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変人の集い
第12話 私の……せい……ですか?
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「ぜはぁ……、ぜはぁ……、も……、もうホントに無理」
あれから10分ほどムーンラビットに追い回された私だったが、隙を見て茂みに隠れることで、なんとかやり過ごすことに成功した。
だけど……。
「これからどうしよう」
山中を脇目も振らず走り回ったせいで、方向感覚を見失ったうえ、午前中に受けたクエストの疲れもあり、足がズキズキと痛み始めている。
もう自力で歩くことすら難しい。
そんな絶望的な状況なのに、マツザカもハルキも居ない。
「うぅ……、ぐすっ……、ぐすっ、私、このままムーンラビットに捕まって食べられたちゃうのかなぁ……、ぐすっ」
想像もしたくない、最悪の未来が頭をよぎる。
同時に、涙が止まらなくなった。
「ぐすっ……、ぐすっ……、マツザカさん……、早く来て下さいよぉ」
無駄だと分かっていながらも、マツザカの名前を呼んでみたが、当然のように返事は帰ってこなかった。
一人、泣き続ける私。
すると、ガサゴソッと真後ろの茂みが音を立てた。
「え?」
恐る恐る茂みを覗くと、黒い大きな影がこちらに迫ってきていた。
「う、嘘でしょ……」
状況からいって、間違いなく、ムーンラビットだ。
いつもの私なら、叫び声を上げて逃げるところだが、もうその気力すら残っていない。
死ぬ。
私は本気でそう思った。
そして、私が覚悟を決め、目を瞑ったタイミングで、茂みの奥から、黒い塊が飛び出してきた。
「い、いや……こ、こないでぇぇぇぇえええええ」
最後に出た言葉はそんな間抜けな言葉だった。
「はは、そんなに拒絶してくれるなんて。ヒカリさんも嬉しいことをしてくれるな」
―え?
この声、もしかして……。
「マツザカ……さん?」
ゆっくりと目を開ける。
すると、そこには、
「ああ、そうだとも。怖い思いをさせてしまったね。申し訳ない」
血まみれで、笑っているマツザカがいた
「うぅ……、も、もう……、何やってるんですか……。全部……あなたのせいなんですからね……ぐすっ」
そう言って、マツザカをぽかぽかと叩く。
「すまなかった。今回はおふざけがすぎてしまったね」
そんな私をマツザカはそっと抱き寄せた。
―グチャ
……、何だろう、この音。
聞き覚えがある。
そう思いマツザカから距離を取ると、私の服がマツザカの血で真っ赤に染まっていた。
「な、きゃ、キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「ははは、元気そうだねヒカリさん。良かった。良かった」
「よ、良くないですよ!」
ほんの一瞬とは言え、何でこんな人に心を許しそうになったんだろ……。
私までおかしくなってきたのかなぁ……。
そんなことを考えていると、
「ヒカリさん、リーダー! こんなところにいたんですね!!」
「は、ハルキさん! 無事だったんですか!!」
茂みの中からボロボロのハルキが這い寄ってきた。
「えぇ、リーダーが2匹とも相手をしてくれたおかげで、何とかなりました。ありがとうございます。リーダー」
そう言って、ハルキが手に持っている網を見せる。
そこには、気絶した状態で捕獲されているムーンラビットがいた。
「こ、これマツザカさんがやったんですか?」
「ははは、なぁに、これくらい朝飯前さ。本当はもっとボコボコにされていたかったんだけどね。ヒカリさんがどこかに行ってしまったから急いで片づけてきたのさ」
「えぇ……」
本当にこの人は。
変態じゃなきゃただの優秀な冒険者なのに……。
「はぁ……」
そう思うと、自然とため息が出てきた。
「はっはっはっ。ヒカリさんも、ムーンラビットに殴られたかったのかい? その気持ち、痛いほど分かるなぁ」
「マツザカさんと一緒にしないで下さい。私はムーンラビットが捕獲できたのなら、それで満足です。早く帰りましょうよ」
「ふむ、帰宅したいのは山々なんだがね。残念ながら、そうはいかなくてね」
「へ? 何言って……」
「ヒカリさん、ヒカリさん」
ツンツンとハルキが私の背中をつつく。
「は、はい? どうかしましたか?」
「網の中にいる、ムーンラビットの数、数えてみて下さい」
「へ? 1、2……。あれ? もう1匹は?」
「それが……」
「はっはっはっ、ヒカリさんを探して山の奥へ消えていったよ」
何かを言いづらそうにしているハルキに割って入るマツザカ。
それってつまり……
「もしかして、私が逃げたせいで、またムーンラビットを探し回らなきゃになったわけですか……」
「いや、別にヒカリさんのせいでは……」
深刻な表情で、私を見つめるハルキ。
「はっはっは、そうだとも。ハルキ君がムーンラビットに呆けてさえいなければ、ヒカリさんが怖い目に遭わずに済んだんだからね」
その一方で、馬鹿みたいに大きい声を出しているマツザカ。
「ちょっ、なんで僕だけが悪いみたいな言い方するんですか! リーダーも遊んでたじゃないですか!」
「ははは、そうだとも! つまり、我々が悪いのであって、ヒカリさんに非はないさ」
「まぁ……、それはそうですね。僕達が悪いです。すみません、ヒカリさん」
申し訳なさそうに頭を下げるハルキ。
「や、止めてください。私だって、それは分かってるんです。でも、でも……」
マツザカの言う通り、この人達が100%悪いのだが、私も少なからず、責任は感じていた。
「ふむ、理解はしているが、どこか納得出来ない部分があるか」
私の考えを見透かしたのか、そう呟くマツザカ。
すると、マツザカは、
「では、ヒカリさんにもムーンラビットをおびき寄せる手伝いをしてもらおう」
と言って、ハルキが持ってきた鞄の中をあさり始めた。
「は、はい! 私に出来ることなら何でもします!!」
「おお、素晴らしい意気だ。それでは頼むとしよう!」
マツザカがそう言って、鞄の中からあるものを取り出す。
「え……、これって……」
思わず、固まってしまった。
「あの、マツザカさん? これを着ろと??」
「ああ、もちろんだとも。俺達全員でこれを着て、ムーンラビットをおびき出そうじゃないか!」
「ぜ、全員って、マツザカさんとハルキさんもですか!?」
「ああ、そうだとも! 異在はないな! ハルキ君!!」
「えぇ、僕も1度着てみたかったんですよ! これ!!」
よだれを垂らしながらハァハァと息を荒くするハルキ。
そんなハルキを見て、私は、もうこの人ダメかもしれないと思うのだった。
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だけど……。
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山中を脇目も振らず走り回ったせいで、方向感覚を見失ったうえ、午前中に受けたクエストの疲れもあり、足がズキズキと痛み始めている。
もう自力で歩くことすら難しい。
そんな絶望的な状況なのに、マツザカもハルキも居ない。
「うぅ……、ぐすっ……、ぐすっ、私、このままムーンラビットに捕まって食べられたちゃうのかなぁ……、ぐすっ」
想像もしたくない、最悪の未来が頭をよぎる。
同時に、涙が止まらなくなった。
「ぐすっ……、ぐすっ……、マツザカさん……、早く来て下さいよぉ」
無駄だと分かっていながらも、マツザカの名前を呼んでみたが、当然のように返事は帰ってこなかった。
一人、泣き続ける私。
すると、ガサゴソッと真後ろの茂みが音を立てた。
「え?」
恐る恐る茂みを覗くと、黒い大きな影がこちらに迫ってきていた。
「う、嘘でしょ……」
状況からいって、間違いなく、ムーンラビットだ。
いつもの私なら、叫び声を上げて逃げるところだが、もうその気力すら残っていない。
死ぬ。
私は本気でそう思った。
そして、私が覚悟を決め、目を瞑ったタイミングで、茂みの奥から、黒い塊が飛び出してきた。
「い、いや……こ、こないでぇぇぇぇえええええ」
最後に出た言葉はそんな間抜けな言葉だった。
「はは、そんなに拒絶してくれるなんて。ヒカリさんも嬉しいことをしてくれるな」
―え?
