10 / 17
第9話 幼子のユユ(1)
しおりを挟む私は、この可笑しな世界でのループ生活が始まる前‥つまり、生前は『保育士』だった。
とはいっても、実生活では彼氏すらいなくて、母親経験はなかったんだけど。
転生(?)と同時にこの12年にも及ぶ転生生活が始まったけど、正直生前の暮らしはうる覚えな所が多い。
だけど、保育士だったということだけは確かに記憶しているんだ。
そんな私の前に、2歳半くらいの幼子が1人。
レイに抱かれて突然現れたその子は、唇は紫色で眠っているのか意識を失っているのか、瞳は閉ざされた状態だった。
「この子どもを白魔法で回復させてくれ」
レイが私に縋るようにそう言う。
横抱きにされたその子どもは、首が力なく曲がっており、なんとも居心地が悪そうだ。
突然レイが血相を変えてこの部屋に入ってきて、この状況は始まった。もちろん、ゲームの世界じゃこんなストーリーはないし、こんな幼子は登場してこない。
私はレイの腕からその子どもを受け取った。うん、軽い。見た目にも痩せ気味なのが分かる。
もしかしたら、2歳半くらいに見えるけど実年齢はもう少し上かもしれない。
脈と呼吸を確かめたあと、私は白魔法でその子どもを回復させた。
ローラもこの場にいるけど、どうやら封魔のネックレスの能力は、ローラの意思によって効力の有無が変わるらしい。
紫色の唇が、ピンク色へと変わる。
蒼白していた顔面も、少し赤みを帯びた。
「‥この子は?」
私がそう尋ねると、レイは少しの間を開けた後に口を開いた。
「‥部下が近くの森で偶然見つけたんだ。
捨て子だろう」
“部下”
その言葉に、私はほんの少し違和感を覚えた。
勇者の元に向かわせた仲間を“手下”と呼び、この世界で捨て子をわざわざ拾う仲間を“部下”と呼ぶ。
立場的には変わらないかもしれないけど、この“手下”と“部下”は、内訳が違うかもしれない。
「‥‥温かい粥を作ってもらってくれる?
それと、毛布を持ってきて。白湯もお願い」
私がそう言うと、レイはほんの少し驚いた表情を見せた後にすぐに家来のような人を呼んで指示を出してくれた。
これが現世であれば、救急車を呼んでる。
私は元保育士であって、看護師でもお医者さんでもない。
それに、この世界の食べ物は現世とは違う。何が乳幼児には向いてなくて、何が相応しい食べ物がなんて、この世界では分からない。
だから、探り探りになってしまうのは、この子にはとても申し訳ないけど‥
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる