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ふたつのくらげ。
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わたしは、雨の日が好きだ。
もちろん低気圧に伴う頭痛やら気だるさは苦手だし、湿気で髪の毛がうねるのもよろしくない。
だから正確に言うと、わたしは『雨の日に窓から見下ろす景色』が好きなのだ。
わたしの部屋は、道路に面した三階にある。あんまり高いと怖くても、少し高い場所から見下ろす地上というのは、誰しもわくわくするところだろう。
雨の日のキラキラ光る地面も、窓についた水滴も、ガラスを叩く雨音も、わくわくを彩るアクセント。
そして何よりもわたしを楽しませるのが、雨の日に人々が差す、色とりどりの傘だった。
赤、青、緑、黄色、ピンク。星柄に花柄に水玉模様。
十人十色のカラフルな傘は、上からだと丸いお花やお祭りのヨーヨーのようで、見ているだけでテンションが上がる。
スーツ姿の男の人が持った何の変哲もないビニール傘でさえ、透明に覆われた部分が中の人をぼんやりと映すのが楽しいし、水まんじゅうにでも食べられているように見えてなんだか面白い。
当然差している人が居るのだから、傘の下から伸びる足にも注目だ。
傘と合わせたコーディネートのスカートや靴を履いているのを見ると、人知れず満点をあげたくなった。
「あ、あれ可愛い!」
そんな雨の日ウォッチングを楽しんでいる最中、不意に気になる傘を見付けて、わたしは冷たい窓ガラスにぴっとりと額をくっつける。
それは、くらげだった。綺麗な半透明の水色で、傘全体の丸みを利用して、くらげそのものを模している。
そんなくらげの傘は、水滴の付着したガラス越しに見ると、まるで水槽の中を漂う本物のよう。
「……って、あれ?」
うっとりと見惚れていたけれど、ふと、その傘の動きがやけに本物じみているような気がして、わたしは違和感の正体を探るようにじっと目で追う。
ゆらゆら、ふわふわと雨の中を揺れるように進むくらげの傘。
そして気付いた。半透明の傘なのに、他のビニール傘のように中の人の髪色や服の色が気にならない。
そして何より、差している人の足かと思っていた白いスカートのようなひらみは、くらげの足のように長く伸びて揺れている。
「もしかして、本物のくらげ……? いやいや、まさか、そんな」
やがて見えない程遠くに行ってしまったくらげの傘がやけに気になって、わたしはその日一日、ずっと窓に張り付いていた。
*******
「まったく、雨の日は体調を崩しやすいんだから、ちゃんと安静にしてないとだめじゃない」
「うう……だって、雨の窓から見る景色が綺麗なんだもん。それに、くらげが……」
「……くらげ?」
「んん、なんでもない……」
「はあ……晴れた日の青空より雨の日がいいなんて、美雨ちゃんくらいよ。他の患者さんはみんな、気が滅入るって自分からお布団に入るもの」
溜め息混じりの看護師さんの言葉に、わたしは肩を竦める。ひんやりした窓辺にずっと居たわたしは、すっかり熱を出してしまっていた。
入院患者として自由の少ない身だからこそ、窓の外に焦がれる気持ちはわかって欲しい。
けれどまあ、それで体調を悪化させていては世話ないのだが。
「点滴が終わる頃にまた見に来るけど……今日は窓辺に近寄っちゃだめよ」
「はぁい……」
こうして釘を刺されたわたしは、大人しく布団に沈む。毎年楽しみな梅雨の時期、窓禁止令を出されてしまったのは自業自得ながら、熱に火照った身体はひんやりを欲して、ついつい窓辺へと視線を向ける。
「……あ!?」
寝転んだまま見上げた窓ガラスの向こうに、昨日のくらげの傘が見えた。
地面を歩く人が差す傘ではない。三階よりも上の高さ、宙にふわふわ浮いているのだ。
熱による幻覚かも知れない。それでもわたしは飛び起きて、看護師さんの言い付けを秒で破り、数歩の距離の窓辺に駆け寄る。
病院から少し離れてしまったくらげの傘。よくよく見ると、ふわりと浮かんだくらげの下、確かに傘を差すような仕草で、白く長いスカートを靡かせている少女が居た。
昨日本物のようだと感じたくらげの中に人が居たことは、落胆にはならない。だって彼女は傘ごと、まるで水中のような自由さで、空を飛んでいるのだ。
「傘で、飛んでる……すごい!」
