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【第四章】サファイアの海の異変。
⑪
しおりを挟む見事事件を解決し翌朝早速報告に行くと、アクアマリン子爵から泣きながら感謝をされた。
どうやらこの問題を、北部全体の領主であるサファイア侯爵には伝えていなかったようで、昨日カイ様が海の異変を見てしまったせいで向こうに話が届き、どういうことなのか今日にでも釈明に向かわねばならない所だったという。
報連相は勿論大事だが、今回は解決したので結果オーライらしい。
北部にはやはり、独自のペースの人が多い気がする。
事件解決を祝してその日はステラとお父様と家族旅行気分で観光を楽しみ、屋敷の皆へのお土産も買い込んだ。
見た目通り子供のように沢山はしゃいで、帰りの馬車ではすっかり疲れて微睡んでしまった。
子供の体力は無尽蔵とは言うけれど、さすがに初めての旅行はくたくただ。
帰りの馬車では、お父様とリヒトの三人で、のんびりと過ごす。
「セレスティア……」
凭れ掛かり目を伏せて夢うつつなわたしを撫でながら、お父様が亡き母の名前を呟いていたが、聞こえないふりをした。
わたしが感じた感傷よりも、きっと深く感じるものが彼にはあるのだろう。それの邪魔をするのは野暮だった。
起きているはずのリヒトも、その声には応えない。彼もまた、何かを思っているのだろうか。
わたしはぼんやりと考える。
そもそもこの地で突如起こったこの不可解な『異変』のきっかけは何だったのだろう。
しかし幾ら考えても答えは出るはずもなく、わたし達は束の間の平和な一時を満喫したのであった。
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