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31 誤解しないでください!
しおりを挟む疑いをかけられているようなことを匂わす言葉をハイドから言われた私は微笑を浮かべたままぴしりと固まってしまう。
え、まじで?ここで疑われちゃう感じ?
私今回はっていうか今回も全くの無実ですよ??真っ白ですよ?
「なんとなしに……勘と言いましょうか…」
「まあ……もうこの辺しか調べてない部屋はなかったけど随分ピンポイントだね?」
「なんだよ、ハイドはイリス様を疑ってるってのかよ?」
もっともなハイドの疑問に肝を冷やしている私を擁護するようにディモルは食ってかかる。
これはこれで言い丸められたら余計に私に嫌疑がかかる事だろう。
今、転生したことに気付いてからというもの最高の緊張と恐怖感を抱いているわ……。
一歩でも間違えば私は悪者街道まっしぐらだ。
「疑っている……少し違うな、不思議に思っただけさ」
「変わらないじゃないか」
「疑心と探究心とでは意味が違うだろ?」
「鍵をお持ちしました!今開けますよ!」
睨み合うハイドとディモルの雰囲気を知ってか知らずか壊すように戻ってきたエレン先生は扉の鍵を開けた。
すると中から走り出てきたリナリアは扉の近くにいたウィリアム王子に怖かったと言うように抱き着いた。
おおう……流石乙女ゲームのヒロインなだけあるわね……はしたないとか不敬とか気にしないなんて……。
これは二人並ぶだけでスチルの完成と言わんばかりの雰囲気が出ている。
「だいじょーブ?」
「っ!……ウィリアム殿下…!?ディムかと思って……!申し訳ありませんわ!」
ウィリアム王子に話しかけられたことで人物を認識し直したのか、頬を染めて焦って離れるリナリアはそれはもう劇中のようです。
良くも悪くもここには攻略対象ばかり、その中に悪役令嬢だなんて酷い絵面もいいところだ。
しかしそんなことも言っていられない、犯人特定のためには彼女から証言を取らねば。
「リナリア様、この様な悪質な事を一体誰が?」
「イリス様……私にも…よく分からないのです…ですが今回は男性の方…でしたような……?」
なんでお前まで居るんだと言いたげな顔ではあったもののリナリアはそう言った。
『今回は』という事は普段とは別の犯人という事なのだろうか。
そうであればなかなか事は厄介だ。
複数犯、更にそこに繋がりはあるかは不明だと言うことになる。
意図も目的も違えば一歩間違えて残酷な結末になりかねないということだ。
しかも男性なら次に何が起こるか予想もつかない、どうしよう……。
「で、でも閉じ込められただけですし私は大丈夫ですよ!」
「今回は無事でも今後どうなるかなんて分かりませんわ、逆上して何かしてくるかもしれない」
困ったように笑いながら手を振って平気アピールをするリナリアだがそうも言っていられない、犯人探しは急ぐべきだ。
「そうだよ、女の子を閉じ込めるなんて野郎はさっさとお縄につけないとね」
「閉じ込めるしか出来ない陰湿な奴と同じ男だなんて思われたくないしな」
「ムーランは理由がなんかおかしくないか……?幼馴染が閉じ込められたんだ、黙ってられない」
「教師としても見過ごせませんね」
一周まわって乙女ゲームのイベント予告のような一人一人の宣言にも似た言葉たちに私は固まるしか無かった。
なんか上手いことダシに使われた感が否めないのはどうしてかしら…??
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