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第5話『胡散臭い』
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テストを無事終え、その日は終わった。
私や東海林凛の名前がやや有名だったおかげで話のネタができ、あの緊張感に包まれた殺伐とした空気はやや緩んだ。
ーーーA組には、私たち以外にも名家の出身の者は数人いる。社長を父に持つ生徒も何人もいた。
大丈夫よ、杏里。
いくら仲家が大財閥とは言え‥
私が姫になるとはまだ決まっていないわ!
メデューサのような瞳で東海林凛を攻撃し続けたおかげか、東海林凛があの忌々しい結婚ネタを口に出すことはなかった。
一応ヤツも空気は読めるらしい。
一夜明けた今日は、朝からこの学園についての説明と、施設や設備の説明があった。
この学園を去る際に、学園に返却しなくてはならない重要書類も配られた。
これは、山下先生が口頭で説明してくれた学園についての様々なルールや規則が記されている。
ちなみに、この書類は不正に持ち出したり、情報を漏洩したりすることは断固として禁じられている。
国を挙げての学園ならではの厳しい管理の下、月に一度の点検もある。
もしも情報を漏らした場合、即退学、即逮捕というとんでもない代物だ。
今日クラス全員に、アンティーク調の銀のロケットペンダントが配られた。
焦げ茶の革紐によって首からぶら下げることになっているのだが、中身は空の状態だ。
何とも不思議なパワーを秘めているらしく、もしも自分が王子・姫に選ばれた場合、ロケットペンダントを開くと、自分の写真が自動的に貼られているらしい。
王子・姫は学園によって、4月末に1クラス1名決められる。選ばれなかった者は自動的に騎士になる。
騎士は、5月末までにどの王子・姫に仕えるか決めなくてはならない。
王子・姫に跪き、騎士が差し出した手を王子・姫が取れば契約は成立となり、晴れて専属の騎士となる。騎士のロケットペンダントは、お守りする王子・姫の写真が自動的に入るらしい。
‥どういう仕組みで自動的に写真が入るのかはさっぱりわからない。とってもアナログな代物に見えるけど、こう見えて実はハイテクなプログラムが埋め込まれてたりして‥?!
ロケットペンダントを開いてまじまじと見つめるけど、私にはやっぱりただのアンティーク調のペンダントにしか見えない。
不思議なのはロケットペンダントだけではない。
王子・姫に選ばれた者には、それぞれに特殊な能力が付与されるんだとか‥。専属騎士はその能力にあやかって、敵チームと戦う‥らしい。
つまり、学園全体が中2病ということだ。
‥手からビームでも出せるんだろうか。
不思議な能力とか、もう別次元の話すぎて戦うのが怖いんだけど、学園内には特殊な結界のようなものがあって、学園内では人は死なないらしい。
改めて聞くと、なんてムシのいい話なんだ‥て思っちゃうけど。
休み時間中に聞いたクラスメイトの話では、学園には『伝説』があって、昔‥能力で『不死』という力を手に入れたお姫様が、今も学園のどこかに眠り続けて、この学園を守り続けてるんだとか‥‥。
そんなの本当な訳がないけどね。
とりあえず今日聞いた話はここまでだった。
覚悟していたつもりだけど、あまりにもお伽話すぎて学園がすっかり胡散臭く感じてしまった。
午後の今の授業は、『学園倫理』っていう科目。
親交を深めるためにも、午前中受けた授業(学園の胡散臭いルール)を踏まえた上で自分の学園での目標を隣の人と語り合わなくてはいけないらしい。
「‥爪、だいぶ切ったんだな」
東條朔が引き気味でそう話す。
「当たり前じゃない。
血が出るのは嫌なのよ」
「へー‥」
「で、あんたの夢は?」
他の生徒たちが教師の指示に従って、細々と話し始めている。
私たちも一応話さないと‥。
「んー‥卒業?」
「まぁ普通そうよね」
「お前は騎士?」
東條朔は昨日同様、またもやニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべている。
確かに私は体が小さいことがコンプレックスだけど、それでもしっかり鍛えている。
私が騎士を目指したって、とやかく言われる筋合いはないはずだ。
「悪い?!」
「そんなに姫が嫌なんだ?」
「嫌よ」
「あいつとの結婚が待ってるから?」
そう言って、親指で東海林凛を指差している。
そういえば、こいつには入学式の時に東海林凛との会話を聞かれてたんだった。
「そうよ。
でもそれだけじゃない」
結婚が嫌だからってのが、まず第一前提だけど‥
私の人生を全て思い通りに操ろうとする父に、ぎゃふんと言わせたい。その思いが強いんだ。
「‥父の駒になりたくないの」
「‥‥‥ふーん」
東條朔は、大して興味なさそうに、だけど目を逸らさずに気の抜けた返事をした。
今日の東條朔は、まだそこまで引かれることを言ってないからか、まだ不機嫌な顔はしていない。
こうして普通の表情をしていると、やっぱり端正な顔立ちだったりする。
「あんたは御曹司?それとも腕っぷし?」
「さあ?」
中には勿論、『どっちも』という人もいるだろう。
VIPと言えど、王子・姫はクラスに1人のみ。選ばれないことを想定して、みっちり鍛えてくる人もいるはずだ。
例を挙げれば、東海林凛なんかはまさしくそれだ。
結局、私のことばかり話して、東條朔の話は当たり障りのない薄い内容だけだった。
目標は卒業、
御曹司か腕っぷしかは秘密。
まぁ別に、もっとこいつを知りたい!とかは別に思ってないからどうでもいいんだけど。
私や東海林凛の名前がやや有名だったおかげで話のネタができ、あの緊張感に包まれた殺伐とした空気はやや緩んだ。
ーーーA組には、私たち以外にも名家の出身の者は数人いる。社長を父に持つ生徒も何人もいた。
大丈夫よ、杏里。
いくら仲家が大財閥とは言え‥
私が姫になるとはまだ決まっていないわ!
