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第9話 幼子のユユ(1)

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私は、この可笑しな世界でのループ生活が始まる前‥つまり、生前は『保育士』だった。

とはいっても、実生活では彼氏すらいなくて、母親経験はなかったんだけど。

転生(?)と同時にこの12年にも及ぶ転生生活が始まったけど、正直生前の暮らしはうる覚えな所が多い。

だけど、保育士だったということだけは確かに記憶しているんだ。



そんな私の前に、2歳半くらいの幼子が1人。
レイに抱かれて突然現れたその子は、唇は紫色で眠っているのか意識を失っているのか、瞳は閉ざされた状態だった。


「この子どもを白魔法で回復させてくれ」


レイが私に縋るようにそう言う。
横抱きにされたその子どもは、首が力なく曲がっており、なんとも居心地が悪そうだ。


突然レイが血相を変えてこの部屋に入ってきて、この状況は始まった。もちろん、ゲームの世界じゃこんなストーリーはないし、こんな幼子は登場してこない。


私はレイの腕からその子どもを受け取った。うん、軽い。見た目にも痩せ気味なのが分かる。
もしかしたら、2歳半くらいに見えるけど実年齢はもう少し上かもしれない。

脈と呼吸を確かめたあと、私は白魔法でその子どもを回復させた。
ローラもこの場にいるけど、どうやら封魔のネックレスの能力は、ローラの意思によって効力の有無が変わるらしい。


紫色の唇が、ピンク色へと変わる。
蒼白していた顔面も、少し赤みを帯びた。


「‥この子は?」


私がそう尋ねると、レイは少しの間を開けた後に口を開いた。


「‥部下が近くの森で偶然見つけたんだ。
捨て子だろう」


“部下”


その言葉に、私はほんの少し違和感を覚えた。
勇者の元に向かわせた仲間を“手下”と呼び、この世界で捨て子をわざわざ拾う仲間を“部下”と呼ぶ。
立場的には変わらないかもしれないけど、この“手下”と“部下”は、内訳が違うかもしれない。


「‥‥温かい粥を作ってもらってくれる?
それと、毛布を持ってきて。白湯もお願い」


私がそう言うと、レイはほんの少し驚いた表情を見せた後にすぐに家来のような人を呼んで指示を出してくれた。


これが現世であれば、救急車を呼んでる。
私は元保育士であって、看護師でもお医者さんでもない。

それに、この世界の食べ物は現世とは違う。何が乳幼児には向いてなくて、何が相応しい食べ物がなんて、この世界では分からない。

だから、探り探りになってしまうのは、この子にはとても申し訳ないけど‥



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