悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

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18 日常が戻ってきた…?

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ローズ祭のパーティーはその後立食パーティーとなり、オルドローズ王国の国王とその王子の挨拶で締め括られた。
王子の婚約者候補決めのパーティーを兼ねていたらしくかなりの盛り上がりだったが、私はそんな事に脇目も振らずダンスで消費したカロリーを摂取し直してほとんどの時間を過ごした記憶しかない。
何故か両サイドにはハイドとグラジオ、私を囲むようにしてムーランとディモルという攻略キャラの壁に包囲されていて我が国の王子の姿さえ見ていない。
リナリアはウィリアム王子と一緒だったようだけどなにぶん攻略キャラ達が邪魔で見えませんでしたとさ、めでたくない。

くっ……高身長ズめ……偵察が出来なかった…

そんなこんなでローズ祭を通過したのですが、なんだか攻略キャラ達が私に絡んでくるようになったのです。
おそらくリナリアはウィリアムルートで確定だと思うのだけど、だからって他の攻略キャラ達こっち来すぎではないでしょうか……。
そして懸念すべきはルート確定で起きるリナリアへの嫉妬から起きるいじめだ。
本来ならば悪役令嬢である私が主犯として取り巻きを使ってあれやこれやと仕掛けるのだけど、生憎私は悪役令嬢になるつもりは無い。
けれど私がやらずともほかの人間がシナリオ上やるのだろうし、何かの修正力で私が主犯として担ぎあげられるやもしれない。
そうなれば本当に今までの努力が無駄になるので出来ればむしろ止めていきたい。

ウィリアムルートは国すら巻き込むからね…!!

ヒロインがウィリアムを攻略し損ねても駄目、私が悪役令嬢として極刑相当の処分を受けても駄目、バッドエンドがそこらに転がっている……。
憂い事だらけだけどため息をつこうものならばディモルやナズナが血相を変えて大騒ぎだしちっとも気を抜ける場所がない。

ああ……先が思いやられるわ……。

パーティーで親しくなれたのか、リナリアと王子は私への指名はどこへやらですっかり二人一緒に行動しているのでそっとしておこう。
これで放課後エレンに会いに行くという手間も省けて万々歳、楽になるぞぅ!
……まあ、代わりといってはなんだけど、面倒を見る人数が増えたというのがなんとも言えないところ。
しかもリナリアと居るはずの王子は時々こちらに視線を寄越してくる。
それもかなり見られていて視線をものすごく感じるんです…。
別に私は王子には何もしていないので、そんなに熱い視線を送られる理由がわからない。
何か言いたげなんだけど言葉が通じないし聞いてもなぁと私からは動けない。
そわそわする時間が日に何回か出来ることとなってしまった。
席も隣だから何があろうとも必ず顔を合わせるのだけど現状私のメンタルは悲鳴を上げそうです。
もうなんだか訳が分からないけど距離を置かれるのなら完全に距離を取って頂きたい……。

ものの見事に悪役令嬢のフラグを踏んでいるよ私……。

悪役令嬢イリスの各キャラ共通の破滅までの道のりはこうだ。

対象キャラとの出会いで悪印象を植え付け、初っ端からヒロインを貶す。
入学直後の試験にて順位が自分より高いヒロインを不正行為でもしたんじゃないかと噂する。
ローズ祭ではヒロインが選ぼうとする相手のパートナーになって組ませないようにしたりもするが、攻略キャラによりイリスは置いていかれる予定だった。
攻略キャラが確定するとイリスはそのキャラクターについてまわり何かとヒロインの邪魔をしだす。
この時から取り巻き達による陰湿ないじめが始まる。
そしてイリス自らがいじめに加わり始めるとことは悪化していく。
学園祭ではヒロインを閉じ込めたりもするし、参加する劇ではヒロインが作る小道具や衣装を破ったりもする。
最終的にはヒロインを階段から突き落としたり人攫いを差し向けたりなど犯罪まがいの事をしでかして発覚、そのまま極刑相当の処分を下される。
基本的には国外追放や平民降格などだが酷いものでは処刑されたり殺されたりもする。
キャラクターのルートによって違いはあるもののやっている事がかなり酷いため最後に待ち受けているものはバッドエンドしかない。
今のところどれもそれらしくは踏んでいないけれど、似たような大筋を進んでいるので警戒も怠れない。

「あのぅ……イリス様……?」

「あら、失礼。何か御用かしら?」

「お取り込み中申し訳ありません…わたくし王宮に仕える者なんですけど少々イリス様にお伝えしたい事がありまして……」

「王宮の……?何かしら」

と言いつつもこの学園の制服を着ているということは貴族階級の人間なのは確かだ。
だとするなら近衛騎士家系の貴族か王家の血族の公爵の人間だろうか。
白い髪に金色の目が特徴的だけど私は初めて会うような気がする。

「唐突ではあるのですが…その……第一王子からイリス様へ王城へのご招待が……」


本当に突拍子もない事になりました。


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