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第五話

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〈あらすじ〉
 ーザックは、敵国ガザリング王国のネクロマンサーに襲撃され、一度死ぬ。しかし、アンデッドとして蘇り、ネクロマンサーを倒し、自分がネクロマンサーとなる。クルベスヒ王国は、敵の襲来で、崩壊し、ザック家族も...ザックは復讐に燃え、エリザベス王女を誘拐する。しかし、本当の敵は、エリザベス王女の父親であった。ザックとエリザベスは死霊魔術の契約を結び、ザックとエリザベスの復讐の度が始まるー...


 彼女の父親サイラス・ルービンシュタインがいるガザリング王国を目指して数日間、僕達は砂漠を歩き続けていた。灼熱の太陽と、乾燥した空気、辺り一面砂しかない。そんな殺伐とした風景をただ歩き続けるのは退屈でより一層辛い。

「ザックいつまで続くんじゃ、この砂漠は」
「うーん、地図によるともうすぐだと思うんだけど」
「本当か?ガザリング王国は」
「いや、オアシスが」
「オアシスぅー?王国はまだなのか?」
「あ、ほら見えてきた」
 少しの緑と、中心には透き通った水色が。
「おぉ、あそこで水分補給しよう!」
と駆け出すエリザベス。
「ちょっと待って!」
「ん?」
 急ブレーキして、エリザベスは向き直った。
「よくオアシスを見てほしい」
「あっ」
 エリザベスが覗き込んでみると、オアシスの中に、無数の骸骨を発見して驚いた声を上げた。その時、砂の山から、巨大グモが姿を現した。

「逃げろ!!」

 僕は大声を上げた。巨大グモは襲いかかって、爆風とともに、砂埃が舞う。それを受けたエリザベスは尻もちを着いた。

「エリザベス!」

 僕は、エリザベスの手を取って、引っ張る。しかしもう巨大グモは、僕らに狙いを定めて、今にも襲いかかろうとしていた。灼熱の太陽の日当たりが突如として巨大グモの陰に包まれる。

 その時だった。巨大グモの何個もある目の辺りに、爆竹のようなものが爆発し蜘蛛は怯んだ。

「こっちだ!!!速く!!」

 ラグータに乗った布を纏った男は、手を仰いで助けてくれた。

 ラグータに乗せられ、僕達は運ばれた。ラグータの背中は3つのコブがあり、その窪みがちょうど座るスペースとして嵌っていた。

「君たち危なかったな、俺が来ていなかったら、あの蜘蛛の餌食で今頃、骨になってただろう」
「ありがとうございます」
「ほ、ほんとに助かったわ」
「取り敢えず、このラグータを走らせれば、一瞬で町へ着くぞ。さあ行け!」
布の男がそうラグータの腰をムチで叩くとラグータは頭から湯気を上げ、怒ったように走り始めた。
「うわああああああああああ」
 僕達は声を上げ、まさに爆走で、捕まってないと振り落とされるほどの速さだった。
 ともなくして、町に着いた。この町はガザリング王国の行く途中にある小さな町で、モロアクサという町だ。支配下はクルベスヒ王国にあった。僕達は布の男に町を案内されながら、一緒に宿を探してくれることになった。モロアクサという町は、とても寂れていて、活気がなかった。

「寝泊まり?ダメだよ。今はもう客いっぱいさ」

「済まないね。今はもう新規の客は受け付けてないんだよ」

 宿を何個も尋ねたが、断られ続けていた。

「普段は快く泊めてくれるんだけどな、、」
布の男は、困ったようにそう言った。

「私のせいでこの街にも影響が出ているのか」
「エリザベスのせいじゃない。悪いのは全部奴らだ」
 僕は言った。エリザベスは王国が滅んだことにまだ責任を感じているようだった。彼女にも確かに国のことを考えず、傲慢に過ごしていた罪がある。でも、本当に悪いのは、裏切ったエリザベスの父親とガザリング王国だ。
「いい宿じゃなくてもいいですし、最悪野宿できる場所さえあればいいのでどこか知りませんか?」
「ああそれなら、心当たりの場所はある」
布の男は、気まずそうに言って、連れてこられたのは、とても古臭い今でも壊れそうな宿だった。
「この宿は、一番評判が悪い。それでもいいか?」
「十分です。見ず知らずの僕たちにここまでしてくれて本当にありがとう」
「そなたは、命の恩人じゃ」
「いやいいさ、人は助け合いだからな。そういや、名前聞いていなかったな。俺はエリアス。君たちは?」
「僕は、ザック」
「私は、エリザ...」
彼女がエリザベスと言おうとしたところで僕は、肩を叩き、顔を近づけ、耳元でひそひそ話を始めた。
(何するの痛いじゃない!)
(君の名前がバレたら正体もバレる。それは色々とまずいだろ)
(確かにそうだけど...)
(君はエリーと名乗れ)
(分かったわ)
「どうした2人とも?」
「い、いえ、私はエリーよよろしくね」
「さあ宿へ入りましょう!エリアスさん!」
 僕はそう言って誤魔化した。

