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【第三章】皇子達の誕生記念式典。

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「あ……」
「お。リオだ。あいつのダンス、上手いんだよなぁ……」
「……そうですね」

 ダンスの最中、わたしを追い掛けて来ていたオリオン殿下が他の貴族の令嬢と踊っているのが見えた。
 彼と目が合い、困ったように眉を下げ微笑まれる。きっと追跡途中で捕まったのだろう。優しい物腰の彼は、女性からアピールや期待を受ければ断らない。
 このダンスが終わったらまた追跡が再開されるのかは分からないものの、脱出経路は念のため確認しておいた。

「……あれ、ミア。イヤリング、片方落としたのか?」
「へ?」

 経路確認のため辺りを見回していると、不意に片耳に触れるレオンハルト殿下の指先。手袋越しの感触がくすぐったい。
 前言撤回。頬やら耳やら、女の子の顔周りに何の気なしに触れられるなんて、やっぱり似た者兄弟である。

「ええと、今走った時に落ちたのかも……?」
「そっか……せっかく頭のと一緒で可愛いのにな」
「かわ……!? あ、ありがとうございます。でも皆さんダンスに夢中ですし、踏まれてしまっているかも知れませんね」

 さらりと可愛いと口に出来る辺りも、やっぱり似ているかもしれない。系統は違えど、どちらも確実にモテるタイプの皇子様だ。

「じゃあ、今度新しいのプレゼントしてやるよ」
「えっ!? いえいえそんな、頂けません!」
「……? どうして」
「どうしてって……贈られる理由もありませんし」
「理由? 俺の誕生祝いに来て失くしたんだ、俺が代わりを贈っても問題ないだろう?」

 至極当然とばかりに告げられる言葉に、せっかくの好意を遠慮しすぎるのも失礼かと悩んでしまう。
 しかし皇太子殿下から装飾品の贈り物なんて、それこそとんでもない。

「いえ、あの……」
「じゃあこうしよう、ミアの誕生日には、俺を招いてくれ」
「誕生日……殿下をですか!?」
「おう! 誕生日の贈り物なら、受け取ってくれるだろ?」

 事態が更に悪化してしまった気がする。婚約者でもない女の子の誕生日祝いに出向く皇太子殿下。また変な噂になりそうだ。
 しかし、これ以上断り続けても余計面倒なことになりそうな気がして、わたしは頷くより他なかった。

「……わかりました、招待状をお出ししますね」
「おう!」
「ですが! 多忙でしょうからくれぐれもご無理はなさらずに!」
「大丈夫だって。俺から行くって言ったんだ、都合つけて必ず行くから、待っててくれ」
「……はい」

 そうしてダンスが終わり、恭しくお辞儀をする。とんでもないことになってしまった。一級フラグ建設士にでもなった気分である。

 勿論これは、一般的な恋愛フラグなどではなく、悪役令嬢の死亡フラグに他ならないのだが。
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