悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

文字の大きさ
上 下
47 / 55

37 大変、何事ですか

しおりを挟む


結局、何も起こらないまま無事に後夜祭も終わり学園はいつもの日常生活に戻っていた。
何が起きているのか後夜祭でリナリアをエスコートしたのは件のクリビア・ガーデニーだった。
後夜祭に出ることが出来た際に彼女をエスコートするのは攻略中のキャラクター、つまり攻略対象。
やはり彼は私の知らないシナリオの攻略対象という事になる。
つまりは私の知らない『七色の花姫』が間違いなく存在している。
いやまさかウィリアム王子を出しておきながら、知らないキャラの攻略ルートに入るなんて流石の私も信じたくなかったわ……。

これは早急に彼の素性を調べるべきね。

学園祭が終わってからというもの、リナリアのそばにはクリビアも加わっておりこれは完全に攻略ルートが変わりつつあるのではと思う、というか変わっているのではないか。
そして大きな問題がもう一つ、それは我が弟の飛び級編入という大問題だ。
そもそも私とグラジオの年の差は一歳差、そうまでして飛び級する必要も無いはずで順当に行けば来年には後輩として入学してきていたはずだったのだ。

それを何故今更、この微妙な時期に飛び級なんて……。

それを彼に問えば「一刻も早く姉さんの学園に入りたかったから♡」だなんて言っていたが、実際のところは次期当主の養育を急いでいるようだった。
なんだってそんな事になっているのかは分からないけれど、何故かグラジオと共にミルトニアも編入している。
まるでこの場に呼ばれているかのようだわ……。
揃いも揃ってこのクラスだなんて随分不自然だもの。
その理論で言うとグラジオもまさか攻略対象……?さしずめ私とミルトニアはライバルキャラクターにあたるのかしら……。
私の破滅フラグは更に可能性を増やしたとでも言うの……?
そしてミルトニアが編入した事で生徒会の庶務であるロベリア嬢は降ろされ、そこにミルトニアが宛てがわれたのだとか。
ロベリア嬢は最後まで嫌がっていたようだが、普段の不真面目な態度により生徒会メンバーによって交代させられたのだと聞いた。
一歳差にも関わらず幼い見た目で可愛いグラジオはすぐに女子の注目の的だし、姉である私も私で近寄り難いとはいえグラジオの事を聞かれる事がしばしば増えてきた。
よくグラジオと一緒に居るしミルトニアもそこそこ憧れと注目の的ではあるものの、彼女に悪い感情を抱くものは少ないようだ。
ご都合主義ってやつなのかしらね……確かにミルトニアは年下の割に大人びていて女性的、控えめだけれども大きな愛情のような柔和さを帯びていてその姿はまるで聖母のよう。
これを見て彼女に適うなんて思う馬鹿な思考にはならないんだろう。
その実、謎に『お姉さま』を追い求めているようだけれど……。
となれば破滅フラグが立つのは私だけなのだろうな……なんたる理不尽。
そしてその流れで行くのなら最終的に私はミルトニアとも仲違いすることになるのだろう。
というよりもし、そのシナリオのゲームが存在しているのなら私とミルトニアは元より何の関係のない間柄だったかもしれない。
まあ……今もかなり仲がいいという訳でもないんだけど。

「うふふ、ようやくイリスお姉さまのクラスメイトになれましたわ……!この時が待ち遠しかったんですの!」

「それならそうと先に言ってくれても良かったではありませんか……驚きましたわ」

「姉さんを驚かせたくてね~決まった時にそれはもう教えたかったんだけど内緒にしてたんだ!」

あまりに嬉しそうに二人が笑うものだから私まで釣られて笑った。
きっと二人がいれば何とかなるんじゃないかって、そう安易に思っていた。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...