悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

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29 平和とは長く続かない

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平和、平凡な時ほど長く続かないものでロベリア嬢の事を満足に探れないまま学園祭の時期までやって来てしまいました。
学園祭といえば嫌がらせによる事件の多発する時期、それは準備の段階からあって衣装破きや当日の閉じこめ、その他にも細々としたいじめイベントがある。
注意すべき悪役令嬢イベントの祭典といっても過言ではない。
私が自ら仕掛けていないとはいえ私のせいにされても何らかの補正で見事に私が悪役令嬢に舞い戻るかもしれない。
そんな事だけは避けたい私は、準備の段階からずっと気を張り続けていた。
貴族の学園の文化祭である以上、劇の衣装は各自で注文して仕立てるのでかなりギリギリになって衣装が破かれる。
その為にヒロインは直前で衣装が駄目になり、再度衣装を作り直す余裕のないヒロインは途方に暮れてしまう。
可哀想に思った攻略対象達がヒロインにドレスを仕立ててあげるというのが衣装イベント。
ちなみにこの衣装でヒロインは学園祭後の後夜祭パーティーに出る。
閉じ込めイベントはこの後夜祭の直前で起きる。
というのも、衣装破きに結果的に失敗したことで腹いせとして閉じ込めるのだ。
こちらも見事に通りかかった攻略対象に必死の叫びが届くことで救出されてその後その見つけてくれたルートのキャラとダンスを踊る。
もちろん好感度によってはこうならず、朝まで閉じ込められてヒロインがいないことに気がついた攻略対象に疲れきって眠ってしまったヒロインを見つけられるというルートもある。

「何はともあれ学園祭は証言者の多いイベント……どうなるか分からないわ……」

うっかり近くにいただけで首謀者にされてはたまったものでは無い。
学園祭準備と言っても自分のものは自分で仕立てるため、クラスで協力しなければならないのはほんの一部分しかないので午前は授業が普通にある。
私たちのクラスの出し物は演劇とベタだが準備するものは少ない。
代わりに劇の練習がその時間行われるのだが、如何せん主役以外の役を持つ人達や演出担当の生徒達は練習もそこまでいらないのでやる気があまりみられず、締まりの無い雰囲気だ。
それ故に役持ちの生徒以外は一人二人教室に居なくとも誰も気付かないなんてざらにあるのだ。
ちなみに私はゲームのイリスの通りに役を貰っているので居なければ気付く立ち位置にいる。
それでもゲームでのイリスは普通に居なかったりするのだけど……。
しかも劇の内容はシンデレラという小学生や幼稚園児の演劇かよとツッコミを入れたくなるような作品選択。
一応そのままでは面白味がないのかアレンジが入っており、二番目の意地悪な義姉がシンデレラのガラスの靴を履けてしまうというもので履けてしまった為に、シンデレラではなく二番目の義姉を城へ連れて行ってしまうのだ。
しかし、シンデレラとは違う見た目の義姉に王子は再度シンデレラを探してついに見つけ、シンデレラとハッピーエンドというある意味義姉に理不尽なエンディングとなる。
そして私はその二番目の義姉役だ。
当初は複数人から(何故か主に攻略対象達)の推薦によりシンデレラ役にされかけたが私が全力で拒否してなんとか二番目の義姉役に落ち着いたのだった。
攻略対象達の配役はヒロインの入るルートによって違うのだがウィリアム王子のルート配役に沿っているらしく、王子役はお察しのウィリアム王子、シンデレラ探しの臣下役にディモルとムーラン、魔法使いは何故か老婆ではなく青年とされているので魔法使い役にハイドと豪華に役が振られている。
こんな中でシンデレラになるヒロインもむしろ可哀想だわ…。
もちろん女生徒達からの嫉妬の眼差しはいっそう酷いものとなるのでこんなものに耐えながら、嫌がらせにも屈しずにいるのだからヒロインのポジティブなメンタルの強さは心臓に毛でも生えていそうなレベルだ。
私は家柄というものもあるために下手に手出しできないからなったらなったで何も起きないだろうけれど、それでも羨望の眼差しは射抜くようなものだろうし私はそういうのは御免こうむる。
劇の練習は明日始まる、今後のことも考えねばならないと思うと少し気が重い。

「お嬢様……戦地に赴く兵士のようなお顔をされてどうされましたか?」

「うーん……劇の練習、緊張してしまってね……」

「お嬢様の素敵さが多くの人に知られるのは少し寂しくはありますがナズナは楽しみです…!」

「それ余計に私の緊張を助長してない…?」

これでもかと言うほど輝く笑顔を見せるナズナだが、全くその言葉は私を励ますものとは言えなかった。

まあ……楽しそうでなによりです……



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