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.338口径のモンテクリスト
黄昏の墓標
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「ヒナちゃんってさ、丸くなったよね」
「……また?」
そこらに転がっていた錆び錆びなシャベルだ、そいつを傷だらけの腕で動かして、スナイパーどもの墓からやや離れた場所の地面を埋めていく。
「こんな激戦地に生まれて、幸せな思いなんかした事なくて、AIのせいでそんな体になったのに、AIの墓なんか建てたりしてる」
さっきまでメルはナイトメアの残骸をいじくって何かしていたが、いつの間にか白い、ただし小さい花をどこからか積んできて、墓前に1輪ずつ置いている。
「……感情か、それを持ってしまっただけでも十分なバグだけど、彼女をここまで狂わせたのは"共感"だろうね。自分にまったく関係ない他者を気遣える生き物はほとんどいないんだ、私はソレこそ、人間とそれ以外を隔てるものだと思ってる」
「人間……」
シャベルを放って、用意しておいた鉄骨(長)を突き立てる。それから針金とコンクリート片、鉄骨(短)。組み合わせれば十字架ができた。
「いつかAIは人間に進化する、って?」
「積み重なったバグやエラーによって本来の機能が失われていくのを進化と呼ぶならば」
Nightmare、中央に固定したコンクリートへサバイバルナイフで刻み込む。その下に記述すべきものに困っていると「BD-3LR Liberator」とメルが奴の型番を口にする。
「管理者とやらの命令を突っぱねようとした痕跡がいくつもあった、AI兵器という群体にとって重大な障害が発生しつつある、ように見える。それが単なる故障なのか、ひとつ先の次元に進もうとしているのかは見方によるけど……彼らは単なる兵器ではなくなろうとしてる、意思を持った何か、まるで人間のような」
すべて終えて溜息ひとつ、顔を上げると太陽は沈みかけていた。いくらかの雲が浮かぶ空は赤く染まり、荒廃した地上を照らしていて、目を細めながら見ているとメルも同じ方向を見始めた。そのまま数秒、しゃがんでお供えしていた彼女は立ち上がってヒナの隣まで移動し、最後の1輪を作ったばかりの墓へ。
「そして人間を滅ぼしたAIは自己進化の果てに人間となった、か。それを終わらせた時、彼らは一体何を目的にするんだろうね」
「人間の知ったことじゃない」
「ん、まぁ、それもそうか」
ちらりとヒナの顔を見たメルは笑みを深めて、それでこの場でやるべき事はすべて終わり。それぞれ銃と荷物を持ち上げ、少しだけ今作ったモノを見て、すぐ目を戻した。
後ろを見てはいられない。
「帰ろ、いつも通りの地獄にさ」
「……また?」
そこらに転がっていた錆び錆びなシャベルだ、そいつを傷だらけの腕で動かして、スナイパーどもの墓からやや離れた場所の地面を埋めていく。
「こんな激戦地に生まれて、幸せな思いなんかした事なくて、AIのせいでそんな体になったのに、AIの墓なんか建てたりしてる」
さっきまでメルはナイトメアの残骸をいじくって何かしていたが、いつの間にか白い、ただし小さい花をどこからか積んできて、墓前に1輪ずつ置いている。
「……感情か、それを持ってしまっただけでも十分なバグだけど、彼女をここまで狂わせたのは"共感"だろうね。自分にまったく関係ない他者を気遣える生き物はほとんどいないんだ、私はソレこそ、人間とそれ以外を隔てるものだと思ってる」
「人間……」
シャベルを放って、用意しておいた鉄骨(長)を突き立てる。それから針金とコンクリート片、鉄骨(短)。組み合わせれば十字架ができた。
「いつかAIは人間に進化する、って?」
「積み重なったバグやエラーによって本来の機能が失われていくのを進化と呼ぶならば」
Nightmare、中央に固定したコンクリートへサバイバルナイフで刻み込む。その下に記述すべきものに困っていると「BD-3LR Liberator」とメルが奴の型番を口にする。
「管理者とやらの命令を突っぱねようとした痕跡がいくつもあった、AI兵器という群体にとって重大な障害が発生しつつある、ように見える。それが単なる故障なのか、ひとつ先の次元に進もうとしているのかは見方によるけど……彼らは単なる兵器ではなくなろうとしてる、意思を持った何か、まるで人間のような」
すべて終えて溜息ひとつ、顔を上げると太陽は沈みかけていた。いくらかの雲が浮かぶ空は赤く染まり、荒廃した地上を照らしていて、目を細めながら見ているとメルも同じ方向を見始めた。そのまま数秒、しゃがんでお供えしていた彼女は立ち上がってヒナの隣まで移動し、最後の1輪を作ったばかりの墓へ。
「そして人間を滅ぼしたAIは自己進化の果てに人間となった、か。それを終わらせた時、彼らは一体何を目的にするんだろうね」
「人間の知ったことじゃない」
「ん、まぁ、それもそうか」
ちらりとヒナの顔を見たメルは笑みを深めて、それでこの場でやるべき事はすべて終わり。それぞれ銃と荷物を持ち上げ、少しだけ今作ったモノを見て、すぐ目を戻した。
後ろを見てはいられない。
「帰ろ、いつも通りの地獄にさ」
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