わたし、性別偽ってオカマバーで働いてます

茶歩

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第2話 ブラック企業

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今から3ヶ月前。
期待を胸に就職した頃の話をしようと思う。


昔からの派手顔+めきめきと成長しすぎていった乳と尻。
さすがに22歳になる頃には、自分を客観視することができるようになっていて、確かにビッチにも見えなくはないなぁと思えるようになっていた。無駄に色気のあるぶ厚い唇も、要因の1つかな。

都会に出てきて磨いた女子力のおかげで、自分に似合う日焼け止めも見つけ、派手顔に似合うナチュラルメイクも学んだ。お気に入りの美容室のおかげで髪型も大人っぽく落ち着くようになった。
この乳と尻以外、もう目立つものはないのだ。

ちなみに、付き合った人数は高校生の頃も含めて3人。
おまえら乳と会話しとんのかというレベルな男しか寄ってこない日々。ようやくまともな人と出会えて付き合えたかと思えば、速攻で体を求められて別れるの繰り返し。
結局キスすら経験なしのまま今日を迎えている。つまり、まだ処女。

そんな乳と尻が隠れるようなオフィスカジュアルで、社会の門を叩いた私を待ち受けていたのは時代錯誤の精神論を掲げたブラック企業。規模の小さな広告代理店だ。

月の残業は100時間をゆうに超え、休日出勤も当たり前。寝る為だけに自宅に帰り、仮眠をしてまたもや出勤。先輩は神様仏様扱いの為、毎日の先輩のお昼ご飯のパシリはもちろんのこと歓迎会では尻を揉まれる有様。
鼻の下を伸ばし続ける上司には現状を相談することもできず、お局ババァにはいびられ続ける毎日。

自炊する気力も無く、終電が間に合わずタクシーで帰宅することもしばしば。
そのうえ、恐ろしいことに残業代は月30時間分が予め残業手当として支給されるということで、一定額。
そんな条件一切提示されていなかったのに。ていうか後から調べたら、企業はその30時間分を超えたら別途残業代を支払う義務があるらしいんだけど見事に有耶無耶にされていた。
先輩達が見事に素晴らしい社畜道を歩んでいるものだから、それに異議を唱えることもできない。

詰めが甘かった自分が悪いのはもちろん分かってる。
でも、社会人デビュー早々にこんなに見事に社畜になるとは思っていなかった。

大学生時代にやっていたパチンコ屋のカウンターのバイトの方がよっぽど条件が良かった。


弟は都心の某有名大学に一発合格。
勿論上京することに対する両親の反対は一切なし。

私と両親は高校の頃から馬が合わないまま、帰って来いの一点張り。


「こっちで就職して、シティガールになって、キャリアウーマンになって、バリバリ働いて、奨学金も返して、仕送りもしてやる!!見てろよ!」


と吠えた私は、意地で仕送りをしている始末。ちなみに自分が相当アホなのはわかっている。
数ヶ月後からは奨学金の返済も始まってしまう。どうにかこうにか地に根を生やし生活をしていきたいと、社蓄生活を気合いで乗り切り、更なる節約術を身に付けようとヤケになっていた。

だけど、毎日の残業と休日出勤、働いても働いても反映されない給料。さりげなく触られ続ける尻。満員電車で揉まれ続ける尻。

たった3ヶ月。されど3ヶ月。
大学生の頃に磨いた女子力も、メイク術も。生かされるどころか生かす気力すら生まれなくなった頃に悲劇は起きた。


「ちょっと仙崎さん?!?!」


お局の叫び声に、私は素っ頓狂な声を上げた。
いつもヒステリックだけど、今日のそれはまるでビル全体に響くんじゃないかって程の叫び。


「な、なんですか?!」


まさか何かやらかした‥?
いや、やらかしてなかったらこんなに叫ばないよね。


「あ、あ、あな、あなたでしょ!!!
明日相手先に提出予定の重要書類のデータ消したの!!」


「‥‥え?」


なんのことを言ってるの‥?


「貴女しかいないのよ!!さっき見てたわ!このパソコンに触ってるの!!!どういうつもりよっ!!!」


「えっ、そ、それは佐々木さん(お局)がキーボード掃除しろって言うから‥」


別の仕事をしていた私を急に召喚したのはお局。
しかも、その際電源は消えていた。つまり、キーボードには触れたけどパソコンは弄ってない。


「まぁ?!私はそんなこと頼んでないわよっ!!!」


お局の勢いが凄まじい。
わらわらと出来上がる人集り、降り注ぐお局の断末魔。

部長に連れ出された私が見たのは、お局が後ろを向く際にチラリと見えたほくそ笑む横顔。


ああ、そういうことか‥。
嵌められたのか。



どんなに説明しても信じてもらえなかった。
この会社に不満を持っていた私が腹いせに敢えてデータを消したのだと、何故かそう信じ込まれてしまった。

私には再教育の場が設けられ、もう二度とそんなことはしないと誓約書を書くように促された。反省文を書くようにと白紙の紙も2枚渡された。


誓約書を書く際に、高校生の頃ぶりに涙が溢れてきた。
馬鹿馬鹿しくて仕方なかった。

次いで、再教育の場では鼻を伸ばした上司との2人きり。

「君の処分は決定していないけど、減給は免れないかもね‥まぁ俺が何とかしてやってもいいよ?‥君次第だけどね」


上司は私の乳と会話しながらそう言った。


もううんざりだと思った。
私はその場で無言のまま、反省文用に渡されていた白紙の紙に退職する旨を書いて突き付けた。



それが、5日前の出来事。

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