現実離れした光景に目を輝かせ、思わず窓にびたりと張り付いて見上げていると、少女はわたしに気付いたようで、ふわりふわりと優雅な動きでわたしの居る窓まで近付いてきた。
「……あなた、私が見えるの?」
「わっ……!? えっと、うん、見える……けど、あなたもしかして、くらげの天使?」
声をかけられた驚きに、興奮してより熱が上がるのを感じる。
ガラスに付いた雨粒とちょうどかかる傘のせいで、少女の顔半分は滲んでよく見えない。
けれど彼女はわたしの言葉に口許を少し緩め微笑んで、小さく頷いた。
「……くらげの天使って何……まあ、似たようなものね」
「わあ……天使! 初めて見た! あれ、でも天使なら羽根は? 白くてぶわってイメージだったんだけど……」
「雨の日は羽根が濡れるから、傘を使って飛ぶのよ」
「へえ……すごい。でも、なんで傘はくらげなの?」
「え。可愛いから」
天使の装備品は個人の好みでいいらしい。当然のようにさらりと告げる様子がなんだか面白くて、わたしは改めて本物に似た透明感と艶のあるくらげを見上げる。
「……うん、すっごく可愛い! 今まで見た傘で一番! ……ねえ、わたし、美雨。あなたは?」
熱に浮かされた雨の昼下がり、ガラス越しのほんの数分の会話。
これがわたしと不思議な少女、レインの出会いだった。
*******
それからわたしは、レインと誰もいないタイミングを見計らって窓際の会瀬を重ねた。今までは看護師さんくらいしか話し相手がいなくてそこそこ寂しかったけれど、こういう時は個室万歳だ。
彼女の姿は他の人には見えないようなので、誰かに見られようものなら、窓に向かって独り言を話すやばい奴に思われてしまう。
「あ、レイン!」
「……あなた、いつも窓の外を見てるの?」
今日も今日とて窓に張り付いていると、相変わらず水中のくらげのようにふわふわ揺蕩う彼女を見付け、盛大に手招きする。
呆れたようにしながらも近付いてきてくれるレインは、天使なだけありとても優しい。
「雨の日の外って、好きなんだぁ……まあ、出られないんだけどね!」
「ふうん……変わってるわね。私は、雨の日は嫌いよ。仕事があるもの」
レインはその名の通り、雨の日がお仕事の担当らしい。天気ごとに担当が変わるなんて、天使はやっぱり空と繋がりがあるようだ。
雨が降るとレインに会えるのだと知ってからは、前よりもさらに雨の日が楽しみになった。毎日雨乞いをするレベルだ。
病院という立地もあるからか、彼女はこの辺りに度々仕事に訪れるのだと言う。
「ねえねえ、レインはどんなお仕事をしてるの?」
「……死んだ人の魂を、迎える仕事」
「へえ……なら、わたしの魂も、レインがお迎えしてくれるのかな? えへへ、そしたらわたしも空飛べたりする!?」
「……あなたの魂、うるさそうだからちょっと……遠慮したい……」
「えっ!?」
ちょうど梅雨の時期、雨乞いの甲斐もあってか、わたしはレインと毎日のように会瀬を重ねた。
雨足は強くなるばかりなのに、初めて会った時には滲んだようにあまり見えなかった彼女の顔が、日に日にはっきりしてくるのが不思議で嬉しかった。
レインは白い肌に艶のある髪をした、とても美しい少女だった。もう少しで、彼女のことをちゃんと見ることが出来る。
雨の日の楽しみだったはずの傘越しの人々ではなく、遮るもののない彼女と顔を合わせられるのが、今は何より楽しみだった。
そして、そんなある日。あんまり毎日冷えた窓際に居るものだから、前回よりも更に体調を崩してしまい、看護師さんから完全に窓辺禁止令を出されてしまった。
「美雨ちゃん! もう本当におとなしくしててね、絶対よ!?」
「はぁい……」
高熱に風邪症状に持病の悪化のフルコンボ。窓際へ行こうにもベッドから起き上がることもままならないわたしは、間延びした返事をするしか出来ない。
さすがにしんどい状態にその日は大人しく寝ていると、不意に窓に打ち付ける雨音に混ざり、小さなノックのような音が聞こえた。
「んん……? あ、レイン? 寝ちゃってた……ごめん、ちょっと窓まで、歩けなくて……」
「……そう。具合、悪そうね」
「あはは……もう目は回るし頭もぐわんぐわんするしで……つらぁ」
窓がやけに遠く感じる。ぐるぐる回る視界に、せっかく見え始めていた彼女の顔は、あまりよく見えない。そのことが少し寂しくて、ぽつりと弱音が溢れた。
「……ねえ、わたし、雨の日に死にたい」
