手のひらを差し出すと目的の眼鏡を置かれた。
眼鏡をかけると、ようやく視界も意識もクリアになる。いつもこの瞬間、ホッとする。
――――それにしても、僕はいつの間に眠ってしまったのだろう。
腕を組んで考える。その隙に彼女がクスクス笑いながら僕の髪を整え始めた。彼女の手にかかれば僕の芸術的な寝癖はたちまち落ち着いていく。不思議なものだ。終わったのだろう。トントンと肩を叩かれた。
僕はその手を捕まえて、頬を擦り付ける。彼女の頬が真っ赤に染まった。
いつまで経っても変わらない反応が可愛くて思わず笑うと、彼女は拗ねて背中を向けてしまった。
背中を向けた彼女を見て、思い出す。
――――そうだ。眠ってしまう前も彼女はこうして背中を向けて、スマホを触っていた。
最近、彼女はスマホゲームにハマっている。昨晩も僕が横にいるというのに彼女はゲームに夢中になっていた。
普段ゲームなんてしない彼女を夢中にさせたゲームがどんなものなのかと気になった僕は「そんなに面白いの?」と言って、彼女の背中越しに画面を覗き込んだ。
でも、しばらく見ていてもどこが面白いのかわからなかった。だから、プレイ中の彼女に直接聞いてみた。
彼女曰く、別に面白いとは思わないけれど、気になるキャラがいるせいで止めるに止められない……らしい。
聞き捨てならないセリフに僕は「どれ? どんな男?」と強めに聞いた。
僕は真剣に聞いたのに、彼女は目を丸くして笑いだした。
彼女が気になると言ったキャラは攻略キャラでもなく、男性キャラですら無かった。
彼女が気になったのは主人公のライバル、『悪役令嬢』。
と言ってもゲーム知識がない僕には『悪役令嬢』が何なのかよくわからない。
僕の表情でそれは伝わったようで、彼女が簡単に説明してくれたけど……それでもやっぱりよくわからなかった。
ただ、『悪役令嬢』がどことなく彼女に似ていたから、僕も気になり始めた。彼女の横で一緒に最後まで見ていた。悪役令嬢の結末を。
そして、見終わった僕は何故か言いようのない怒りに襲われた。
悔しくて、たまらなくなって、感情を抑えられなくなって泣いた。
泣き出してしまった僕の頭を彼女は困った顔で撫でくれた。
――――こんなに、彼女の手は優しさで溢れているのに。どうして、どうして……。
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ゴシュジンはやさしい。
けったり、いしをなげたりしないし、おいしいものをくれる。
あと、いっぱいアタマをなでてくれる。
でも、フマンもある。
ゴシュジンは、よくボクをおいてどこかにいってしまう。
べつに、ボクだってひとりになりたいときもあるからそれはいいんだけど。
ただ……かえってきたゴシュジンはいつもこわいカオをしているから。
ボクはしっているんだ。
そのカオが、ほんとうは『なく』のをがまんしてるカオだって。
だから、ボクは「ないていいよ」ってゴシュジンにつたえようとするんだけど……ざんねんなことにボクのことばはゴシュジンにはつたわらない
ゴシュジンは、ボクのアタマをなでて、すこしさみしそうにわらうだけ。すこしもなかない。
ゴシュジンは、ナミダがでないひとなのかな。
ゴシュジンのイモウトは、いつもないているのに……。
ボクはゴシュジンのイモウトが、ゴシュジンのツガイにだきついてないているのをなんどもみた。
そのたびに、ゴシュジンがおこって、ツガイもおこって……ボクうるさいのきらいだから、すぐにげちゃうけど。
そのあと、ゴシュジンはオトウサンにおこられて、こわいカオになってボクのところにかえってくる。
そんなカオをするくらいなら、へやからでなければいいのに。
ボクがそのぶんあそんであげるし、おひるねもいっしょにしてあげるのに。
ボクといっしょにいたらそんなカオさせないのに。
――――――――
きょうも、ゴシュジンはいない。
つまらない。
ボクはゴシュジンのにおいがするベッドのうえでゴロゴロした。
せなかをこすりつけるのがキモチイイ。
どなりごえがきこえてきた。ビックリしてカラダがビクッてなった。
バタバタあしおともきこえてくる。ボクはこわくなっていそいでベッドのしたにかくれた。
へやにだれかがはいってくる。……ごそごそしてる。
だれ? だれなの?
こっそりカオをだす。
なんだ! ゴシュジンだ! もーびっくりさせないでよ!
ゴシュジンにかけよる。するとゴシュジンはボクをだきかかえて、そとにとびだした。
おどろいた。いつもはしったりしないゴシュジンがはしってる。
ボクはこわくてめをとじた。
しばらくして、ゴシュジンがあるきはじめた。ゆっくりとめをあける。
ウエをみあげれば、ゴシュジンのカオがかたほうはれていた。でも、なんだかすっきりしたカオをしている。
それから、ボクとゴシュジンだけのまいにちがはじまった。
やまのなかにあるおうちで、ボクとゴシュジンだけのゆめのようなまいにち。
ゴシュジンもボクといっしょでうれしいみたい。
まいにち、にこにこしている。
どこにいくにも、なにをするにも、ボクらはまるでツガイのようにいっしょだった。
でも、とうとう、おわかれのときがやってきた。
ボクはしっていた。
だって、ボクはゴシュジンとはちがうから。
どうしてもゴシュジンをおいていってしまう。
ゴシュジンは、ボクがいなくなってもダイジョウブかな。
なかないかな。……なかないか、ごしゅじんはなけないひとだから。
でもきっと、あのこわいカオになるんだろうな。
せっかくあのカオしなくなったのに……
ボクは、ゴシュジンにこわいカオになってほしくなくて、がんばっておうちをぬけだした。
アシがふるえて、なかなかとおくにはいけそうにないけど、がんばった。
がんばって、がんばって、もうあるけなくなった。
ねむたい。
めがだんだん……とじていく。
こえがきこえた。ここにはいるはずのない、ゴシュジンのこえ。
ふわりとカラダがういて、あたたかいナニカにつつまれた。がんばってめをあける。
あ、ごしゅじんだ。あーあ、みつかっちゃった。
ぽとぽと、みずがおちてきた。
ゴシュジンがボクのなまえをよんでる。
へんじをしたいのに、こえがでない。
ゴシュジンのやさしいてが、ボクのアタマをなでてくれる。
すこしだけアタマをもちあげて、すりつけた。
あれ? ……もしかしてゴシュジンないてる?
はじめてごしゅじんがないた。ぼくがなぐさめてあげなくちゃっ。
からだが、うごいてくれない。なんで。
ゴシュジン、ゴシュジン、なかないで。
かみさま。
おサカナをあげます。ゴシュジンがたまにくれるすごーくおいしいやつです。
ぜんぶたべていいです。
だから、どうか、つぎはボクをにんげんにしてください。おねがいします。
人間になったらボクがご主人の番になるんだ。
ご主人が寂しくないよういつも傍にいて、色んな悪いものから守ってあげる。
そして、ご褒美に頭を撫でてもらうんだ。
あの優しい手で、いっぱい、いーっぱい。
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「あの、これあなたのですよね?」
「あ、すみません。いつのまにか落としていたみたいで……」
あの日、彼女の手に触れた瞬間、心が震えた。
――――ボクはこの『て』をしっている。
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