18 / 101
【第二章】悪役令嬢の先輩と、専属護衛騎士。
①
しおりを挟む
「どうしよう……」
先日の皇太子殿下達の謁見以降、社交界ではあらぬ噂が飛び交っているらしい。
ステラとわたしがそれぞれ彼等の婚約者候補だの、ステラとどちらかの婚約をモルガナイト公爵が証人になるだの、今度のお二人の誕生日パーティーでその辺りが発表されるだの、皇太子達とモルガナイト公爵がステラを巡って対立関係だの。
そんなありとあらゆる噂が首都では蔓延し、貴族だけでなく市民にも大きく影響を与えていた。今はどこに行ってもステラを中心とした根も葉もない噂話ばかりだ。
お陰で、未だ社交界に出ていないにも関わらず、わたしも飛び火して注目されているらしい。
近隣住民はわたしの顔を知っているからおちおちお忍びで市街にも行けず、買い物はメイドに頼むか、わざわざ業者を呼びつけるしかなかった。
いつもならお使いはシャーロット辺りに適当に頼むものの、今回は皇太子達の直々のプレゼントリクエストだ、下手な品を送る訳にはいかなかった。
『皇太子達への誕生日プレゼント作り』
そんな最重要ミッションを達成するべく布や糸選びのため呼んだ業者にすら、噂の真相はと興味津々に聞かれ辟易してしまう。
「悪役令嬢として名を馳せる前に、変に目立っちゃってる……」
今度の誕生日パーティーにお呼ばれしていることも既に広まっているらしく、その日まで、この憂鬱な喧騒は続きそうだった。
そんなある日、わたしの元に一件の謁見希望が来た。世間を賑わせているステラや皇太子達ではなく、知らない名前だ。
社交界デビュー前で知り合いの居ないわたし個人を名指しして来るのは珍しい。
侍女のアメリアが持って来たその手紙は、「是非一度会ってお話ししたい」という至って普通の内容だった。
手紙の内容が読めるようになっただけ、読み書きの勉強の成果が出ているようで嬉しくなる。が、アメリアの表情は複雑そうだった。
「お嬢様、どうされますか?」
「差出人は……えーと、リーゼロッテ・ルビー……誰?」
「ルビー侯爵家のご令嬢ですね。……オリオン殿下の現在の婚約者様です」
「!?」
皇子の婚約者。ゲームやアニメなら完全に物語の主要人物だ。というか、ステラがヒロインならば、彼女は婚約破棄される悪役令嬢なのでは……?
思わぬ『悪役令嬢仲間』の到来に、少しだけそわりとしてしまう。
リーゼロッテ・ルビー。彼女と会うことで、何か悪役令嬢からの脱却ヒントが得られるかもしれない。
善は急げだ。早速了承の返事を書いて、わたしはそれをアメリアへと手渡す。
「あの、本当に宜しいのですか?」
「うん? 何か問題でもあった?」
「いえ……巷ではお嬢様がどちらかの婚約者候補になったのではという噂もありますので……ひょっとすると、ルビー侯爵令嬢はそれを聞いて……」
「……?」
「その、ルビー侯爵令嬢は、昔のお嬢様のように癇癪持ち……いえ、少々感情表現豊かな方だと聞き及んでおりますので」
……もしかすると、これはヒントパートではなく、逆恨みからの死亡フラグだったのかもしれない。
*******
先日の皇太子殿下達の謁見以降、社交界ではあらぬ噂が飛び交っているらしい。
ステラとわたしがそれぞれ彼等の婚約者候補だの、ステラとどちらかの婚約をモルガナイト公爵が証人になるだの、今度のお二人の誕生日パーティーでその辺りが発表されるだの、皇太子達とモルガナイト公爵がステラを巡って対立関係だの。
そんなありとあらゆる噂が首都では蔓延し、貴族だけでなく市民にも大きく影響を与えていた。今はどこに行ってもステラを中心とした根も葉もない噂話ばかりだ。
お陰で、未だ社交界に出ていないにも関わらず、わたしも飛び火して注目されているらしい。
近隣住民はわたしの顔を知っているからおちおちお忍びで市街にも行けず、買い物はメイドに頼むか、わざわざ業者を呼びつけるしかなかった。
いつもならお使いはシャーロット辺りに適当に頼むものの、今回は皇太子達の直々のプレゼントリクエストだ、下手な品を送る訳にはいかなかった。
『皇太子達への誕生日プレゼント作り』
そんな最重要ミッションを達成するべく布や糸選びのため呼んだ業者にすら、噂の真相はと興味津々に聞かれ辟易してしまう。
