49 / 76
第47話
しおりを挟む「大丈夫か‥?頭痛酷そうだな」
私の様子を見てギルさんが眉を顰めている。
外ではフクロウが鳴いていて、夜が深まっていることを伝えていた。
あのあと、プテラス領を後にする人も若干名いた。
だけどほとんどがこの地に残った為、早急に環境を整える必要があった。
ルーン村の人々にも頭を下げ、溜まりに溜まった魔法石を元に寝床を作ってもらい、獣人に備えて警備もかなり強化した。
いくら第4宝庫まで魔法石がいっぱいだとしても、自分自身の魔力でなんとかしたい!と張り切ってしまった結果、この有り様だ。
1000人程の移動魔法を使った後だから、人生で初めて魔力切れの症状が出た。魔力切れの頭痛や目眩には、回復魔法は効かないらしい。横になって静養するしかないんだそうだ。
「横になってると‥なんだか楽になる気がします」
ガンガンとトンカチで頭を殴られていたような頭痛も、少しは和らぐ。
私はいま自室のベットに転がっていた。本当ならまだ歩き回って魔法をかけて回りたいのに‥。
「今日は無理させたな」
「私が好きでしたことですから‥
むしろ人数多すぎましたよね、ギルさんのお仕事すっごく増やしてしまってすみません‥」
「俺は大丈夫だ。
それに、これはプテラス領の勢力を伸ばすチャンスでもある」
まさかこんなに沢山の人々を移動させることになるとは思っていなかった。それだけ、あの獣人の勢いが増してるってことなんだよね、きっと。
「そうかもしれませんけど‥ギルさんも疲れましたよね‥
私は大丈夫ですから、ギルさんも休んでください」
「‥もし体調が急変したらどうするんだよ」
「急変しませんよ、大袈裟ですよ」
ルーン村の人々から魔力切れによる症状を聞いたことがある。
頭痛や目眩、吐き気や動悸息切れなんかの症状があるんだって。基本的に寝て朝を迎えれば魔力が自然に補充されてて元に戻ってるんだとか。
「アイナの魔力は人と違うんだから、症状も悪化する可能性だってあるだろ」
ギルさんが少し怒ってる。
私のことで怒ってくれるなんて嬉しいけど‥ギルさんだってこの異常事態で大忙しだったんだし、やっぱり休んでほしい。
「‥それなら、ギルさんもこの部屋で寝ましょう」
「?!」
「そうすればギルさんだって休めますし、もし何かあったらギルさんのこと起こしますから!それで解決しますよね!」
「いや、それはさすがに‥」
「え?何か問題ありますか?」
「っ‥!!‥‥ないけど!」
ギルさんは隣の自室からタオルケットを持ってきて、私のベットの横にあるソファに寝っ転がった。
「ソファじゃ疲れ取れないですよね?
こっち全然余裕ありますよ!」
贅沢にも、エルマーさんが用意してくれたベットはとてもサイズが大きい。大人3人でも余裕で横になれてしまうのだ。
「おやすみ!!」
だけどギルさんはソファから動かずに、少し怒り気味にそう言った。
どうして怒らせちゃったんだろう‥。やっぱり自分のベットの方が良かったかな。‥そりゃそうだよね。
「おやすみなさい、ギルさん。
心配してくれてありがとうございます」
「ん」
そう言って私たちは眠りについた。
明日からはきっともっと大忙しだ。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
欲しいのならば、全部あげましょう
杜野秋人
ファンタジー
「お姉様!わたしに頂戴!」
今日も妹はわたくしの私物を強請って持ち去ります。
「この空色のドレス素敵!ねえわたしに頂戴!」
それは今月末のわたくしの誕生日パーティーのためにお祖父様が仕立てて下さったドレスなのだけど?
「いいじゃないか、妹のお願いくらい聞いてあげなさい」
とお父様。
「誕生日のドレスくらいなんですか。また仕立てればいいでしょう?」
とお義母様。
「ワガママを言って、『妹を虐めている』と噂になって困るのはお嬢様ですよ?」
と専属侍女。
この邸にはわたくしの味方などひとりもおりません。
挙げ句の果てに。
「お姉様!貴女の素敵な婚約者さまが欲しいの!頂戴!」
妹はそう言って、わたくしの婚約者までも奪いさりました。
そうですか。
欲しいのならば、あげましょう。
ですがもう、こちらも遠慮しませんよ?
◆例によって設定ほぼ無しなので固有名詞はほとんど出ません。
「欲しがる」妹に「あげる」だけの単純な話。
恋愛要素がないのでジャンルはファンタジーで。
一発ネタですが後悔はありません。
テンプレ詰め合わせですがよろしければ。
◆全4話+補足。この話は小説家になろうでも公開します。あちらは短編で一気読みできます。
カクヨムでも公開しました。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる