訳アリ兄妹 

いしぽよ

文字の大きさ
上 下
3 / 24
第1章 妹との出会い

第3話 離婚

しおりを挟む
克海「なんだかリビングがうるさいなぁ。あの二人何話してるんだろう?うるさくて勉強の邪魔だ、ちょっと言いに行くか。」
ダダダダダ、、、ガラッ!
克海「あの!うるさくて勉強の邪魔なんだけど!?」
克海母「次やったら、覚悟しなさいよ?」
克海父「は、はい、もうしません、すみませんでした、、、」
克海「?」
克海母「あら克海!どうしたの?」
克海「な、なにかあったの?」
克海母「うううん!何もないわよ?うるさかった?ごめんね?静かにしておくから。」
克海「あ、ああ、わかった。」
克海(なんだ?この不穏な空気は、、、父さんの表情がやけに暗いけど、、、)
克海は、なんだか腑に落ちなかったが、とりあえず自分の部屋に戻り、勉強を再開した。
それ以降、リビングは静かだった。
次の日の晩。
克海「あれ?父さんまだ帰ってないの?今日は遅いね。」
克海母「ええ。お父さん、今晩は帰ってこないと思うわ、、、」
克海「そうなの?出張とか?」
克海母「え?あ、ええ、まぁそんなところよ。克海は気にしないでお勉強頑張ってね。」
克海「う、うん。」
克海(なんだろ、母さん何か知ってるみたいだったな。)
克海がリビングを去ると
克海母「うっ、うっ、ううう、、、酷い、もう許せない、、、ほんと最低!もう我慢ならない!」
克海「!!?」
ドア越しに母の泣き声と怒りの声を聞いてしまった克海はただ事ではないことを悟る。
その時、克海母の手には一枚の写真が握りしめられていた。
その写真は、克海父がまたもや若い女と二人で手を繋いでホテルへ入っていくところを写したものであった。
しかも、昨晩とはまた違う女と。
翌朝。とうとう克海父は一晩帰ってこなかった。克海母はいつも通り朝ごはんを克海に振る舞うが、その表情はどことなく曇っていた。
克海「行ってきまーす!」
克海母「行ってらっしゃい!」
いつも通りの明るい笑顔。しかしそれは、息子に事を悟らせまいと無理をしているものだと、克海はすぐに気付いた。何か、何かある。絶対何かある。そう疑念が湧きつつもとりあえず大学へ向かう。
大学の講義が終わると家へ帰らずにバイト先へ向かった。その日は夜遅くまでバイトがあった。
時刻は夜10時。克海はへとへとの体を引きずって帰宅するが、そこは既に地獄絵図となっていた。
克海がドアを引くと鍵が掛かっていたのでドアをノックしようとしたその時、家の中からドス黒い声が聞こえた。
克海母「あなた!これは一体どういうことよ!!?もう二度目よ?しかもこの前とは違う女じゃない!!一体何人と不倫してんのよ!!」
生まれて此の方、初めて聞いた母の悲痛な叫び声に、克海は思わず固まり、ドアをノックできなかった。
一体この中で何が起こっているのか。知りたい気持ちと知りたくない気持ちが拮抗し、心が波立つ。
そういえば、庭の木鉢の下にスペアキーがあるのを思い出した克海はその鍵を握りしめながらドアの前で待機した。
今ドアをノックしたり、スペアキーで家に入ったら二人の話の腰を折ってしまう、そんな考え故の行動だった。
ドアに耳を傾けて見るが、先ほどのようにはっきりとは中々会話を聞き取れない。ただ、二人とも声を荒らげて何かを言い争っているのはわかる。
次の瞬間。
ドンッ!
何か鈍い音がした。克海は急に嫌な予感がしたので、スペアキーを使って急いで家に入りリビングの扉を開けると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。
なんと母が横たわり、父は母を見下ろすかのように仁王立ちしていた。
克海「、、、」
言葉を失う克海。
克海父「ああ、お前か。」
克海母「、、、」
克海「な、何があったの。父さん、一体何やってるの。」
克海父「克海、ごめんな。」
そう言い残すと、克海父は黙って家を出て行った。
克海母「う、う、ううう、、、」
克海母は、お腹を押さえながら横たわり、泣いていた。
恐らく克海父に蹴られたのだろう。克海は胸が痛んだ。
よく見ると、すぐそこに一枚の写真が落ちていた。
その写真を拾い上げた克海は絶句する。
そこには、克海父が知らない若い女と仲良く手を繋ぎながらホテルへ入っていく様がはっきりと写されていた。
克海「母さん、これ何?まさか父さん、、、」
克海母「そう、不倫よ。しかもこれが二回目。」
克海「不倫!?父さんが!?しかも二回目!?」
克海母「ええ、そうよ。」
克海からすれば信じがたいものであった。あんなに家庭を大切にし、妻や息子の幸せを誰よりも願っていた父が、一体なぜ。そしてこの写真は、一体誰が撮ったものなのか。

それっきり、克海父は家に帰ってこなかった。あの日から、母と克海の二人暮らしが始まった。
母はパートへ行き、一生懸命働いてなんとか俺の学費を捻出しようと頑張ってくれている。だがしかし、母は元来専業主婦。金銭面を完全に父に依存していた為、俺の学費が払える見込みはなかった。その為、俺もバイトを増やして頑張ったが、それでもとてもではないが学費が払える見通しは立たなかった。
私立大学に入学したことを、今になって激しく後悔する克海。しかし、今更背に腹は代えられないので、仕方なく奨学金を借りることにした。母は責任を感じてふさぎ込んでしまった。すっかり精神的に病んでしまった母は、日に日にやつれていった。俺は、はやく母を楽にさせたい一心で、受験勉強を猛烈に頑張った。今年必ず、一発で海上保安大学校に受かって学校に通いながら給与を母に仕送りすることで、ちょっとでも家計の足しにしてやりたかった。
しかし、気持ちだけではどうにもならず、俺の受験勉強は難航していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

愛なんてどこにもないと知っている

紫楼
恋愛
 私は親の選んだ相手と政略結婚をさせられた。  相手には長年の恋人がいて婚約時から全てを諦め、貴族の娘として割り切った。  白い結婚でも社交界でどんなに噂されてもどうでも良い。  結局は追い出されて、家に帰された。  両親には叱られ、兄にはため息を吐かれる。  一年もしないうちに再婚を命じられた。  彼は兄の親友で、兄が私の初恋だと勘違いした人。  私は何も期待できないことを知っている。  彼は私を愛さない。 主人公以外が愛や恋に迷走して暴走しているので、主人公は最後の方しか、トキメキがないです。  作者の脳内の世界観なので現実世界の法律や常識とは重ねないでお読むください。  誤字脱字は多いと思われますので、先にごめんなさい。 他サイトにも載せています。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

処理中です...