「……!」
「そうしたら、可愛い傘を差すんだぁ……レインと傘で、一緒に空を飛ぶの」
「……無理よ」
「え……?」
「……雨は、明日からしばらく降らないわ。だから、まだ死なないよう頑張りなさい」
「そっかぁ……なら、まだ頑張らないとね」
窓際で揺れる、レインの傘。水色のくらげは、相変わらず本物みたいに自由に揺れて、雨の中でも青空を飲み込んだみたいな綺麗な色をしている。
傘から伸びる白いスカートが翻り、彼女が居なくなったのを見送ってから、わたしは一息吐く。
頑張らなくては。しばらく降らないという雨音を子守唄に、わたしは再び眠りに落ちた。
そして翌朝目覚めると、ぐっすり寝たお陰か少し体調がよくなっていた。
けれど窓越しの空は彼女が言った通り確かに晴天で、久しぶりの晴れ間に、何だか少し残念な気がした。
だって晴れの日は、彼女に会えないのだ。
*******
雨が降るのを待ち焦がれながら過ごした数日後、ようやく熱も下がり少し体調が落ち着いたからと、お母さんがお見舞いに来た。
お母さんは仕事に家事に幼い兄弟の面倒にと忙しい。わたしのところに来るのは、本当に久しぶりだった。
「お母さん久しぶり……あれ?」
お母さんの手には、濡れた傘。窓から見える空は晴れているにも関わらず、何ともミスマッチな手荷物だ。わたしは思わず首を傾げる。
「なんで傘濡れてるの?」
「……? 大雨だからに決まってるでしょう? ああもう、裾も濡れちゃった」
「え……?」
窓へと視線を向けるけれど、やっぱり水色の綺麗な空が広がっている。一瞬お母さんにからかわれたのかと思ったけれど、わざわざ濡れてまでそんなことをするメリットがない。
そういえば、ここ数日の高熱のせいでお風呂に入れなかったから気付けなかったけれど、髪がいやにうねる気がするし、具合が悪い中に常にあった頭痛は、ずんと重く低気圧によるものと似ていた気もする。
雨が降っていると信じよくよく耳を澄ませると、ほんの少し遠い雨音が、確かに耳に届いた。
「なんで……」
「なんでも何も、昨日も一昨日も、ここ最近毎日雨じゃない。早く梅雨明けするといいんだけど」
「……」
あの日、レインは「雨の日に死にたい」と言ったわたしに、「しばらく降らないから頑張れ」と言っていた。
レインがわたしを少しでも生かそうとして、嘘をついていたのだと悟る。
きっとあの時、くらくらと回るわたしの目に、青空しか映らない魔法をかけたのだ。
「ねえ、お母さん……」
「ん? なあに?」
「……わたしね、友達が出来たんだ。とってもとっても、優しい子!」
雨でも晴れでも、なんでも構わない。今はただ、彼女に会いたかった。
*******
青空の魔法が消えたのは、その翌日のことだった。久しぶりに見る灰色の空と、小さな世界を閉じ込めた雨粒。雨の打ち付ける小気味いい音が響く窓にぴったりとくっついて、彼女の訪れを待つ。
そして、遠くの方にふわりと揺れるくらげを見て、わたしは大きく手を振った。
「レイン! 会いたかった!」
「……」
ガラスの向こう、ようやくはっきりと見えた彼女の瞳は、とても美しかった。
キラキラと反射する水滴と澄み渡る青空、この時期に咲く紫陽花の彩り、やがて空に架かる虹の輝き、そのすべてを閉じ込めた宝石のようだ。
「レインの顔、初めてはっきり見えた気がする……すっごく綺麗」
「そう……私の顔が、見えるの……。やっぱりもう、寿命なのね」
「え……」
体調は、ここ数日よりずっと良い。熱だって下がってきた。そんな中告げられた『寿命』なんて言葉に、思わず瞬きしてしまう。
「私……元々あなたに見付かる何ヵ月も前からこの近辺に居たのよ」
「えっ、そうなの!?」
「最初、私のことは見えていなかったでしょう……でも次に傘が見えて、段々と私の姿を認識していった」
「うん……」
「それが、死へのカウントダウン。私がはっきり見えるなんて、もう気力だけじゃ限界なんだわ」
「気力……雨が降らないから、頑張らないとってやつ?」
「ええ。本当は、あの日が元々の寿命だったの。……でも、あなたはこの数日生きられたわ」
初めてまともに見る彼女の表情は、想像よりずっと幼く見えた。寿命を突きつけられたわたしなんかよりよっぽど不安げで、迷子の子供のよう。それでもどうにか足掻こうと、思考を巡らせている力強い瞳。
本当なら、あの日死ぬはずだった。それを知りながら、頑張れと励ましてくれた優しい彼女。きっと、最後にお母さんに会う時間をくれたのだ。