メデューサのような瞳で東海林凛を攻撃し続けたおかげか、東海林凛があの忌々しい結婚ネタを口に出すことはなかった。
一応ヤツも空気は読めるらしい。
一夜明けた今日は、朝からこの学園についての説明と、施設や設備の説明があった。
この学園を去る際に、学園に返却しなくてはならない重要書類も配られた。
これは、山下先生が口頭で説明してくれた学園についての様々なルールや規則が記されている。
ちなみに、この書類は不正に持ち出したり、情報を漏洩したりすることは断固として禁じられている。
国を挙げての学園ならではの厳しい管理の下、月に一度の点検もある。
もしも情報を漏らした場合、即退学、即逮捕というとんでもない代物だ。
今日クラス全員に、アンティーク調の銀のロケットペンダントが配られた。
焦げ茶の革紐によって首からぶら下げることになっているのだが、中身は空の状態だ。
何とも不思議なパワーを秘めているらしく、もしも自分が王子・姫に選ばれた場合、ロケットペンダントを開くと、自分の写真が自動的に貼られているらしい。
王子・姫は学園によって、4月末に1クラス1名決められる。選ばれなかった者は自動的に騎士になる。
騎士は、5月末までにどの王子・姫に仕えるか決めなくてはならない。
王子・姫に跪き、騎士が差し出した手を王子・姫が取れば契約は成立となり、晴れて専属の騎士となる。騎士のロケットペンダントは、お守りする王子・姫の写真が自動的に入るらしい。
‥どういう仕組みで自動的に写真が入るのかはさっぱりわからない。とってもアナログな代物に見えるけど、こう見えて実はハイテクなプログラムが埋め込まれてたりして‥?!
ロケットペンダントを開いてまじまじと見つめるけど、私にはやっぱりただのアンティーク調のペンダントにしか見えない。
不思議なのはロケットペンダントだけではない。
王子・姫に選ばれた者には、それぞれに特殊な能力が付与されるんだとか‥。専属騎士はその能力にあやかって、敵チームと戦う‥らしい。
つまり、学園全体が中2病ということだ。
‥手からビームでも出せるんだろうか。
不思議な能力とか、もう別次元の話すぎて戦うのが怖いんだけど、学園内には特殊な結界のようなものがあって、学園内では人は死なないらしい。
改めて聞くと、なんてムシのいい話なんだ‥て思っちゃうけど。
休み時間中に聞いたクラスメイトの話では、学園には『伝説』があって、昔‥能力で『不死』という力を手に入れたお姫様が、今も学園のどこかに眠り続けて、この学園を守り続けてるんだとか‥‥。
そんなの本当な訳がないけどね。
とりあえず今日聞いた話はここまでだった。
覚悟していたつもりだけど、あまりにもお伽話すぎて学園がすっかり胡散臭く感じてしまった。
午後の今の授業は、『学園倫理』っていう科目。
親交を深めるためにも、午前中受けた授業(学園の胡散臭いルール)を踏まえた上で自分の学園での目標を隣の人と語り合わなくてはいけないらしい。
「‥爪、だいぶ切ったんだな」
東條朔が引き気味でそう話す。
「当たり前じゃない。
血が出るのは嫌なのよ」
「へー‥」
「で、あんたの夢は?」
他の生徒たちが教師の指示に従って、細々と話し始めている。
私たちも一応話さないと‥。
「んー‥卒業?」
「まぁ普通そうよね」
「お前は騎士?」
東條朔は昨日同様、またもやニヤニヤと嫌な笑顔を浮かべている。
確かに私は体が小さいことがコンプレックスだけど、それでもしっかり鍛えている。
私が騎士を目指したって、とやかく言われる筋合いはないはずだ。
「悪い?!」
「そんなに姫が嫌なんだ?」
「嫌よ」
「あいつとの結婚が待ってるから?」
そう言って、親指で東海林凛を指差している。
そういえば、こいつには入学式の時に東海林凛との会話を聞かれてたんだった。
「そうよ。
でもそれだけじゃない」
結婚が嫌だからってのが、まず第一前提だけど‥
私の人生を全て思い通りに操ろうとする父に、ぎゃふんと言わせたい。その思いが強いんだ。
「‥父の駒になりたくないの」
「‥‥‥ふーん」
東條朔は、大して興味なさそうに、だけど目を逸らさずに気の抜けた返事をした。
今日の東條朔は、まだそこまで引かれることを言ってないからか、まだ不機嫌な顔はしていない。
こうして普通の表情をしていると、やっぱり端正な顔立ちだったりする。
「あんたは御曹司?それとも腕っぷし?」
「さあ?」
中には勿論、『どっちも』という人もいるだろう。
VIPと言えど、王子・姫はクラスに1人のみ。選ばれないことを想定して、みっちり鍛えてくる人もいるはずだ。
例を挙げれば、東海林凛なんかはまさしくそれだ。
結局、私のことばかり話して、東條朔の話は当たり障りのない薄い内容だけだった。
目標は卒業、
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