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【第一章】母が聖女で、悪役令嬢はわたし。
⑥
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翌日から、わたしの戦争準備は始まった。策略が得意な性質を存分に活かして作戦を練ることにする。
まずはパーティーの要である厨房だ。
料理長から然り気無く当日のメニューを確認し、それに被らない形で簡単なお菓子作りを計画。
お菓子が嫌いな女の子はあまり居ないし、手作りで友好的アピール作戦だ。普段厨房になんて立ち入らないであろうお嬢様が作るのだから、レア度だって高いはず。
ただ、ミアとして生まれ変わってからは一度も料理なんてしたことなかったし、邪魔にならないようキッチンの片隅を借りて作っているのに、料理人達が業務そっちのけではらはらした様子で見てくる。
そして、クッキーくらいいけるかと思いきや、出来上がったのは見事な消し炭だった。なぜ。
これ以上は迷惑を掛けることになるので、断念。
次いで、一番目につくであろう屋敷の装飾。
お誕生日パーティーの定番として折り紙の輪でも連ねようかと考えたけれど、アメリアに聞くとこの世界にはそんな文化はないらしい。そもそも折り紙すら上手く伝わらなかった。
というよりも、もし作れたとしてこのどでかい屋敷にそんなお手製飾り付けは不格好である。
よって装飾はプロに任せることにした。断念。
次いで、一番直球なプレゼント。
公爵家より身分が下の伯爵家とはいえ、貴族の、それも聖女と噂される少女だ、大抵の品は持っているだろう。
それなら手作りの物をと考えてみたものの、六歳の小さな手で大掛かりな物を作るのは難しい。
布類ならどうかと思ったが、この世界のミシンは魔法で動かすのが主流らしく、今のわたしには使えず断念。
代わりに手縫いならどうかと考えて、メイドの一人、シャーロットに頼んで、練習用に適当な布と針と糸を用意して貰った。
シャーロットから買ってきて貰ったものを受け取るなり、教わってもいないのに針に糸を通して玉結びなんかも普通に出来たものだから、近くで見ていたメイド達もアメリアも驚いていた。
前世の知識があれば出来ることを褒められても何だかこそばゆくて、褒め称えようとする皆を追い出し部屋に一人にして貰う。
一人でちくちくと縫っていると、不意に前世のことを思い出した。
小学生の頃、家庭科の授業で初めて縫い物を習って、覚えたてのそれが嬉しくて。
こっそり家のタンスの引き出しからお母さんの古いハンカチを出して、当時飼っていた猫を模して刺繍したのだ。
そのハンカチはお母さんの大切なものだったと後から知ったけれど、その時お母さんは怒ったりせず、初めての不格好な刺繍を喜んで頭を撫でてくれた。
とても優しい、温かな記憶。そのハンカチはわたしが大人になってからも、大切に引き出しにしまってあるのを見たことがあった。
「よし、ハンカチにしよう」
今世でも、初めての手作りプレゼントはハンカチに刺繍を施すことにした。
お父様とステラの分。今度はハンカチ向きの上質な布を用意して貰って、糸はこっそり、アメリアをお供に街に選びに行った。
お父様の分は、見る度わたしを思い出せるように髪色に似たピンクを。まだ会ったことのないステラの分は、ヘリオドールの名から金を選んだ。
この時ばかりは自分が悪役令嬢になるかもだとかそんな不安は忘れて、寝る間も惜しんで一針一針丁寧に仕上げていった。
*******
まずはパーティーの要である厨房だ。
料理長から然り気無く当日のメニューを確認し、それに被らない形で簡単なお菓子作りを計画。
お菓子が嫌いな女の子はあまり居ないし、手作りで友好的アピール作戦だ。普段厨房になんて立ち入らないであろうお嬢様が作るのだから、レア度だって高いはず。
ただ、ミアとして生まれ変わってからは一度も料理なんてしたことなかったし、邪魔にならないようキッチンの片隅を借りて作っているのに、料理人達が業務そっちのけではらはらした様子で見てくる。
そして、クッキーくらいいけるかと思いきや、出来上がったのは見事な消し炭だった。なぜ。
これ以上は迷惑を掛けることになるので、断念。
次いで、一番目につくであろう屋敷の装飾。
お誕生日パーティーの定番として折り紙の輪でも連ねようかと考えたけれど、アメリアに聞くとこの世界にはそんな文化はないらしい。そもそも折り紙すら上手く伝わらなかった。
というよりも、もし作れたとしてこのどでかい屋敷にそんなお手製飾り付けは不格好である。
よって装飾はプロに任せることにした。断念。
次いで、一番直球なプレゼント。
公爵家より身分が下の伯爵家とはいえ、貴族の、それも聖女と噂される少女だ、大抵の品は持っているだろう。
それなら手作りの物をと考えてみたものの、六歳の小さな手で大掛かりな物を作るのは難しい。
布類ならどうかと思ったが、この世界のミシンは魔法で動かすのが主流らしく、今のわたしには使えず断念。
代わりに手縫いならどうかと考えて、メイドの一人、シャーロットに頼んで、練習用に適当な布と針と糸を用意して貰った。
シャーロットから買ってきて貰ったものを受け取るなり、教わってもいないのに針に糸を通して玉結びなんかも普通に出来たものだから、近くで見ていたメイド達もアメリアも驚いていた。
前世の知識があれば出来ることを褒められても何だかこそばゆくて、褒め称えようとする皆を追い出し部屋に一人にして貰う。
一人でちくちくと縫っていると、不意に前世のことを思い出した。
小学生の頃、家庭科の授業で初めて縫い物を習って、覚えたてのそれが嬉しくて。
こっそり家のタンスの引き出しからお母さんの古いハンカチを出して、当時飼っていた猫を模して刺繍したのだ。
そのハンカチはお母さんの大切なものだったと後から知ったけれど、その時お母さんは怒ったりせず、初めての不格好な刺繍を喜んで頭を撫でてくれた。
とても優しい、温かな記憶。そのハンカチはわたしが大人になってからも、大切に引き出しにしまってあるのを見たことがあった。
「よし、ハンカチにしよう」
今世でも、初めての手作りプレゼントはハンカチに刺繍を施すことにした。
お父様とステラの分。今度はハンカチ向きの上質な布を用意して貰って、糸はこっそり、アメリアをお供に街に選びに行った。
お父様の分は、見る度わたしを思い出せるように髪色に似たピンクを。まだ会ったことのないステラの分は、ヘリオドールの名から金を選んだ。
この時ばかりは自分が悪役令嬢になるかもだとかそんな不安は忘れて、寝る間も惜しんで一針一針丁寧に仕上げていった。
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