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5-怪盗アルセーヌと電脳の悪夢
ハッカーは面会に戻った
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5分後、面会室
「どうしても認めてくれないか、仕方ない……明日から査問委員会を開く、覚悟を決めておきたまえ」
朝、メルと会った場所でティーはいよいよ追い込まれていた。テーブルの反対側には戦闘部隊総指揮官、右の壁には監視の兵士がおり、左の壁で勝ち誇った顔をする男を睨んでいる。皆よくやってくれたが、やはりハッキングだのバックドアだのいう話を理解できる者は少ない、人間の証言者が現れればそちらへ傾く、例えそれが嘘だとしても。
万事休すだ、これからティーの糾弾が始まる。ここから無罪になるとしてもどれだけかかるか、そして無罪になっても禍根なく復帰できるのか。
もう駄目だ、と、ティーは確信した。
したのだが。
「え……」
突如、背後のドアが開いた。
白の長袖ワンピースと白のケープレットを着た白い髪の少女である、まったくの無表情で入室してきた。若干小汚いノートパソコンとヘッドホンを右腕で胸に抱え、左手でドアを閉める。ぽかんとするティーの横を通って総指揮官へ、テーブルにパソコンを置く。
「なんだ君は、誰も入れるなと……」
「急を要する、非常に重要」
「おぉっ……」
問答無用とばかり、彼はヘッドホンをかぶせられた。直ちに動画の再生が開始され、最初は訝しんでいた彼も一目見るや食いついてしまった。そのまま数十秒、左の壁の男が沈黙に耐え切れず、総指揮官に歩み寄ろうとした直後に再生は終わる。少女は速やかにパソコンを回収して退出、総指揮官は…額を汗がたらり。
「その……中隊長、何か致命的な齟齬があったらしい、許してくれ」
「え?」
「は?」
「ん?」
室内の4人中3人が素っ頓狂な声を出す、総指揮官が立ち上がってテーブルを回り、釈明するように手をせわしなく動かすのを見て、まずティーが状況を理解、勢いよく立ち上がった。
「いえ気にしなくてください、誤解が解けたならそれで」
「すぐ業務に戻ってくれ、仮称57作戦は11日後だ、準備を整えろ」
右手で握手、一歩下がって敬礼し、ティーはドアへ向かう。
「ちょ、ちょっと待ってください、それはおかしい」
「アウル、そこに座れ」
「俺は確かに…!」
「座れ! 弁明はその後だ!」
最後に見たのはそれと、全力で笑いを堪える監視だった。ぱたりとドアを閉め、大きく息を吐いて、さて、と振り返る。
紫ショートカットでビックTシャツの少女が待っていた、なんか棒を振っている。スイングフォームは野球のそれだったが、何か気に食わなかったらしく、歩み寄っているうちにゴルフに切り替わっていた。
「メル」
「お……よーしよし、これをプレゼントしよう」
「何コレ? ……何コレ?」
「やっぱ似合うわ」
「何コレ!?」
「じゃ、また明日ー!」
「ちょっとーー!?」
手渡された棒1本、それだけ残してメルは行ってしまう。なんて奴だ、お礼すら言わせてくれないとは。
まぁいい、言葉ならいつでも言える。3週ぶりの自由、いや4週だったか? やらねばならない事は山のようにある。すべて次までに片付けないとならない。
「……で、コレ何?」
まずはこの棒、家に置いてこないと。
「どうしても認めてくれないか、仕方ない……明日から査問委員会を開く、覚悟を決めておきたまえ」
朝、メルと会った場所でティーはいよいよ追い込まれていた。テーブルの反対側には戦闘部隊総指揮官、右の壁には監視の兵士がおり、左の壁で勝ち誇った顔をする男を睨んでいる。皆よくやってくれたが、やはりハッキングだのバックドアだのいう話を理解できる者は少ない、人間の証言者が現れればそちらへ傾く、例えそれが嘘だとしても。
万事休すだ、これからティーの糾弾が始まる。ここから無罪になるとしてもどれだけかかるか、そして無罪になっても禍根なく復帰できるのか。
もう駄目だ、と、ティーは確信した。
したのだが。
「え……」
突如、背後のドアが開いた。
白の長袖ワンピースと白のケープレットを着た白い髪の少女である、まったくの無表情で入室してきた。若干小汚いノートパソコンとヘッドホンを右腕で胸に抱え、左手でドアを閉める。ぽかんとするティーの横を通って総指揮官へ、テーブルにパソコンを置く。
「なんだ君は、誰も入れるなと……」
「急を要する、非常に重要」
「おぉっ……」
問答無用とばかり、彼はヘッドホンをかぶせられた。直ちに動画の再生が開始され、最初は訝しんでいた彼も一目見るや食いついてしまった。そのまま数十秒、左の壁の男が沈黙に耐え切れず、総指揮官に歩み寄ろうとした直後に再生は終わる。少女は速やかにパソコンを回収して退出、総指揮官は…額を汗がたらり。
「その……中隊長、何か致命的な齟齬があったらしい、許してくれ」
「え?」
「は?」
「ん?」
室内の4人中3人が素っ頓狂な声を出す、総指揮官が立ち上がってテーブルを回り、釈明するように手をせわしなく動かすのを見て、まずティーが状況を理解、勢いよく立ち上がった。
「いえ気にしなくてください、誤解が解けたならそれで」
「すぐ業務に戻ってくれ、仮称57作戦は11日後だ、準備を整えろ」
右手で握手、一歩下がって敬礼し、ティーはドアへ向かう。
「ちょ、ちょっと待ってください、それはおかしい」
「アウル、そこに座れ」
「俺は確かに…!」
「座れ! 弁明はその後だ!」
最後に見たのはそれと、全力で笑いを堪える監視だった。ぱたりとドアを閉め、大きく息を吐いて、さて、と振り返る。
紫ショートカットでビックTシャツの少女が待っていた、なんか棒を振っている。スイングフォームは野球のそれだったが、何か気に食わなかったらしく、歩み寄っているうちにゴルフに切り替わっていた。
「メル」
「お……よーしよし、これをプレゼントしよう」
「何コレ? ……何コレ?」
「やっぱ似合うわ」
「何コレ!?」
「じゃ、また明日ー!」
「ちょっとーー!?」
手渡された棒1本、それだけ残してメルは行ってしまう。なんて奴だ、お礼すら言わせてくれないとは。
まぁいい、言葉ならいつでも言える。3週ぶりの自由、いや4週だったか? やらねばならない事は山のようにある。すべて次までに片付けないとならない。
「……で、コレ何?」
まずはこの棒、家に置いてこないと。
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