悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

文字の大きさ
上 下
37 / 55

31 誤解しないでください!

しおりを挟む


疑いをかけられているようなことを匂わす言葉をハイドから言われた私は微笑を浮かべたままぴしりと固まってしまう。
え、まじで?ここで疑われちゃう感じ?
私今回はっていうか今回も全くの無実ですよ??真っ白ですよ?

「なんとなしに……勘と言いましょうか…」

「まあ……もうこの辺しか調べてない部屋はなかったけど随分ピンポイントだね?」

「なんだよ、ハイドはイリス様を疑ってるってのかよ?」

もっともなハイドの疑問に肝を冷やしている私を擁護するようにディモルは食ってかかる。
これはこれで言い丸められたら余計に私に嫌疑がかかる事だろう。
今、転生したことに気付いてからというもの最高の緊張と恐怖感を抱いているわ……。
一歩でも間違えば私は悪者街道まっしぐらだ。

「疑っている……少し違うな、不思議に思っただけさ」

「変わらないじゃないか」

「疑心と探究心とでは意味が違うだろ?」

「鍵をお持ちしました!今開けますよ!」

睨み合うハイドとディモルの雰囲気を知ってか知らずか壊すように戻ってきたエレン先生は扉の鍵を開けた。
すると中から走り出てきたリナリアは扉の近くにいたウィリアム王子に怖かったと言うように抱き着いた。
おおう……流石乙女ゲームのヒロインなだけあるわね……はしたないとか不敬とか気にしないなんて……。
これは二人並ぶだけでスチルの完成と言わんばかりの雰囲気が出ている。

「だいじょーブ?」

「っ!……ウィリアム殿下…!?ディムかと思って……!申し訳ありませんわ!」

ウィリアム王子に話しかけられたことで人物を認識し直したのか、頬を染めて焦って離れるリナリアはそれはもう劇中のようです。
良くも悪くもここには攻略対象ばかり、その中に悪役令嬢だなんて酷い絵面もいいところだ。
しかしそんなことも言っていられない、犯人特定のためには彼女から証言を取らねば。

「リナリア様、この様な悪質な事を一体誰が?」

「イリス様……私にも…よく分からないのです…ですが今回は男性の方…でしたような……?」

なんでお前まで居るんだと言いたげな顔ではあったもののリナリアはそう言った。
『今回は』という事は普段とは別の犯人という事なのだろうか。
そうであればなかなか事は厄介だ。
複数犯、更にそこに繋がりはあるかは不明だと言うことになる。
意図も目的も違えば一歩間違えて残酷な結末になりかねないということだ。
しかも男性なら次に何が起こるか予想もつかない、どうしよう……。

「で、でも閉じ込められただけですし私は大丈夫ですよ!」

「今回は無事でも今後どうなるかなんて分かりませんわ、逆上して何かしてくるかもしれない」

困ったように笑いながら手を振って平気アピールをするリナリアだがそうも言っていられない、犯人探しは急ぐべきだ。

「そうだよ、女の子を閉じ込めるなんて野郎はさっさとお縄につけないとね」

「閉じ込めるしか出来ない陰湿な奴と同じ男だなんて思われたくないしな」

「ムーランは理由がなんかおかしくないか……?幼馴染が閉じ込められたんだ、黙ってられない」

「教師としても見過ごせませんね」

一周まわって乙女ゲームのイベント予告のような一人一人の宣言にも似た言葉たちに私は固まるしか無かった。

なんか上手いことダシに使われた感が否めないのはどうしてかしら…??


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...