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【最終章】ダイヤモンドの消失。
⑥
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夜も更けた頃、モルガナイト公爵別邸にて。着替えや食事を済ませたわたし達は、会議室に使える大広間でそれぞれ聞き込みで得た情報や、目の前で人が消えた事に対する意見を述べ合った。
「今回の異変は、人が消えるのを認知出来る人と出来ない人が居るようでした」
「中でも、認知出来た案件はクリスタル領での発生率が特に高いようね」
「クリスタル辺境伯爵も、使用人が減った気がすると話していたよ」
「お父様とリヒトが認識出来なくて、殿下達とステラとわたしが違和感に気付けた……」
「あまりにもヒントが少なすぎるわね……私達が立ち会った消失は、皇室の騎士よ、あれが誰かわかれば或いは……」
「でも俺、彼奴が誰なのか……思い出せないんだ」
話し合いの場はすっかりお通夜モードだ。無理もない、目の前で人が消えたのだ。しかも、身近なはずのその人を思い出せない。
未だに五人目のメイドを思い出せないわたしにも、殿下の気持ちは良く分かった。
「あのっ、氷か水魔法の使い手だったんですよね? 魔法が使えて、皇室騎士で、殿下の護衛に派遣される実力者で……そこから、皇室の記録を絞り込めば見つかるかも! ううん、きっと見つかります!」
「……ああ、そうだよな! ミアの言う通りだ。父上に相談して、早速確認して貰おう」
レオンハルト殿下は表情を明るくし、早速近くに控えていた騎士に伝言を頼んだようだった。けれどオリオン殿下は、腕を組みどこか暗い面持ちのままだ。
「その騎士が実在していれば、ですけどね。僕達が見ていたものが幻か何かなら見付かりませんし、そもそも気付かぬ内に成り代わっていた何かかもしれない」
「そんな……」
「資料を確認したとして、忘れてしまった者を思い出せる確証もない」
「まあまあ、それでもダメ元で調べたらいいんだよ。手詰まりなんだ、ヒントは欲しいだろ」
「それはそうですが……」
後ろ向きな意見は、オリオン殿下にしては珍しい。何かあったのかと声をかけようとすると、不意にばたばたと忙しい足音と声が扉の向こうから響いた。
リヒトは腰の剣に手を掛ける。僅かに警戒した様子のお父様が入室許可を出すと、皇室の騎士が慌てて駆け込んで来た。
殿下の足元に跪くその様子は、ただ事ではなさそうだ。
「御話し中失礼致します、皇帝陛下より緊急の伝令です!」
「お? 何だ、さっき遣いを出したばかりだぞ、もう返事が来たのか?」
「いえ、そうではなく……皇女殿下が宮殿から脱走され、現在ダイヤモンド侯爵領に居るようなのです、見付け次第保護するようにと!」
「えっ!?」
皇女様。つまりは、殿下達の姉か妹だ。
そもそもこの国に皇女が居るなんて初めて知ったし、脱走? 何故?
突然のことに思わず混乱するわたしとは対照的に、やれやれと頭を抱えた殿下達。
「またかよ……今年に入って何度目だ?」
「おやおや、あの子は相変わらずお転婆ですね」
「えっ、え……? そんなノリでいいんですか……?」
仮にも一国の皇女が脱走なんて、それこそ大事件だろうに。
特に焦った様子もない二人に戸惑いつつも、わたしは腰掛けていたソファから立ち上がった彼等の行動を見守るしか出来なかった。
不意に、レオンハルト殿下の瞳がワインをクロスに垂らすようにじわじわと赤く染まる。
何か魔法を使うのだと気付き、隣に並ぶオリオン殿下の方へと視線を向けると、彼の瞳は深い森のように緑へと染まっていた。
いつもと逆の色。まるで、双子で瞳を取り替えたようだ。
二人の身体は魔法の粒子を纏い僅かに輝き、レオンハルト殿下の風が髪を揺らす。神々しいその光景に思わず見惚れていると、気付いた殿下達に微笑まれた。
「……兄上、見付けました。これは……クリスタル領の教会ですね、ここから八時の方向、距離は十キロ程先です」
「了解!」
レオンハルト殿下は、風魔法が得意。けれど、オリオン殿下の魔法を見るのは初めてだった。
何の魔法なのだろう、一点を見つめるように双眸を細めた彼は、あっという間に皇女を見付けたようだった。
レオンハルト殿下はその指示を聞いて、見えない風を操るように手を動かしている。
しばらくして、彼の手が何かを手繰り寄せるように手前に引かれ、同時に騎士達によりバルコニーが開け放たれる。阿吽の呼吸の連携プレイだ。
そしてしばらくして、冬の冷たい風と共に、レオンハルト殿下の魔法の風が、一人の少女を連れて室内に入ってきた。