「悪役令嬢として名を馳せる前に、変に目立っちゃってる……」
今度の誕生日パーティーにお呼ばれしていることも既に広まっているらしく、その日まで、この憂鬱な喧騒は続きそうだった。
そんなある日、わたしの元に一件の謁見希望が来た。世間を賑わせているステラや皇太子達ではなく、知らない名前だ。
社交界デビュー前で知り合いの居ないわたし個人を名指しして来るのは珍しい。
侍女のアメリアが持って来たその手紙は、「是非一度会ってお話ししたい」という至って普通の内容だった。
手紙の内容が読めるようになっただけ、読み書きの勉強の成果が出ているようで嬉しくなる。が、アメリアの表情は複雑そうだった。
「お嬢様、どうされますか?」
「差出人は……えーと、リーゼロッテ・ルビー……誰?」
「ルビー侯爵家のご令嬢ですね。……オリオン殿下の現在の婚約者様です」
「!?」
皇子の婚約者。ゲームやアニメなら完全に物語の主要人物だ。というか、ステラがヒロインならば、彼女は婚約破棄される悪役令嬢なのでは……?
思わぬ『悪役令嬢仲間』の到来に、少しだけそわりとしてしまう。
リーゼロッテ・ルビー。彼女と会うことで、何か悪役令嬢からの脱却ヒントが得られるかもしれない。
善は急げだ。早速了承の返事を書いて、わたしはそれをアメリアへと手渡す。
「あの、本当に宜しいのですか?」
「うん? 何か問題でもあった?」
「いえ……巷ではお嬢様がどちらかの婚約者候補になったのではという噂もありますので……ひょっとすると、ルビー侯爵令嬢はそれを聞いて……」
「……?」
「その、ルビー侯爵令嬢は、昔のお嬢様のように癇癪持ち……いえ、少々感情表現豊かな方だと聞き及んでおりますので」
……もしかすると、これはヒントパートではなく、逆恨みからの死亡フラグだったのかもしれない。
*******
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
魔王様は聖女の異世界アロママッサージがお気に入り★
唯緒シズサ
ファンタジー
「年をとったほうは殺せ」
女子高生と共に異世界に召喚された宇田麗良は「瘴気に侵される大地を癒す聖女についてきた邪魔な人間」として召喚主から殺されそうになる。
逃げる途中で瀕死の重傷を負ったレイラを助けたのは無表情で冷酷無慈悲な魔王だった。
レイラは魔王から自分の方に聖女の力がそなわっていることを教えられる。
聖女の力を魔王に貸し、瘴気の穴を浄化することを条件に元の世界に戻してもらう約束を交わす。
魔王ははっきりと言わないが、瘴気の穴をあけてまわっているのは魔女で、魔王と何か関係があるようだった。
ある日、瘴気と激務で疲れのたまっている魔王を「聖女の癒しの力」と「アロママッサージ」で癒す。
魔王はレイラの「アロママッサージ」の気持ちよさを非常に気に入り、毎夜、催促するように。
魔王の部下には毎夜、ベッドで「聖女が魔王を気持ちよくさせている」という噂も広がっているようで……魔王のお気に入りになっていくレイラは、元の世界に帰れるのか?
アロママッサージが得意な異世界から来た聖女と、マッサージで気持ちよくなっていく魔王の「健全な」恋愛物語です。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
この称号、削除しますよ!?いいですね!!
布浦 りぃん
ファンタジー
元財閥の一人娘だった神無月 英(あずさ)。今は、親戚からも疎まれ孤独な企業研究員・27歳だ。
ある日、帰宅途中に聖女召喚に巻き込まれて異世界へ。人間不信と警戒心から、さっさとその場から逃走。実は、彼女も聖女だった!なんてことはなく、称号の部分に記されていたのは、この世界では異端の『森羅万象の魔女(チート)』―――なんて、よくある異世界巻き込まれ奇譚。
注意:悪役令嬢もダンジョンも冒険者ギルド登録も出てきません!その上、60話くらいまで戦闘シーンはほとんどありません!
*不定期更新。話数が進むたびに、文字数激増中。
*R15指定は、戦闘・暴力シーン有ゆえの保険に。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる