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手紙 La leteroj
しおりを挟むあふれるほどの愛情をこめ、彼女は婚約者にむけて手紙を出す。
彼女とその相手は幼馴染であり、おたがいを自らの半身のようにおもって育った。彼が急な辞令により、遠方の地へ武官として赴任しても、近い将来の結婚を、ふたりとも疑わなかった。
心変わりなどありえない。彼女が手紙を送ると、彼はかならず返事をくれる。平穏な毎日のこと、募る恋ごころのこと、結婚後の生活に望むこと……。
彼女の出した手紙は、大海をこえ、山脈をこえ、ひろい砂漠をはこばれ、七年かかって彼のもとに届く。彼は涙ぐんで喜び、すぐに返事をしたためる。その手紙が彼女に届くのも、七年後だ。
強い絆により、間を空けずかわされる文通。手紙のなかでふたりの言葉は、青春の姿のまま、いずれ実現する結婚生活を夢見つづけている。
体が皺だらけに老いてもなお、手紙は遠くの若々しい婚約者にむかって送り出された。
そしてふたりの肉体が大昔に滅びてもなお、手紙はふたりの清い恋ごころを運んで、世界を行き来している。
Fino
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