そんな気遣いのお陰でお母さんに会っている間にも、わたしがレインに会いたいと願っていたと知れば、彼女は笑ってくれるだろうか。
「じゃあ、今日こそわたしは死ぬんだね」
「……いいえ。大丈夫、雨はまだしばらく降らないから。だから……魂の回収は……」
「え、雨、降ってるじゃん。レインも居るし」
「……!」
「ここ数日の偽物の晴れにはびっくりしたけどさ、あれ、どうやってたの?」
「……」
もう魔法は効かないのだと暗に告げれば、彼女は困ったように眉を下げる。
わたしは、そんな彼女の優しさに嬉しくなって、ひんやりとしたガラスに掌を触れさせる。
「ねえ、連れていって。わたし、死ぬなら雨の日がいいの」
「……嫌」
「えー、レインのお仕事なんでしょ? だったらさくっと……」
「嫌よ……。だから、私、雨の日なんて嫌い……」
傘を差しているのに頬を濡らす彼女に、直接触れることが出来ないのがもどかしい。
わたしは、看護師さんから勝手に開けてはいけないと注意されていた窓を、大きく開け放つ。
病室に雨が入り込むけれど、気にしない。
「わたしは好きだよ、雨の日。毎日降って欲しい。だって、レインに会えるもん」
「もう……会えなくなるわ、意味がない……」
彼女もわたしに会うのを楽しみにしてくれていたのだと、嬉しくなる。窓辺に会いに来てくれていたのは、優しさだけではなかったのだ。
「じゃあさ、こうしない? わたしも、レインと一緒に天使になる!」
「……は?」
「そうすれば雨の日一緒にお仕事出来るし、わたしもレインも悲しくないし寂しくない。Win-Winでしょ?」
我ながらナイスアイディアだ。天使になる仕組みとか、そんな小難しいものはどうだっていい。
ずっと寂しかった静かな病室で、雨音は素敵な音楽を聴かせてくれた。
ずっと変わらない病室の中で、雨の窓辺は様々な彩りを見せてくれた。
わたしの好きな雨の中、あたたかな時間をくれた彼女を、ひとりぼっちで泣かせたくなかったのだ。
「ねえ、レイン……」
「…………ずっと黙ってたけど、私、天使じゃなくて死神なの」
「えっ。こんな可愛い死神居るんだね!?」
「……怖くないの?」
「全然! 寧ろ死神の株爆上がりだよ!」
「もう……本当に、変な子」
初めてガラス越しではなく直接近くで見た彼女は、くらげのように少し透き通っていて、幻のよう。
けれど伸ばし触れた掌は、心地好いぬくもりを帯びていた。
*******
「雨の中、こうして傘を差して歩くの、ずっと憧れてたんだぁ」
「そう……まあ、どちらかというと今のあなたは『傘』そのものなんだけど」
「あはは。身体が軽くていい感じだよ!」
雨の日担当の死神にとって、傘は魂の受け皿にして保管場所。回収した魂の分だけ傘は成長し、やがてその下に人に似た身を作るらしい。
つまり、魂ありきの傘が本体なのだ。
だからレインの場合も最初に、一番力のあるくらげの姿が見えたのだろう。
「でも、わたしも無事に死神になれてよかった! レインがお願いしてくれたお陰だよ」
「勧誘も仕事。それに、早い段階から死神の姿を見るなんて、素質があるわ。……まあ、人の命を奪う仕事なんて、あなたには向いてないかもしれないけれど」
「素質があるなら最初から言ってよー……なんて。わたしの心配してくれたんだね。ありがとう! ……でもさ、レインのが向いてない気がする……優しいし」
「優しくなんかないわ。結局、あなたをこの仕事に巻き込んだんだもの」
「巻き込まれたなんて、思ってないよ。わたしが願ったことだもん!」
雨音の響く中、わたしはレインと色違いのくらげを広げて、念願の水溜まりを踏む。けれど、そこにわたしの姿は映らない。
感覚的には傘を差して歩いているつもりなのだけど、レインに言わせると今のわたしは持ち手すら生えていないくらげの傘未満。寧ろ本物の半透明なくらげに近いようだ。
まだ自分の魂一個分の、未熟な存在だからしかたない。
「でも、わたしも同じ雨の担当になれてよかった!」
「……雨の担当は、少ないから。雨が好きなんて物好き、早々居ないもの」
「えー? わたしは好きだよ」
「……知ってる」
こうしてふたつのくらげの傘は雨の中、漂う気ままなくらげのようにふわりと浮かび、空を泳ぐ。
ガラスの外の自由な世界で、もう寂しくはない、新たな日々を始めるのだった。
