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39 どこかで会いましたね?
しおりを挟む生徒会長を連れてきたミルトニアの元に向かって、初めてこの学園の生徒会長に顔を合わせたのだけどなんということでしょう。
目の前にいるのはこのオルドローズ王国の王子ではありませんか、あら不思議。
いや、薄々そんな気がしていたけれどまさか本当だなんて思わないじゃないですか。
「ブランシュ王子殿下……?」
「はいっ!王子殿下は現生徒会会長であらせられまして普段は公務などでお忙しいのですが、本日はこちらに来られていると聞き及びましたの!」
「ミルト……悪い事は言わないから生徒会室に戻してきた方が良いのではないかしら……?」
「まあ……!初めてわたくしの事をミルトと呼んでくださいましたね……!?わたくし感動ですわ…!!」
割と真面目な心配の元そう言うとミルトニアは私が彼女をミルトと呼んだことに反応してしまい、すっかり恍惚とした表情で悦に入ってしまっている。
いやいや、反応するところはそこじゃないでしょう……。
「おや、俺では君の悩みを解消するには力不足かい?これでも神出鬼没なアルとさほど変わらないアドバイスは出来るつもりでいるが」
「い、いえ……力不足だなんてそのような事はありませんわ。ただ…私ごときの話にお時間を取らせては生徒会の方々にご迷惑をおかけしてしまうと思いましたの」
収穫祭ぶりだなと悪戯に笑ってそう言うブランシュ王子の気を悪くしないよう配慮しながら私は苦笑した。
流石に忙しそうなブランシュ王子を巻き込んでまでクリビアを調べなければならない訳では無いし、王族に聞くのは気が引ける。
「生徒会の面々は放っておいても大丈夫さ、どうあっても優秀な仕事人間のあいつらなら俺が居なくとも文句を言いつつこなしてくれるさ」
「いやそれ大丈夫ではないと思いますけど……」
そんな私の言葉をよそにブランシュ王子はそれでなんだと私の相談を促す。
これはきっと言わなければ終わらないなと早々に観念するとどう聞いたものかと考える。
いや、考えたところでクリビアという男子生徒について以外にないのだけど。
「イリスお姉さまはある人物について知りたいことがあるそうですわ、王子殿下」
聞きあぐねているとミルトニアがブランシュ王子に話を振ってしまう。
えええ、待ってくださいよまだ私心の準備が出来てませんよ……。
「ある人物?俺が知ってる範囲でよければ答えよう」
もうここまで進んでしまったのだからええい!ままよ!
「二学年のクリビア・ガーデニーという男子生徒についてなのですが……ご存知でしょうか……?」
「ああ……全生徒のプロフィールはひと通り目を通してあるからその程度の事ならば知っているぞ」
えっ……全校生徒となるとかなりの人数ではないかしら……?
それを全部覚えているというの……!?
「ガーデニー家といえば教会の教皇家系、クリビアは確かその一人息子だとか聞いたな。つまり……次期教皇候補って訳だな」
「次期教皇……ですか」
「そんでもって詳しくは知らないが家庭環境は複雑なようだ。父親である現教皇は仕事人間、母親はそんな夫から愛されず情緒不安定。家族仲は冷え切っているようだな」
正直なんでそんなところまで知っているんだと言いたいけれど、これ以上なく良質な情報だわ。
つまりかなり性格が破綻していそうだということだけは家庭環境の話を聞いていても思うことで、厄介なキャラクターが出てきてしまったと思う。
そしておそらくブランシュ王子が彼に詳しいのは教皇との交流があるからなのだろう。
それにしてはよそよそしいような気もするけれど……。
「なんというか…ヤケに頭が切れる奴ではあるが……食えない奴だ」
呆れた顔のブランシュ王子がそういうのだから相当な人なのだろうと息を呑んだ。
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