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第26話
しおりを挟む何種類もの緑が光を浴びて煌き、色とりどりの花や実が豊かな南国を想像させる。私たちはそんな素敵な地『プテラス』に再び訪れた。
もう旱魃の地という二つ名は幻ね。
「ギル様!アイナ様!」
大きな声をあげて駆け寄ってきたのは、取引の際にいた初老の男性。
名前は確か『エルマー』さん。プテラスにある村の村長さんらしい。
エルマーさんの隣には『クレア』さん。レックスの母だ。
「お久しぶりです。
ほら、レックス!ママですよー」
私がそう言ってレックスをクレアさんの腕に返すと、クレアさんはぽろぽろと大粒の涙を溢した。
「ありがとうございます‥!!ありがとうございますっ!!」
「当然のことをしたまでです!ね、ギルさん?」
「あぁ」
私たちはエルマーさんのご自宅に案内された。
木製の高床式の住居で、質素だけど風通りが良くて心地よさがあった。
「まさか本当に、レックスが戻ってくるとは‥
本当に何と感謝をお伝えすればいいのか‥‥」
そう言って、エルマーさんは深々と頭を下げている。
木製の窓から見える外の世界は豊かに潤っていて、心が洗われるようだった。
望んで行った復讐だったし、復讐が無事終わって清々してる。
だけど団長の死も含め、人に悪意を向けて危害を加えたのは初めてのこと。心が晴れたのか曇ったのかよくわからないモヤモヤがあった。
でも今日この景色やクレアさんの涙を見て、これがあるべき姿だと強く思った。
「ひとつ頼みたいんだけど」
ギルさんがエルマーさんにそう声を掛けると、エルマーさんは顔をあげて勢いよく首を縦に振った。
「なんなりと!なんなりと仰ってください!!」
「この村、俺たちにくれない?」
「「え?!?!」」
私とエルマーさんの驚きの声が被った。
何を言ってるの‥?ギルさん‥!
「俺、この国を一新したいわけよ。
汚い部分を浄化してさ。で、その為には拠点が必要かなーと。
このプテラスに住む人たちの生活と幸せを保証するからさ」
「こ、ここをあなた方の領土にするということですね」
「そうそう。でも支配したいわけじゃないから。
一緒に戦ってくれとも言わないし」
「戦いますとも!!!」
「「え?」」
今度は私とギルさんの驚きの声が被った。
どうしたんだエルマーさん。
「あなた方は、私たちにとって神同然!!!
あなた方の敵は私たちの敵です!!!」
「あ、ありがとう‥?」
「はっ!!し、しかし勝手に領土にすると言って国が黙っているでしょうか‥」
「いいんだよ非公認で。あと、ドーンと認めさせてやるから」
「なるほど!では、ここにプテラス領の領主ギル様がご誕生ということですね!!」
「いや、俺じゃない。【ギライナ様】だ」
「「え?!」」
こうして私たちの拠点の地が定まり、“ギライナ”が非公認ながらにプテラス領の領主となった。
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