悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

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25 フラグの気配は近付いて…?

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「あー……イリス嬢がなんでそこに居るかはさて置き、リナリア嬢はそんな所に座り込んでどうしたの?汚れるよ?」

どうしたもんかという風に頭を掻くハイドはひとまず、リナリアにそう言った。
先程私が聞いた時は気丈に振舞っていたリナリアだったがハイドが聞いた途端困ったような切なそうな顔でどう見ても大丈夫じゃありませんという無理をした笑顔を見せた。

……わぁ…さっきと反応が随分違いませんか……

「……なんでもないですわ…ちょっと探し物をしていたのですが見つからなくて…」

でも流石にはしたないですわね…と言う彼女の姿は誰が見ても痛々しい。
取り敢えずここで私にいじめられていましたという虚言は無かったにせよ私がここに居るのは不自然だ、それについて言及せねば。
でもなんて言う?下手に発言すれば私の疑わしさが深まるだけ、だけど何も言わないわけにもいかない。

「イシカ オハノ モシガサ、タテキラ カチッコガ チタコノ ナンオノ カンニン ナキッサ」

「……?」

いつの間にか教室の中へ入って来ていたウィリアム王子は語るのだが私にも、おそらくこの場の誰にもその意味は伝わらない。

「ふうん……探し物、ねぇ……まあ君がそう言うんだしそういう事にしておくよ。イリス嬢もたまたまここに来たっぽいしね」

「え……?」

ウィリアム王子の言葉を聞いてから、リナリアを心配していた様子だったハイドの態度が変わった気がした。

王子の言葉が分かるのかしら…?

それにしても私の疑いまで晴れたようで助かった、このままでは私がいじめていたみたいに見えるもの。

「じゃあ、僕達はこれで。なら君の侍女にでも探させたら?」

そういうとハイドは私に戻るぞと言ってるかのような視線を寄越してきた。
後ろ髪を引かれるような感じはあるものの、長居して余計な誤解を招くのも嫌なので大人しくついて行くことにした。
確かに男爵家と言えど貴族は貴族、使用人の一人くらいは居るはずだ。
それなのに自らが探し物なんて言い訳としてはほんの少しおかしくはあるよなぁ。
ハイドはそのおかしな理由に疑問を持ったのかもしれない。
ハイドについて行けば、そのままウィリアム王子も付いてきた。
あれ……?リナリアの元に居なくていいのかしら?攻略イベントのフラグは立っていたわよね?

「イナク ヨハノル レサニノ モルワ ニノイナ テシハト コイル ワモニナ、タッカヨテ クナレワ ガタウガ ミキ」

「…………」

ほっとしたような優しげな顔で王子はそう言うのだけど、何を言ってるのかさっぱりです。
それを聞いた途端ハイドも薄ら微笑んでいるような気がするし。
なんだか、この二人妙に息が合っていませんか…。
教室に戻ればディモルは何やら苦虫を噛み潰したような顔をしているし、一体攻略キャラ達はどうしてしまったのだろう。
ヒロインの魅力という名の魅了にかかる様子が微塵も、欠けらも無い。
いやいやいや、きっとこれからよ!仮にも悪役令嬢なんかに味方は居ないのだし、こんなにも都合よく私に優しい世界な訳がない。
今回はたまたま、そう、きっと今までの努力が功を奏しているだけよ。
でもこうなっている以上もう気が抜けない、いつまたこうしてフラグの落とし穴があるか分かったものじゃない。
誘導されて悪役令嬢に舞い戻るなんて冗談じゃない、入学からもうずっと努力しているんですもの、こうなったら無事に卒業まで漕ぎついてやるわ!


悪役令嬢がなんぼのもんじゃい!!


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