35 / 55
29 平和とは長く続かない
しおりを挟む平和、平凡な時ほど長く続かないものでロベリア嬢の事を満足に探れないまま学園祭の時期までやって来てしまいました。
学園祭といえば嫌がらせによる事件の多発する時期、それは準備の段階からあって衣装破きや当日の閉じこめ、その他にも細々としたいじめイベントがある。
注意すべき悪役令嬢イベントの祭典といっても過言ではない。
私が自ら仕掛けていないとはいえ私のせいにされても何らかの補正で見事に私が悪役令嬢に舞い戻るかもしれない。
そんな事だけは避けたい私は、準備の段階からずっと気を張り続けていた。
貴族の学園の文化祭である以上、劇の衣装は各自で注文して仕立てるのでかなりギリギリになって衣装が破かれる。
その為にヒロインは直前で衣装が駄目になり、再度衣装を作り直す余裕のないヒロインは途方に暮れてしまう。
可哀想に思った攻略対象達がヒロインにドレスを仕立ててあげるというのが衣装イベント。
ちなみにこの衣装でヒロインは学園祭後の後夜祭パーティーに出る。
閉じ込めイベントはこの後夜祭の直前で起きる。
というのも、衣装破きに結果的に失敗したことで腹いせとして閉じ込めるのだ。
こちらも見事に通りかかった攻略対象に必死の叫びが届くことで救出されてその後その見つけてくれたルートのキャラとダンスを踊る。
もちろん好感度によってはこうならず、朝まで閉じ込められてヒロインがいないことに気がついた攻略対象に疲れきって眠ってしまったヒロインを見つけられるというルートもある。
「何はともあれ学園祭は証言者の多いイベント……どうなるか分からないわ……」
うっかり近くにいただけで首謀者にされてはたまったものでは無い。
学園祭準備と言っても自分のものは自分で仕立てるため、クラスで協力しなければならないのはほんの一部分しかないので午前は授業が普通にある。
私たちのクラスの出し物は演劇とベタだが準備するものは少ない。
代わりに劇の練習がその時間行われるのだが、如何せん主役以外の役を持つ人達や演出担当の生徒達は練習もそこまでいらないのでやる気があまりみられず、締まりの無い雰囲気だ。
それ故に役持ちの生徒以外は一人二人教室に居なくとも誰も気付かないなんてざらにあるのだ。
ちなみに私はゲームのイリスの通りに役を貰っているので居なければ気付く立ち位置にいる。
それでもゲームでのイリスは普通に居なかったりするのだけど……。
しかも劇の内容はシンデレラという小学生や幼稚園児の演劇かよとツッコミを入れたくなるような作品選択。
一応そのままでは面白味がないのかアレンジが入っており、二番目の意地悪な義姉がシンデレラのガラスの靴を履けてしまうというもので履けてしまった為に、シンデレラではなく二番目の義姉を城へ連れて行ってしまうのだ。
しかし、シンデレラとは違う見た目の義姉に王子は再度シンデレラを探してついに見つけ、シンデレラとハッピーエンドというある意味義姉に理不尽なエンディングとなる。
そして私はその二番目の義姉役だ。
当初は複数人から(何故か主に攻略対象達)の推薦によりシンデレラ役にされかけたが私が全力で拒否してなんとか二番目の義姉役に落ち着いたのだった。
攻略対象達の配役はヒロインの入るルートによって違うのだがウィリアム王子のルート配役に沿っているらしく、王子役はお察しのウィリアム王子、シンデレラ探しの臣下役にディモルとムーラン、魔法使いは何故か老婆ではなく青年とされているので魔法使い役にハイドと豪華に役が振られている。
こんな中でシンデレラになるヒロインもむしろ可哀想だわ…。
もちろん女生徒達からの嫉妬の眼差しはいっそう酷いものとなるのでこんなものに耐えながら、嫌がらせにも屈しずにいるのだからヒロインのポジティブなメンタルの強さは心臓に毛でも生えていそうなレベルだ。
私は家柄というものもあるために下手に手出しできないからなったらなったで何も起きないだろうけれど、それでも羨望の眼差しは射抜くようなものだろうし私はそういうのは御免こうむる。
劇の練習は明日始まる、今後のことも考えねばならないと思うと少し気が重い。
「お嬢様……戦地に赴く兵士のようなお顔をされてどうされましたか?」
「うーん……劇の練習、緊張してしまってね……」
「お嬢様の素敵さが多くの人に知られるのは少し寂しくはありますがナズナは楽しみです…!」
「それ余計に私の緊張を助長してない…?」
これでもかと言うほど輝く笑顔を見せるナズナだが、全くその言葉は私を励ますものとは言えなかった。
まあ……楽しそうでなによりです……
0
お気に入りに追加
1,957
あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる