訳アリ兄妹 

いしぽよ

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第1章 妹との出会い

第6話 顔合わせ

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ピンポーン。
三条邸のインターホンを恐る恐る鳴らす克海。
??「はーい。お!君が克海君か!どうぞどうぞ!」
こっちからは向こうの顔は見えないが、向こうはこちらが見えているようだ。
「ガシャンッ!」
門のロックが外れたようだ。
二人は門を開け中に入っていく。
中は、まさに豪邸のそれであった。万全のセキュリティー、上品な庭、監視カメラの数々。絵に描いたような豪邸だ。始めて見る景色に緊張の色が隠せない克海。対して、克海母は慣れた手つきでどんどん扉を開けて進んでいく。
克海「母さん、本当に最近出会ったのか?なんだかもうかなり前からここに通っていたような雰囲気だけど、、、やっぱり、母さんも、、、」
克海母「克海?どうかした?」
克海「え?い、いや、なんでもない。」
克海母「そう。もうすぐ房々さんのお部屋よ。」
克海「それにしても母さん、この家かなり複雑な構造になってるけどよくそんな手際よく目的地まで進んでいけるね。」
克海母「まぁね。もう何回もお邪魔してるから。初めは迷路みたいで迷ったけど、何度か来てるうちに覚えたの。」
克海「そうなんだ。」
克海母「あ!着いたわよ!ここが房々さんのお部屋よ。じゃ、入るわね!」
克海「う、うん、、ゴクリ。」
克海母「コンコン、房々さんあたしよ!克海を連れてきたわよ!」
???「どうぞー!」
「ガラッ!」
扉を開けるとそこにはスラッとしたいかにもできそうな男性が立っていた。まさに、エリート商社マンといった風貌の男性だ。
房々「君が克海君だね?初めまして!三条房々と申します。これからは君の父親になります。よろしくね。」
克海「は、初めまして!佐藤克海と申します。よ、宜しくお願い致します。」
克海母「ふふ、そんなに硬くならなくていいのよ!そういえば房々さん、雪ちゃんは?」
房々「ああ、恐らく離れのお庭にいるよ。呼んでこようか?」
克海母「いえいえ、こちらからご挨拶にいきます。」
房々「じゃあ、一緒に行きましょうか!実は雪乃にはお二人が今日来ること言ってないんですよ!特に克海君を見たらびっくりするんじゃないかな!」
克海母「そうなんですね!じゃあ行きましょう!」
離れのお庭へ移動する三人。
克海「そういえば、なんでわざわざ離れのお庭にいるんですか?来るとき見ましたけど、お庭なら、わざわざ離れまで行かなくてもすぐそこに立派なお庭があるのに。」
克海母「雪ちゃん、きっと唯ちゃんと遊んでるんですよね!」
克海「唯ちゃん?」
房々「そう!その通り!今日も朝から、唯ちゃんのリードがない!ってドタバタ騒がしくってもう敵わんよ。
リードを見つけ次第、唯ちゃん抱えて飛び出していったから多分あそこにいるはず!でも!今後は克海君が面倒みてくれそうだから安心かな!」
克海「へ?リード?ちょっと何が何だかさっぱりなんですが、、、」
房々「ふふっ、ま!会えば分るよ!克海君がどんな反応するか見て見たいし、敢えて事前情報なしで会せてみようと思う!」
克海母「なるほど笑」
克海「???」
しばらく歩くと離れに出た。そこにはこれまた立派なお屋敷が一つ立っていた。三条邸の他の建物とは違い、この屋敷だけは和風の造りになっている。
入口には”雪乃ハウス”と書かれたプレートがぶら下がっている。
中に入るとそこには立派な日本庭園が広がっており、その庭園を取り囲むかのように正方形状に部屋が配置されていた。
克海「へー!綺麗なお庭ですね!これが日本庭園というやつですか!」
房々「ああ。雪乃の好みに合わせて、あの子の為にこの離れにわざわざ新設したんだよ。お部屋もいくつか作って屋敷としてね。まあ、ここを綺麗に保つのも一苦労なんだけどね苦笑」
克海母「でしょうね笑」
しかし、そこには誰もいなかった。
克海「あれ?誰もいませんね。」
房々「いや、確かに雪乃はここへきている。ほら、お庭を見てごらん?小石で作った小川に足跡が付いてるだろう?」
克海「あ、ほんとだ。」
房々「あの足跡は雪乃の足跡だよ。きっとどこかのお部屋にいるはず。」
克海母「なんだか、嵐の前の静けさって感じですね笑」
房々「確かに笑」
???「こらー!!待つにゃああああああ!!」
克海母「あ!!この声は!!」
房々「はぁ(ため息)」
克海「にゃ、にゃあ!?」
ドタドタドタドタドタドタドタドタ!!..シーン..
バッ!!
向こう岸の部屋から急に一匹の猫が庭に飛び出してきた!
克海「ひぃぃぃぃぃぃ!!ね、猫ぉ!?」
すると、、、
ドガンッ!!
???「待てといったら待つにゃああああああ!!」
襖を突き破って四足歩行の少女が飛び出してきた。どうやらこの猫を追いかけているようだ。
こちらには全く気付いていない。
???「こらこらこらこらこらこらぁ!まーだ毛繕いが終わってにゃーいというもの!」
ガシッ!!
???「ふふっ!やっと捕まえたのである。さぁ!観念するにゃあ!」
その娘は手に持っているブラシで、ゴシゴシと猫の毛づくろいをし始める。
ネコ「にゃあああああ!!!」
悲鳴を上げるネコ。
克海(この娘、あの猫のすばしっこい動きに付いていき、これを捕まえるとは、大した運動神経だな。ていうか猫はきついなぁ。前世の嫌な記憶が、、、
それにしてもなんだ!?あの野生の獣のような動きは!?見たことがない!そしてなんだあの格好は笑笑笑!!?)
その娘は、全身を猫の着ぐるみで覆い、首には首輪を付けていた。
克海は必死に口を押さえて笑いを堪える。克海は、その娘の異様な格好を見て完全に笑いのツボに入ってしまったようだ。
克海「あ、あの猫、悲鳴上げてるけど、、、」
克海母「雪ちゃん!遊びに来たよー!」
向こう岸にいるその少女に向かって、克海母が大きな声で呼びかける。
???「ああ!カカ様!!よく来たにゃあ!」
その少女はこちらに気づいたようだ。
克海母「克海、紹介するね!あの子が三条雪乃ちゃんよ!」
克海母は向こう岸にいる少女を指さして紹介する。
克海「ま、まじかぁぁぁぁ大汗」
克海(よりによって猫飼ってるのかぁぁ汗 しかもなんかあの子猫言葉話してるし汗 こりゃあきついなぁ)
克海母「ん?なんか変な汗かいてるけど、どうかした?」
克海「い、いや、なんでもない。」
克海(それにしても、この娘。どこかで会ったことがあるような、、、何だろう?初めて会った気がしないぞ?)
克海母によると、どうやらこの騒がしい娘が三条雪乃らしい。見たところ、身長は140センチ程度で中学二年生だとしてもかなり小柄な印象だ。
この体型かつこの格好、そしてこのわしゃわしゃした雰囲気、完全に”野生児”といった印象だ。
すると、ひょこひょこと雪乃がこちらへやってきた。
雪乃「カカ様!また会えて嬉しいにゃあ!!よく来たにゃ?というか、後ろのブヨは一体何者なのか!どうなのか!」
克海「ブ、ブヨ!?」
雪乃「にゃーにじろじろ見てるにゃ、怪しいやつめ!変な疑いをかけられたくなければー、さっさと名乗ったらどうなのか!」
克海「お、俺は佐藤克海だ!」
雪乃「ふーん、あっそ!である。こんな男がカカ様の付き人だなんて認めにゃいというもの。
カカ様には、もっとかっこいー!男こそが付き人としてふさわしいと見た!
従ってー、おみゃあは付き人である!ほら、わかったらさっさと帰るにゃ!シッシッ!」
雪乃の強すぎる個性にあっけにとられ、言葉を失う克海。想像以上の天真爛漫っぷりが克海を圧倒する。
猫にトラウマを持つ克海と大の猫好きである雪乃。二人は無事に、分かり合えるのだろうか?
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