「ステラもミアも、妹に会うのは初めてだよな。紹介するぜ」
まるで竜巻のように風に連れて来られ、床に下ろされ憮然とした少女は、確かにあの日会った彼女だった。
乱れた黒にも似た灰色の髪を手で直しながら、意思の強そうな金色の瞳がじとりとわたし達を見上げる。
「……ふ、フレイア様!?」
「おや、ミア嬢は御存知でしたか」
「はい、殿下達の誕生記念式典でお会いして……まさか皇女殿下だとは思いませんでした……」
皇族ならば確かに子供だとしても単独でパーティーに参加していておかしくはない。
けれど、殿下の妹ならば、あの場で公に挨拶の一つでもするのが普通ではないだろうか。
動揺しながらも、わたしは立ち上がりスカートの汚れを払う彼女を見る。
相手は皇女殿下だ、粗相の無いようにわたしとステラは順に名乗りを上げて挨拶をして、お父様は顔見知りなようで頭を下げていた。
「そんなに堅苦しくなくて結構です。わたくしは、フレイア・アレキサンドライト……一応、この国の皇女です。まあ、ほとんど居ないものとして扱われていますから、御存知ないのも無理もないですわ」
「居ないもの……?」
「……聖女様は初めまして。それから、やはりまた会いましたわね、ミア様。驚かせてしまってごめんなさい」
「え、えっと、はい……びっくりしました。でも、実は昼間もフレイア様のことお見掛けしたので、会えたらいいなぁとは思ってたんです」
「え……? どこで、ですの?」
「えっと、ちょうど向こうの表通りで……声を掛けようかと思ったんですけど……誰かから隠れているみたいにしてたのは、家出してたからだったんですね」
「……ミア様、あなた……光か闇、どちらかの属性の魔力をお持ちですのね?」
「えっ!?」
「わたくし、あの時は光と闇にしか姿が見えないよう、魔法のベールを被っていましたもの」
「…………え」
リヒトに彼女が見えなかった理由が判明したところで、お父様を含めたこの場の全員に二択で属性バレしてしまったわたしは、冬だと言うのに冷や汗が止まらなかった。
自覚からの更生生活二年ちょっと。
闇属性の悪役令嬢ルート脱却は、簡単ではないらしい。
*******
「今回の異変は、人が消えるのを認知出来る人と出来ない人が居るようでした」
「中でも、認知出来た案件はクリスタル領での発生率が特に高いようね」
「クリスタル辺境伯爵も、使用人が減った気がすると話していたよ」
「お父様とリヒトが認識出来なくて、殿下達とステラとわたしが違和感に気付けた……」
「あまりにもヒントが少なすぎるわね……私達が立ち会った消失は、皇室の騎士よ、あれが誰かわかれば或いは……」
「でも俺、彼奴が誰なのか……思い出せないんだ」
話し合いの場はすっかりお通夜モードだ。無理もない、目の前で人が消えたのだ。しかも、身近なはずのその人を思い出せない。
未だに五人目のメイドを思い出せないわたしにも、殿下の気持ちは良く分かった。
「あのっ、氷か水魔法の使い手だったんですよね? 魔法が使えて、皇室騎士で、殿下の護衛に派遣される実力者で……そこから、皇室の記録を絞り込めば見つかるかも! ううん、きっと見つかります!」
「……ああ、そうだよな! ミアの言う通りだ。父上に相談して、早速確認して貰おう」
レオンハルト殿下は表情を明るくし、早速近くに控えていた騎士に伝言を頼んだようだった。けれどオリオン殿下は、腕を組みどこか暗い面持ちのままだ。
「その騎士が実在していれば、ですけどね。僕達が見ていたものが幻か何かなら見付かりませんし、そもそも気付かぬ内に成り代わっていた何かかもしれない」
「そんな……」
「資料を確認したとして、忘れてしまった者を思い出せる確証もない」
「まあまあ、それでもダメ元で調べたらいいんだよ。手詰まりなんだ、ヒントは欲しいだろ」
「それはそうですが……」
後ろ向きな意見は、オリオン殿下にしては珍しい。何かあったのかと声をかけようとすると、不意にばたばたと忙しい足音と声が扉の向こうから響いた。
リヒトは腰の剣に手を掛ける。僅かに警戒した様子のお父様が入室許可を出すと、皇室の騎士が慌てて駆け込んで来た。
殿下の足元に跪くその様子は、ただ事ではなさそうだ。
「御話し中失礼致します、皇帝陛下より緊急の伝令です!」
「お? 何だ、さっき遣いを出したばかりだぞ、もう返事が来たのか?」
「いえ、そうではなく……皇女殿下が宮殿から脱走され、現在ダイヤモンド侯爵領に居るようなのです、見付け次第保護するようにと!」
「えっ!?」
皇女様。つまりは、殿下達の姉か妹だ。
そもそもこの国に皇女が居るなんて初めて知ったし、脱走? 何故?