もちろん低気圧に伴う頭痛やら気だるさは苦手だし、湿気で髪の毛がうねるのもよろしくない。
だから正確に言うと、わたしは『雨の日に窓から見下ろす景色』が好きなのだ。
わたしの部屋は、道路に面した三階にある。あんまり高いと怖くても、少し高い場所から見下ろす地上というのは、誰しもわくわくするところだろう。
雨の日のキラキラ光る地面も、窓についた水滴も、ガラスを叩く雨音も、わくわくを彩るアクセント。
そして何よりもわたしを楽しませるのが、雨の日に人々が差す、色とりどりの傘だった。
赤、青、緑、黄色、ピンク。星柄に花柄に水玉模様。
十人十色のカラフルな傘は、上からだと丸いお花やお祭りのヨーヨーのようで、見ているだけでテンションが上がる。
スーツ姿の男の人が持った何の変哲もないビニール傘でさえ、透明に覆われた部分が中の人をぼんやりと映すのが楽しいし、水まんじゅうにでも食べられているように見えてなんだか面白い。
当然差している人が居るのだから、傘の下から伸びる足にも注目だ。
傘と合わせたコーディネートのスカートや靴を履いているのを見ると、人知れず満点をあげたくなった。
「あ、あれ可愛い!」
そんな雨の日ウォッチングを楽しんでいる最中、不意に気になる傘を見付けて、わたしは冷たい窓ガラスにぴっとりと額をくっつける。
それは、くらげだった。綺麗な半透明の水色で、傘全体の丸みを利用して、くらげそのものを模している。
そんなくらげの傘は、水滴の付着したガラス越しに見ると、まるで水槽の中を漂う本物のよう。
「……って、あれ?」
うっとりと見惚れていたけれど、ふと、その傘の動きがやけに本物じみているような気がして、わたしは違和感の正体を探るようにじっと目で追う。
ゆらゆら、ふわふわと雨の中を揺れるように進むくらげの傘。
そして気付いた。半透明の傘なのに、他のビニール傘のように中の人の髪色や服の色が気にならない。
そして何より、差している人の足かと思っていた白いスカートのようなひらみは、くらげの足のように長く伸びて揺れている。
「もしかして、本物のくらげ……? いやいや、まさか、そんな」
やがて見えない程遠くに行ってしまったくらげの傘がやけに気になって、わたしはその日一日、ずっと窓に張り付いていた。
*******
「まったく、雨の日は体調を崩しやすいんだから、ちゃんと安静にしてないとだめじゃない」
「うう……だって、雨の窓から見る景色が綺麗なんだもん。それに、くらげが……」
「……くらげ?」
「んん、なんでもない……」
「はあ……晴れた日の青空より雨の日がいいなんて、美雨ちゃんくらいよ。他の患者さんはみんな、気が滅入るって自分からお布団に入るもの」
溜め息混じりの看護師さんの言葉に、わたしは肩を竦める。ひんやりした窓辺にずっと居たわたしは、すっかり熱を出してしまっていた。
入院患者として自由の少ない身だからこそ、窓の外に焦がれる気持ちはわかって欲しい。
けれどまあ、それで体調を悪化させていては世話ないのだが。
「点滴が終わる頃にまた見に来るけど……今日は窓辺に近寄っちゃだめよ」
「はぁい……」
こうして釘を刺されたわたしは、大人しく布団に沈む。毎年楽しみな梅雨の時期、窓禁止令を出されてしまったのは自業自得ながら、熱に火照った身体はひんやりを欲して、ついつい窓辺へと視線を向ける。
「……あ!?」
寝転んだまま見上げた窓ガラスの向こうに、昨日のくらげの傘が見えた。
地面を歩く人が差す傘ではない。三階よりも上の高さ、宙にふわふわ浮いているのだ。
熱による幻覚かも知れない。それでもわたしは飛び起きて、看護師さんの言い付けを秒で破り、数歩の距離の窓辺に駆け寄る。
病院から少し離れてしまったくらげの傘。よくよく見ると、ふわりと浮かんだくらげの下、確かに傘を差すような仕草で、白く長いスカートを靡かせている少女が居た。
昨日本物のようだと感じたくらげの中に人が居たことは、落胆にはならない。だって彼女は傘ごと、まるで水中のような自由さで、空を飛んでいるのだ。
「傘で、飛んでる……すごい!」
現実離れした光景に目を輝かせ、思わず窓にびたりと張り付いて見上げていると、少女はわたしに気付いたようで、ふわりふわりと優雅な動きでわたしの居る窓まで近付いてきた。
「……あなた、私が見えるの?」
「わっ……!? えっと、うん、見える……けど、あなたもしかして、くらげの天使?」