「あら、エリアス。何しに来たのー?」
 ボロボロの宿のドアを開けると、一人の若い女が受付に立っていた。気だるそうにして、頬杖をつきながら、目線を合わせずそう言った。宿はボロボロだったが、広く、昔は豪華な内装出会ったことが伺える。

「マリカ、客だ」

「え!?マジで!それを早く言えよ!!!」

 マリカ、という宿の女性は人が変わったようにこちらに寄ってきた。

「さあ、お客さん。取り敢えず、チェックインですね!はい!完了!そして、お茶入れますとも!このカウンターで、ほら、お座りになって!!おーい、エリアスも突っ立ってないで座れよ」
 嵐のような対応に僕達は、狼狽えて、エリアスはまた始まったと言わんばかりに、呆れていた。

 受付は、ちょっとしたバーカウンターとも繋がっていて、飲み物が飲める仕組みになっていた。そこで、マリカはお茶を出してくれた。

「お2人は、どこから来たんですぅ?」
「クルベスヒ王国から」
「ふーん、なんか訳ありなんですかぁ?」
「そこは詮索しないでもらえると助かるぞ」
「じゃあ、なんでおふたりはそんなに顔色が悪いんですか?生まれつきですか?」
「おい、マリカ、失礼だぞ!」
 エリアスが横槍を入れる。
「そうです。生まれつきですよ」
 僕は、平然とそう答えた。
「あはは、そうなんだ。質問責めも悪いし、世間話でもするか」
 マリカは、切り替えて話を始めた。
「クルベスヒ王国が崩壊してからここ数日、各地の町で、混乱と殺戮が起きているのは知ってる?」
「いや...」
「知らない!詳しく聞かせてくれ!」
エリザベスは食い気味にそう言った。
「ガザリング王国の最強最悪の五代魔術師が、残りのクルベスヒ王国の統治下の町を潰していってるの。そしてこの町も、そのひとつ。だからみんな君たちを泊める所じゃなかったの。しかもクルベスヒ王国から来たなんて怪しすぎるしね」
「じゃあどうして君は、泊めてくれたんだ?」
 僕はそう聞いた。
「うーんただの気まぐれよ。強いて言えば、運命を感じたの」
「運命、、ね」
 僕は彼女の言ってることがよく分からなかった。
「エリアス通訳、マリカはなんと言っているんじゃ?」
「さあ。子供の頃から一緒に育ってきたが、マリカの考えを一度も理解したことは無いよ」
「まあ、なんでもいいさ、泊めてくれるなら。ありがとう」
「いえいえ、これも商売なんで。頂くもんは頂きますよ」
「いいだろう。金ならいくらでもある!」
そう言って、エリザベスは鞄からずっしりとした金貨の入った袋を取り出して、カウンターのテーブルにドシンと乗せる。
「あらまぁ!こんなにも!いいんですか?」
「ま、まぁ、、私に出来るのは金を見せびらかせたり、与えたりするくらいしか、、、出来ぬ、、からな...」
 エリザベスは、自分でそう言いながら勝手に一人で落ち込んでいた。
「おいマリカ、金額通りの支払いにしろよ!」
 エリアスはそう注意した。
「エリー、あんまり金使いすぎるなよ」 僕もエリザベスに注意した。
 
 マリカは、通常通りの金額を受け取って、裏に下がって、宿泊の準備を始めた。そして、遠目から、客人のあの二人見た。
「フフ...いい人材ね、あの人たち。私の夢を叶えてくれそうな...」
 マリカはそう言って不敵な笑みを浮かべていた。
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