悪役令嬢に転生したら言葉の通じない隣国の王子様に好かれました…

市瀬 夜都

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08 話を聞いてください

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誘いを受ける言葉を言った途端ナズナから告げられた衝撃の事実に為す術なく固まっていると後ろからつい最近聞いたばかりの声が聞こえてきた気がした。

──ええ、切実に気の所為であって欲しいです。

「ウィリアム王子なら仕方ないと諦めたけど、ディムが相手なら僕も立候補させてもらおうかな」

「なっ、ハイド!横から掻っ攫おうなんてそうはいかない!それにたった今了承を貰ったところだ!」

「でも彼女、乗り気じゃあ無さそうな顔してるし?を選んだんじゃなくて正直身分が合えば良かっただけだろ」

「なっ……!!」

公衆の面前で私を置いて広がる修羅場のような何かに頭を抱える。
ていうかあなた方リナリアの攻略対象でしょうよ……設定は何処へ……

「お二人共、少し落ち着いては?」

「「落ち着いて(るさ)」(ますとも!)」

ええー……何でそこは息ぴったりなのよ…

息巻くディモルとハイドの二人は互いに睨み合いながら額をぶつけ合った。
動物の雄同士の喧嘩じゃあないんだから…貴族二人が人前で恥ずかしくないのかしら…

「こうなれば……」

「イリス様を賭けて……」

「「勝負だ!!!」」


───なんなのこの茶番!!!??





▷▷


そんな調子で二人は授業中も、休み時間も、昼食時までも何かにつけて勝負だ!と競い合い、終わらなさすぎる仁義なき戦いが繰り広げられていた。
その間に私がなんと声をかけようと聞く耳持たず、周りに修羅場が晒されていくだけの拷問を絶賛受けています。
途中で合流したウィリアム王子も不思議そうにそれを眺めているし。

「ていうかさぁ……ディム、僕より爵位下なんだからいい加減立場弁えて譲ったらどうなんだよ…」

「爵位なんて家の立場に過ぎないだろ…まだ俺達は家を継いでないんだから関係ないね…」

ゼェゼェと息を荒らげながら今なお言い合う二人は仲がいいのやら悪いのやら……。
王子は隣で呑気に息の上がっている二人を眺めては首を傾げている。
話しても言葉が通じないことを理解しているのか二人がいる前では全く話さず、首だけを動かしている王子がほんの少しだけ不思議に思えた。

私の前では伝わらなくとも沢山話すのに…調子が悪いのかしら……?

「もういい加減落ち着きませんこと…?」

「落ち着けませんよ、これは大事な戦いなんです…!」

「そうだよ、例え君に止められたって聞けないね」

私が何を言っても一蹴されてしまうので私が止めることも叶わず、ナズナは立場と面倒くささから既に匙を投げてしまっていた。
というかファンクラブナンバー2が発覚したディモルはさて置きどうしてハイドがこんなに私のパートナーの座を狙っているのだろう。
幼馴染という程交流もなかったはずだし仲良くした覚えもない。
もしかして裏設定で幼馴染みたいな設定があったのかしら……だから修正力が働いてこんなにも強引に来ている…とか?


「その勝負、俺も混ぜてもらおうか」


いよいよ面倒くさくなってきたところで、私が聞きたくなかった声がもう一人増えた。

──そう、俺様ドSキャラのムーラン・マグノリアだ。

「これ以上増えると勝負の収集が付かなくなるのではありませんこと?またの機会でも───」

「勝負なんだ、いずれ勝者は出るだろう?要は勝てばいいんだからな」


あの……どうして私の話は誰一人として聞いてくれないのでしょうか…。


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