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【第三章】皇子達の誕生記念式典。
⑪
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約束だからなと笑顔で手を振るレオンハルト殿下と離れ、 今度は走らないようそっと人混みを縫い出口まで向かう。
もうこれ以上のフラグやイベントは勘弁願いたい。叶うなら、会場から抜け出してアメリアの元に避難するかリヒトの傍にくっついていたい。
やがて次の曲が始まると、誰もわたしには目を向けない。壁際で休憩中の貴族達や、踊っている人々でさえ、一ヶ所に視線を向けているのに気付く。
「……?」
何かと思い少し高い段差へとお行儀悪く上ると、ダンスホールの中心部、ステラとお父様が踊っているのが見えた。
ゆったりとした音楽に身を任せるように揺蕩う二人のステップに、誰もが目を奪われる。美しい絵画や芸術品のように誰もが見惚れる程、寄り添う二人の姿はとても良く似合っていた。
そんな二人を見ていて、油断した。
不意に手を掴まれて、抵抗する間もなく高い所から下ろされる。オリオン殿下だった。
「わ……っ!?」
「やっと捕まえましたよ、ミア嬢」
「あ……すみません、わたし……!」
追っ手に捕まった悪者の心境だ。わたしは観念して肩を落とす。
しかし彼はそんなわたしを見て少し寂しそうにしたものの、怒ったりせずに優しく手を繋ぎ直してくれた。
追い掛けて走ったからか、互いの手袋越しに踊っていた時よりも熱い体温を感じる。
「いえ、僕こそ未婚のレディと二人きりになりたいなんて、軽率でしたね。非礼をお詫び致します」
「そんな、お詫びだなんて……」
「ですが、それでもどうしてもお伝えしたいことがありまして……、ああ、皆さんステラ嬢とモルガナイト公爵に夢中のようですね……今なら、誰も聞いていないでしょう」
「え……」
「……ミア嬢、僕は……」
手をしっかりと握られて、今度こそ逃げられない。至近距離に赤い瞳が真っ直ぐに見詰めてくる。
心臓がばくばくと煩く、顔に熱が集まるのを自覚した。今すぐ逃げ出したい。けれど、視線を逸らせなかった。
「……っ殿下、やっぱり、わたし……!」
「僕は、あなたの猫なんです」
「……、……へ?」
ねこ。ネコ……猫? ……?
真剣な面持ちで伝えられた予想外の言葉に、思わずフリーズする。
この国の言語で猫には他の意味があっただろうかと、ペリドット先生の授業を思い出すが思考が纏まらない。
聞き間違いかと思わず縋るように視線を向けると、オリオン殿下はにっこりと綺麗な笑みを浮かべた。
「ね、猫……?」
「はい、前世ではお世話になりました。猫です。……桜木家のお庭で見付けていただき、食べ物をいただいたご恩は、今も忘れておりません」
「……、……はい!?」
……前略、華麗なダンスで人々を魅了しているお母さん。
どうやらわたし達だけじゃなく、猫まで転生していたようです……。
もうこれ以上のフラグやイベントは勘弁願いたい。叶うなら、会場から抜け出してアメリアの元に避難するかリヒトの傍にくっついていたい。
やがて次の曲が始まると、誰もわたしには目を向けない。壁際で休憩中の貴族達や、踊っている人々でさえ、一ヶ所に視線を向けているのに気付く。
「……?」
何かと思い少し高い段差へとお行儀悪く上ると、ダンスホールの中心部、ステラとお父様が踊っているのが見えた。
ゆったりとした音楽に身を任せるように揺蕩う二人のステップに、誰もが目を奪われる。美しい絵画や芸術品のように誰もが見惚れる程、寄り添う二人の姿はとても良く似合っていた。
そんな二人を見ていて、油断した。
不意に手を掴まれて、抵抗する間もなく高い所から下ろされる。オリオン殿下だった。
「わ……っ!?」
「やっと捕まえましたよ、ミア嬢」
「あ……すみません、わたし……!」
追っ手に捕まった悪者の心境だ。わたしは観念して肩を落とす。
しかし彼はそんなわたしを見て少し寂しそうにしたものの、怒ったりせずに優しく手を繋ぎ直してくれた。
追い掛けて走ったからか、互いの手袋越しに踊っていた時よりも熱い体温を感じる。
「いえ、僕こそ未婚のレディと二人きりになりたいなんて、軽率でしたね。非礼をお詫び致します」
「そんな、お詫びだなんて……」
「ですが、それでもどうしてもお伝えしたいことがありまして……、ああ、皆さんステラ嬢とモルガナイト公爵に夢中のようですね……今なら、誰も聞いていないでしょう」
「え……」
「……ミア嬢、僕は……」
手をしっかりと握られて、今度こそ逃げられない。至近距離に赤い瞳が真っ直ぐに見詰めてくる。
心臓がばくばくと煩く、顔に熱が集まるのを自覚した。今すぐ逃げ出したい。けれど、視線を逸らせなかった。
「……っ殿下、やっぱり、わたし……!」
「僕は、あなたの猫なんです」
「……、……へ?」
ねこ。ネコ……猫? ……?
真剣な面持ちで伝えられた予想外の言葉に、思わずフリーズする。
この国の言語で猫には他の意味があっただろうかと、ペリドット先生の授業を思い出すが思考が纏まらない。
聞き間違いかと思わず縋るように視線を向けると、オリオン殿下はにっこりと綺麗な笑みを浮かべた。
「ね、猫……?」
「はい、前世ではお世話になりました。猫です。……桜木家のお庭で見付けていただき、食べ物をいただいたご恩は、今も忘れておりません」
「……、……はい!?」
……前略、華麗なダンスで人々を魅了しているお母さん。
どうやらわたし達だけじゃなく、猫まで転生していたようです……。
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