55 / 55
43 いつからでした……?
しおりを挟むどんな夢を見て気分が悪かろうが私は学生の身、予習はしているとはいえ学校に行かねば授業内容に置いていかれてしまう。
重たい頭を何とか支えながら律儀にも登校していた。
心配そうなナズナは何度も欠席を促していたが、一生徒である前に私は仮にも悪役令嬢(認めたくはないが)なのだ。
役として欠ける訳にはいかないし、知らないシナリオが存在するのなら探り、考察したい。
クリビアは謎のキャラクターであったけれど私とはあまり関わりが無さそうだと薄ら感じるものがあった。
関わりがあったとて、彼はヒロインにはあまり興味を示しているようには見えなかったので彼が私に致命的なイベントを与えることもなさそうだわ。
「おはよう、イリス嬢」
そう言って私に声を掛けてきた人物を見て私は思考も行動もぴしりと固まった。
何故って、それを言ったのが攻略キャラやそこらに居るモブなら何らおかしくはないのだ。
でも私に挨拶をしたのはやけに眩しい笑顔のウィリアム王子だったのだ。
いやいや、まあ百歩譲って少しずつ話せるようになっていっているのならゲームシナリオにもあるし分かるのだ、彼は次第に話せるようになるし。
けれど今の彼はまるで母国語を話すかのように流暢に、平然と我が国の言葉を話した。
一体この一日の間に何があったというの……!?
挨拶されているのに何も言わないのは流石に令嬢として有るまじき行為なため、私は働かない思考のままぺこりと頭を下げた。
「お……おはようございます……殿下…………ところであの……いつから我が国の言語を習得なされて……?」
「ふふ、実は最初から話せたんだ。でもここに来る理由としては語学留学だろう?だから喋れないふりをしていたんだ」
くすくすと面白そうに笑う彼に私は疑問しか浮かばなかった。
───彼は最初から話せなかったはずでは?
ゲームシナリオの彼は最初からは話せなかったはずなのだ、それ故に彼のルートは難しく、言葉のメカニズムに気付いてようやくまともに内容がわかるという飛んでもない話なのだ。
私もそのメカニズムは分かっているものの、実際に聞くと全くわからない。
それなのに目の前のウィリアム王子は話せるの……?
こんな事ってあるのだろうか、完全に設定がひっくり返されているのだけれど……!?
「ですが何故……?」
「君が攫われた一件でエレン先生も僕が話せる事を知った訳だしもう隠す必要も無いかと思ってね」
え、そんなことがあったんですか?
つまりはあの日の捜索メンツはそれを知っていたということになる。
その後も普通に話せないふりをしていたと言うのならこの間はなんだったというのだろうか。
「まだ君の反応を楽しんでいたかったけれど……そうもいかないみたいだからね」
「……?」
0
お気に入りに追加
1,957
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
気付いていただけたみたいで嬉しいです!ご感想ありがとうございます🙏
これから読み直すのもありですね✨
ぎゃー!ヤンデレ過ぎてホラーになってる!:(;゙゚'ω゚'): この義理弟は誰!? やっぱりお...
ご感想ありがとうございます、励みになります!
今回はちょっぴり過去編ということでかなりのヤンデレ義弟くんでホラーになりましたが実はこの人も……出てk…ごほんごほん、誰なんでしょうね……?
ウィリアム王子の黙りとかの態度はどういう意図からだったのか気になりますね゚+.(・∀・).+゚
恋愛以外のフラグも沢山たってそうでこの後どんな展開なのか毎日ワクワクです!!
温かいご感想ありがとうございます!大変励みになります…!!!
これからもっと王子が活躍する…!と思いたい……恋愛要素以外にも色んなものを盛り込んでいくつもりなのでお楽しみ下さい!