声をかけられた驚きに、興奮してより熱が上がるのを感じる。
ガラスに付いた雨粒とちょうどかかる傘のせいで、少女の顔半分は滲んでよく見えない。
けれど彼女はわたしの言葉に口許を少し緩め微笑んで、小さく頷いた。
「……くらげの天使って何……まあ、似たようなものね」
「わあ……天使! 初めて見た! あれ、でも天使なら羽根は? 白くてぶわってイメージだったんだけど……」
「雨の日は羽根が濡れるから、傘を使って飛ぶのよ」
「へえ……すごい。でも、なんで傘はくらげなの?」
「え。可愛いから」
天使の装備品は個人の好みでいいらしい。当然のようにさらりと告げる様子がなんだか面白くて、わたしは改めて本物に似た透明感と艶のあるくらげを見上げる。
「……うん、すっごく可愛い! 今まで見た傘で一番! ……ねえ、わたし、美雨。あなたは?」
熱に浮かされた雨の昼下がり、ガラス越しのほんの数分の会話。
これがわたしと不思議な少女、レインの出会いだった。
*******
それからわたしは、レインと誰もいないタイミングを見計らって窓際の会瀬を重ねた。今までは看護師さんくらいしか話し相手がいなくてそこそこ寂しかったけれど、こういう時は個室万歳だ。
彼女の姿は他の人には見えないようなので、誰かに見られようものなら、窓に向かって独り言を話すやばい奴に思われてしまう。
「あ、レイン!」
「……あなた、いつも窓の外を見てるの?」
今日も今日とて窓に張り付いていると、相変わらず水中のくらげのようにふわふわ揺蕩う彼女を見付け、盛大に手招きする。
呆れたようにしながらも近付いてきてくれるレインは、天使なだけありとても優しい。
「雨の日の外って、好きなんだぁ……まあ、出られないんだけどね!」
「ふうん……変わってるわね。私は、雨の日は嫌いよ。仕事があるもの」
レインはその名の通り、雨の日がお仕事の担当らしい。天気ごとに担当が変わるなんて、天使はやっぱり空と繋がりがあるようだ。
雨が降るとレインに会えるのだと知ってからは、前よりもさらに雨の日が楽しみになった。毎日雨乞いをするレベルだ。
病院という立地もあるからか、彼女はこの辺りに度々仕事に訪れるのだと言う。
「ねえねえ、レインはどんなお仕事をしてるの?」
「……死んだ人の魂を、迎える仕事」
「へえ……なら、わたしの魂も、レインがお迎えしてくれるのかな? えへへ、そしたらわたしも空飛べたりする!?」
「……あなたの魂、うるさそうだからちょっと……遠慮したい……」
「えっ!?」
ちょうど梅雨の時期、雨乞いの甲斐もあってか、わたしはレインと毎日のように会瀬を重ねた。
雨足は強くなるばかりなのに、初めて会った時には滲んだようにあまり見えなかった彼女の顔が、日に日にはっきりしてくるのが不思議で嬉しかった。
レインは白い肌に艶のある髪をした、とても美しい少女だった。もう少しで、彼女のことをちゃんと見ることが出来る。
雨の日の楽しみだったはずの傘越しの人々ではなく、遮るもののない彼女と顔を合わせられるのが、今は何より楽しみだった。
そして、そんなある日。あんまり毎日冷えた窓際に居るものだから、前回よりも更に体調を崩してしまい、看護師さんから完全に窓辺禁止令を出されてしまった。
「美雨ちゃん! もう本当におとなしくしててね、絶対よ!?」
「はぁい……」
高熱に風邪症状に持病の悪化のフルコンボ。窓際へ行こうにもベッドから起き上がることもままならないわたしは、間延びした返事をするしか出来ない。
さすがにしんどい状態にその日は大人しく寝ていると、不意に窓に打ち付ける雨音に混ざり、小さなノックのような音が聞こえた。
「んん……? あ、レイン? 寝ちゃってた……ごめん、ちょっと窓まで、歩けなくて……」
「……そう。具合、悪そうね」
「あはは……もう目は回るし頭もぐわんぐわんするしで……つらぁ」
窓がやけに遠く感じる。ぐるぐる回る視界に、せっかく見え始めていた彼女の顔は、あまりよく見えない。そのことが少し寂しくて、ぽつりと弱音が溢れた。
「……ねえ、わたし、雨の日に死にたい」
「……!」
「そうしたら、可愛い傘を差すんだぁ……レインと傘で、一緒に空を飛ぶの」
「……無理よ」
「え……?」
「……雨は、明日からしばらく降らないわ。だから、まだ死なないよう頑張りなさい」
「そっかぁ……なら、まだ頑張らないとね」
窓際で揺れる、レインの傘。水色のくらげは、相変わらず本物みたいに自由に揺れて、雨の中でも青空を飲み込んだみたいな綺麗な色をしている。
傘から伸びる白いスカートが翻り、彼女が居なくなったのを見送ってから、わたしは一息吐く。
頑張らなくては。しばらく降らないという雨音を子守唄に、わたしは再び眠りに落ちた。
そして翌朝目覚めると、ぐっすり寝たお陰か少し体調がよくなっていた。
けれど窓越しの空は彼女が言った通り確かに晴天で、久しぶりの晴れ間に、何だか少し残念な気がした。
だって晴れの日は、彼女に会えないのだ。
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雨が降るのを待ち焦がれながら過ごした数日後、ようやく熱も下がり少し体調が落ち着いたからと、お母さんがお見舞いに来た。
お母さんは仕事に家事に幼い兄弟の面倒にと忙しい。わたしのところに来るのは、本当に久しぶりだった。
「お母さん久しぶり……あれ?」
お母さんの手には、濡れた傘。窓から見える空は晴れているにも関わらず、何ともミスマッチな手荷物だ。わたしは思わず首を傾げる。
「なんで傘濡れてるの?」
「……? 大雨だからに決まってるでしょう? ああもう、裾も濡れちゃった」
「え……?」
窓へと視線を向けるけれど、やっぱり水色の綺麗な空が広がっている。一瞬お母さんにからかわれたのかと思ったけれど、わざわざ濡れてまでそんなことをするメリットがない。
そういえば、ここ数日の高熱のせいでお風呂に入れなかったから気付けなかったけれど、髪がいやにうねる気がするし、具合が悪い中に常にあった頭痛は、ずんと重く低気圧によるものと似ていた気もする。
雨が降っていると信じよくよく耳を澄ませると、ほんの少し遠い雨音が、確かに耳に届いた。
「なんで……」
「なんでも何も、昨日も一昨日も、ここ最近毎日雨じゃない。早く梅雨明けするといいんだけど」
「……」
あの日、レインは「雨の日に死にたい」と言ったわたしに、「しばらく降らないから頑張れ」と言っていた。
レインがわたしを少しでも生かそうとして、嘘をついていたのだと悟る。
きっとあの時、くらくらと回るわたしの目に、青空しか映らない魔法をかけたのだ。
「ねえ、お母さん……」
「ん? なあに?」
「……わたしね、友達が出来たんだ。とってもとっても、優しい子!」
雨でも晴れでも、なんでも構わない。今はただ、彼女に会いたかった。
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青空の魔法が消えたのは、その翌日のことだった。久しぶりに見る灰色の空と、小さな世界を閉じ込めた雨粒。雨の打ち付ける小気味いい音が響く窓にぴったりとくっついて、彼女の訪れを待つ。
そして、遠くの方にふわりと揺れるくらげを見て、わたしは大きく手を振った。
「レイン! 会いたかった!」
「……」
ガラスの向こう、ようやくはっきりと見えた彼女の瞳は、とても美しかった。
キラキラと反射する水滴と澄み渡る青空、この時期に咲く紫陽花の彩り、やがて空に架かる虹の輝き、そのすべてを閉じ込めた宝石のようだ。
「レインの顔、初めてはっきり見えた気がする……すっごく綺麗」
「そう……私の顔が、見えるの……。やっぱりもう、寿命なのね」
「え……」
体調は、ここ数日よりずっと良い。熱だって下がってきた。そんな中告げられた『寿命』なんて言葉に、思わず瞬きしてしまう。
「私……元々あなたに見付かる何ヵ月も前からこの近辺に居たのよ」
「えっ、そうなの!?」
「最初、私のことは見えていなかったでしょう……でも次に傘が見えて、段々と私の姿を認識していった」
「うん……」
「それが、死へのカウントダウン。私がはっきり見えるなんて、もう気力だけじゃ限界なんだわ」
「気力……雨が降らないから、頑張らないとってやつ?」
「ええ。本当は、あの日が元々の寿命だったの。……でも、あなたはこの数日生きられたわ」
初めてまともに見る彼女の表情は、想像よりずっと幼く見えた。寿命を突きつけられたわたしなんかよりよっぽど不安げで、迷子の子供のよう。それでもどうにか足掻こうと、思考を巡らせている力強い瞳。
本当なら、あの日死ぬはずだった。それを知りながら、頑張れと励ましてくれた優しい彼女。きっと、最後にお母さんに会う時間をくれたのだ。
そんな気遣いのお陰でお母さんに会っている間にも、わたしがレインに会いたいと願っていたと知れば、彼女は笑ってくれるだろうか。
「じゃあ、今日こそわたしは死ぬんだね」
「……いいえ。大丈夫、雨はまだしばらく降らないから。だから……魂の回収は……」
「え、雨、降ってるじゃん。レインも居るし」
「……!」
「ここ数日の偽物の晴れにはびっくりしたけどさ、あれ、どうやってたの?」
「……」
もう魔法は効かないのだと暗に告げれば、彼女は困ったように眉を下げる。
わたしは、そんな彼女の優しさに嬉しくなって、ひんやりとしたガラスに掌を触れさせる。
「ねえ、連れていって。わたし、死ぬなら雨の日がいいの」
「……嫌」
「えー、レインのお仕事なんでしょ? だったらさくっと……」
「嫌よ……。だから、私、雨の日なんて嫌い……」
傘を差しているのに頬を濡らす彼女に、直接触れることが出来ないのがもどかしい。
わたしは、看護師さんから勝手に開けてはいけないと注意されていた窓を、大きく開け放つ。
病室に雨が入り込むけれど、気にしない。
「わたしは好きだよ、雨の日。毎日降って欲しい。だって、レインに会えるもん」
「もう……会えなくなるわ、意味がない……」
彼女もわたしに会うのを楽しみにしてくれていたのだと、嬉しくなる。窓辺に会いに来てくれていたのは、優しさだけではなかったのだ。
「じゃあさ、こうしない? わたしも、レインと一緒に天使になる!」
「……は?」
「そうすれば雨の日一緒にお仕事出来るし、わたしもレインも悲しくないし寂しくない。Win-Winでしょ?」
我ながらナイスアイディアだ。天使になる仕組みとか、そんな小難しいものはどうだっていい。
ずっと寂しかった静かな病室で、雨音は素敵な音楽を聴かせてくれた。
ずっと変わらない病室の中で、雨の窓辺は様々な彩りを見せてくれた。
わたしの好きな雨の中、あたたかな時間をくれた彼女を、ひとりぼっちで泣かせたくなかったのだ。
「ねえ、レイン……」
「…………ずっと黙ってたけど、私、天使じゃなくて死神なの」
「えっ。こんな可愛い死神居るんだね!?」
「……怖くないの?」
「全然! 寧ろ死神の株爆上がりだよ!」
「もう……本当に、変な子」
初めてガラス越しではなく直接近くで見た彼女は、くらげのように少し透き通っていて、幻のよう。
けれど伸ばし触れた掌は、心地好いぬくもりを帯びていた。
*******
「雨の中、こうして傘を差して歩くの、ずっと憧れてたんだぁ」
「そう……まあ、どちらかというと今のあなたは『傘』そのものなんだけど」
「あはは。身体が軽くていい感じだよ!」
雨の日担当の死神にとって、傘は魂の受け皿にして保管場所。回収した魂の分だけ傘は成長し、やがてその下に人に似た身を作るらしい。
つまり、魂ありきの傘が本体なのだ。
だからレインの場合も最初に、一番力のあるくらげの姿が見えたのだろう。
「でも、わたしも無事に死神になれてよかった! レインがお願いしてくれたお陰だよ」
「勧誘も仕事。それに、早い段階から死神の姿を見るなんて、素質があるわ。……まあ、人の命を奪う仕事なんて、あなたには向いてないかもしれないけれど」
「素質があるなら最初から言ってよー……なんて。わたしの心配してくれたんだね。ありがとう! ……でもさ、レインのが向いてない気がする……優しいし」
「優しくなんかないわ。結局、あなたをこの仕事に巻き込んだんだもの」
「巻き込まれたなんて、思ってないよ。わたしが願ったことだもん!」
雨音の響く中、わたしはレインと色違いのくらげを広げて、念願の水溜まりを踏む。けれど、そこにわたしの姿は映らない。
感覚的には傘を差して歩いているつもりなのだけど、レインに言わせると今のわたしは持ち手すら生えていないくらげの傘未満。寧ろ本物の半透明なくらげに近いようだ。
まだ自分の魂一個分の、未熟な存在だからしかたない。
「でも、わたしも同じ雨の担当になれてよかった!」
「……雨の担当は、少ないから。雨が好きなんて物好き、早々居ないもの」
「えー? わたしは好きだよ」
「……知ってる」
こうしてふたつのくらげの傘は雨の中、漂う気ままなくらげのようにふわりと浮かび、空を泳ぐ。
ガラスの外の自由な世界で、もう寂しくはない、新たな日々を始めるのだった。
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