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第24話 ニジ Ĉielarko
しおりを挟む虹が根絶されてから、もう何年も経つ。
かつて、国家が下した命令により、皆で虹を憎んだ時期があった。
大きく空に弧をえがくものはもちろん、人が胸に抱きあげられるほど小さなものでさえ、探しだして潰した。隠す人間がいれば、おおぜいで取り囲み、厳しく責めたうえで虹もろとも叩き殺した。
虹を迫害すればするほど、わが国が外国との戦で有利になるのだと、国がさかんに宣伝していた。
わが国が周りの国々を支配し、新しい秩序を築く。その結果、どの土地のどんな身分の人々も笑顔で暮らせるようになるのだと、国の上層部は言っていた。
まだ若者の愚かさを持ったままだった私は、国の言葉を胸が熱くなるほど、真剣に信じた……。
初夏になると、私は自分に家族がいた頃の映像を見ずにいられない。
親戚が訪ねてきていた。近隣の家族も交えてにぎやかに遊び、また談笑している、そんな情景が白黒で写っているフィルム。
場所は、国に献上する前の、わが一族の屋敷、その広い庭。撮影者は私だ。
なごやかに笑っている大人たち。無邪気に走って遊ぶ子どもたち。
すでに夏薔薇が咲きはじめていた。
彼方の空には、大小の虹の美しい姿。
まだ人が狂いだす前のひとときは、かくも豊かだったのだ。
ああ、もはや何者も私を祝福するまい。
映像のなかの庭にあったような、あたたかい笑みもやさしい歌も、永久に去ってしまった。
映像を写してから二年のうちに、私は親戚も隣人も、ほとんどすべて国に密告した。わが家の庭にたむろして、国の方針を批判していたと。
彼らは取調べのために連れていかれ、その後の行方はわからない。
私が虹を探しだす集団に加わり、よその地域に出かけていたとき、引っ越したばかりの小さな家で、私の妻、私の父母、そして私の子どもたちは、別の集団によって命を奪われた。
ああ、わが家族!
彼らは、小さな虹をひとつ、家のなかに隠して救おうとし、それを隣人たちに密告されたのだった。
Fino
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