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38 お姉さまの為ならなんとやら
しおりを挟むとりあえずグラジオが攻略対象かはさて置き、まずは件のクリビアとやらを調べなくては。
簡単に調べられる内容はナズナに集めてもらい、私は人伝に聞き回って探ってみる事にした。
なにぶん彼は上級生、同じ学年の人間に聞いても分からないことは多いだろう。
うーん……まずは生徒会の方に聞くのが無難かしら?
生徒会で話しかけられるといえばアルベリックさんしか居ないわけだけど、何故だか彼は神出鬼没でこちらから会おうと思うと中々会えないのだ。
「どうしたら会えるかしら……」
「なにかお困りですか?イリスお姉さま」
うーん、と唸りながら考えている私の背後から息をするように現れたミルトニアに内心驚きつつ平静を取り繕う。
ミルトニアに聞いてもよかったのだが彼女はまだこの学園に編入したばかりの身だ、上級生の事までは分からないだろう。
「ある人物についてアルベリック様にお伺いしたいことがあったんですがどうやって会ったものかと……」
「ああ……アルベリック様は同じクラスですのに神出鬼没…心中お察しいたしますわ…」
やはり彼女も同じ事を思っていたのかほう、と困ったようにため息をついた。
しかし、そんな様子もつかの間で何かを思いついたように両手をパチンと合わせた。
「そうですわ……!本日ならいつもはまともにお会いすることも出来ない生徒会長がいらっしゃる日なんですの、会長に聞いてみてはいかがでしょう?」
なんでしたら生徒会室にご案内致しますわ!なんて意気揚々と提案するミルトニアに少し悩んでしまう。
生徒会長とは面識が無かったはずだ、そんな風に一人の生徒を調べるために押しかけていいものか……。
「ですがそんな事のために押しかけるような真似は……」
「生徒会長は適当な御方であらせられますがお優しい方、きっとイリスお姉さまの質問にも答えてくださいますわ」
でしたら生徒会室ではなくお呼びして参りますわ!なんて言って、私の返事も待たずに駆けて行ってしまった。
流石に生徒会長をこの教室に連れて来ては目立つのではなかろうか……。
「ミルトってばホント人の話聞かないよね……ごめんね、姉さん。姉さんと仲良くしたくてやってる事だと思うから悪く思わないでね」
またもどこからか現れたグラジオはそう言ってミルトニアの事を言った。
それは私もひしひしと感じているし悪い意味として勘違いなんてしないけれど、なんで私が懐かれているのだろうという疑問は多少なりにもあった。
「ミルトは理想を追い求めるタイプだけど理想を押し付けたりはしないから…ええと、だからその…出来たら仲良くしてあげてね」
珍しく人の事を気にかけるグラジオを見た気がする。
彼は私の事以外は基本的にどうでもいい、みたいなところがあったから少し意外だ。
やっぱり幼馴染な一面は大きいのかしらね。
程なくして「イリスお姉さまー!」と教室の外で手を振るミルトニアに気が付く。
あえて教室の中に連れて来ないのは彼女の配慮なのだろう、言わずしてそれが伝わるのは少し驚きではある。
私はすくっと椅子から立ち上がるとミルトニアと生徒会長が待つ廊下へと向かうのだった。
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