突然のことに思わず混乱するわたしとは対照的に、やれやれと頭を抱えた殿下達。
「またかよ……今年に入って何度目だ?」
「おやおや、あの子は相変わらずお転婆ですね」
「えっ、え……? そんなノリでいいんですか……?」
仮にも一国の皇女が脱走なんて、それこそ大事件だろうに。
特に焦った様子もない二人に戸惑いつつも、わたしは腰掛けていたソファから立ち上がった彼等の行動を見守るしか出来なかった。
不意に、レオンハルト殿下の瞳がワインをクロスに垂らすようにじわじわと赤く染まる。
何か魔法を使うのだと気付き、隣に並ぶオリオン殿下の方へと視線を向けると、彼の瞳は深い森のように緑へと染まっていた。
いつもと逆の色。まるで、双子で瞳を取り替えたようだ。
二人の身体は魔法の粒子を纏い僅かに輝き、レオンハルト殿下の風が髪を揺らす。神々しいその光景に思わず見惚れていると、気付いた殿下達に微笑まれた。
「……兄上、見付けました。これは……クリスタル領の教会ですね、ここから八時の方向、距離は十キロ程先です」
「了解!」
レオンハルト殿下は、風魔法が得意。けれど、オリオン殿下の魔法を見るのは初めてだった。
何の魔法なのだろう、一点を見つめるように双眸を細めた彼は、あっという間に皇女を見付けたようだった。
レオンハルト殿下はその指示を聞いて、見えない風を操るように手を動かしている。
しばらくして、彼の手が何かを手繰り寄せるように手前に引かれ、同時に騎士達によりバルコニーが開け放たれる。阿吽の呼吸の連携プレイだ。
そしてしばらくして、冬の冷たい風と共に、レオンハルト殿下の魔法の風が、一人の少女を連れて室内に入ってきた。
「ステラもミアも、妹に会うのは初めてだよな。紹介するぜ」
まるで竜巻のように風に連れて来られ、床に下ろされ憮然とした少女は、確かにあの日会った彼女だった。
乱れた黒にも似た灰色の髪を手で直しながら、意思の強そうな金色の瞳がじとりとわたし達を見上げる。
「……ふ、フレイア様!?」
「おや、ミア嬢は御存知でしたか」
「はい、殿下達の誕生記念式典でお会いして……まさか皇女殿下だとは思いませんでした……」
皇族ならば確かに子供だとしても単独でパーティーに参加していておかしくはない。
けれど、殿下の妹ならば、あの場で公に挨拶の一つでもするのが普通ではないだろうか。
動揺しながらも、わたしは立ち上がりスカートの汚れを払う彼女を見る。
相手は皇女殿下だ、粗相の無いようにわたしとステラは順に名乗りを上げて挨拶をして、お父様は顔見知りなようで頭を下げていた。
「そんなに堅苦しくなくて結構です。わたくしは、フレイア・アレキサンドライト……一応、この国の皇女です。まあ、ほとんど居ないものとして扱われていますから、御存知ないのも無理もないですわ」
「居ないもの……?」
「……聖女様は初めまして。それから、やはりまた会いましたわね、ミア様。驚かせてしまってごめんなさい」
「え、えっと、はい……びっくりしました。でも、実は昼間もフレイア様のことお見掛けしたので、会えたらいいなぁとは思ってたんです」
「え……? どこで、ですの?」
「えっと、ちょうど向こうの表通りで……声を掛けようかと思ったんですけど……誰かから隠れているみたいにしてたのは、家出してたからだったんですね」
「……ミア様、あなた……光か闇、どちらかの属性の魔力をお持ちですのね?」
「えっ!?」
「わたくし、あの時は光と闇にしか姿が見えないよう、魔法のベールを被っていましたもの」
「…………え」
リヒトに彼女が見えなかった理由が判明したところで、お父様を含めたこの場の全員に二択で属性バレしてしまったわたしは、冬だと言うのに冷や汗が止まらなかった。
自覚からの更生生活二年ちょっと。
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