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星時計。
しおりを挟む「……タイムマシン? その時計が?」
「そう。すごいだろう?」
夜空のような濃紺の文字盤と、そこに散りばめられた星屑。中央から伸びる、金属性の星の針。綺麗なだけで、一見何の変哲もない、ただの腕時計。
そんな時計をいきなり『タイムマシン』だと紹介されて、疑うどころか興味津々に覗き込んでくる彼女は、相変わらず純粋だった。
「すごい!」
「ふふ。ただし、使用には条件があるんだ」
「条件……? 魔法使い限定、とか?」
「あいにく僕は魔法使いではないけれど……例えば、腕時計を身に付けている人だけが時間移動出来るとか、滞在時間はきっかり一時間だけとか、使用は対応している星座にのみ可能だとか……いろいろ」
「対応している星座?」
「ああ、十二星座それぞれの時計があってね。これは山羊座用」
「山羊座って、私の星座。あなたも山羊座なの?」
「いや、僕は蠍座」
「あれ!? 対応しているって、その星座生まれってことじゃないの?」
素直に僕の言葉に聞き入る年下の彼女の様子が楽しくて、つい話し込んでしまう。
けれどいけない、そろそろタイムリミットだ。
「そう……時計が導いてくれるのは、対象者の星のもとだ。だから、僕はこの時計をして、山羊座のきみに会いに来たんだよ」
「どういう意味……? あなたは、時計を使って私に会いに来たの?」
「うん。でもきみはね、僕が帰った後すぐに、運命の人に出会うんだ」
「え!?」
「その人はきみと同い年で、きみが死ぬまで……いや、きみが死んでからも、ずっと愛し続けるような、愚かな男なんだよ」
「……何それ、素敵」
その表情を目に焼き付けて、僕は元の時代に戻った。
この先きみが星になって、何十光年離れても、何百光年はぐれても。こうして何度でもこの時計で、僕はいつかのきみに会いに行く。
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