この声、もしかして……。
「マツザカ……さん?」
ゆっくりと目を開ける。
すると、そこには、
「ああ、そうだとも。怖い思いをさせてしまったね。申し訳ない」
血まみれで、笑っているマツザカがいた
「うぅ……、も、もう……、何やってるんですか……。全部……あなたのせいなんですからね……ぐすっ」
そう言って、マツザカをぽかぽかと叩く。
「すまなかった。今回はおふざけがすぎてしまったね」
そんな私をマツザカはそっと抱き寄せた。
―グチャ
……、何だろう、この音。
聞き覚えがある。
そう思いマツザカから距離を取ると、私の服がマツザカの血で真っ赤に染まっていた。
「な、きゃ、キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「ははは、元気そうだねヒカリさん。良かった。良かった」
「よ、良くないですよ!」
ほんの一瞬とは言え、何でこんな人に心を許しそうになったんだろ……。
私までおかしくなってきたのかなぁ……。
そんなことを考えていると、
「ヒカリさん、リーダー! こんなところにいたんですね!!」
「は、ハルキさん! 無事だったんですか!!」
茂みの中からボロボロのハルキが這い寄ってきた。
「えぇ、リーダーが2匹とも相手をしてくれたおかげで、何とかなりました。ありがとうございます。リーダー」
そう言って、ハルキが手に持っている網を見せる。
そこには、気絶した状態で捕獲されているムーンラビットがいた。
「こ、これマツザカさんがやったんですか?」
「ははは、なぁに、これくらい朝飯前さ。本当はもっとボコボコにされていたかったんだけどね。ヒカリさんがどこかに行ってしまったから急いで片づけてきたのさ」
「えぇ……」
本当にこの人は。
変態じゃなきゃただの優秀な冒険者なのに……。
「はぁ……」
そう思うと、自然とため息が出てきた。
「はっはっはっ。ヒカリさんも、ムーンラビットに殴られたかったのかい? その気持ち、痛いほど分かるなぁ」
「マツザカさんと一緒にしないで下さい。私はムーンラビットが捕獲できたのなら、それで満足です。早く帰りましょうよ」
「ふむ、帰宅したいのは山々なんだがね。残念ながら、そうはいかなくてね」
「へ? 何言って……」
「ヒカリさん、ヒカリさん」
ツンツンとハルキが私の背中をつつく。
「は、はい? どうかしましたか?」
「網の中にいる、ムーンラビットの数、数えてみて下さい」
「へ? 1、2……。あれ? もう1匹は?」
「それが……」
「はっはっはっ、ヒカリさんを探して山の奥へ消えていったよ」
何かを言いづらそうにしているハルキに割って入るマツザカ。
それってつまり……
「もしかして、私が逃げたせいで、またムーンラビットを探し回らなきゃになったわけですか……」
「いや、別にヒカリさんのせいでは……」
深刻な表情で、私を見つめるハルキ。
「はっはっは、そうだとも。ハルキ君がムーンラビットに呆けてさえいなければ、ヒカリさんが怖い目に遭わずに済んだんだからね」
その一方で、馬鹿みたいに大きい声を出しているマツザカ。
「ちょっ、なんで僕だけが悪いみたいな言い方するんですか! リーダーも遊んでたじゃないですか!」
「ははは、そうだとも! つまり、我々が悪いのであって、ヒカリさんに非はないさ」
「まぁ……、それはそうですね。僕達が悪いです。すみません、ヒカリさん」
申し訳なさそうに頭を下げるハルキ。
「や、止めてください。私だって、それは分かってるんです。でも、でも……」
マツザカの言う通り、この人達が100%悪いのだが、私も少なからず、責任は感じていた。
「ふむ、理解はしているが、どこか納得出来ない部分があるか」
私の考えを見透かしたのか、そう呟くマツザカ。
すると、マツザカは、
「では、ヒカリさんにもムーンラビットをおびき寄せる手伝いをしてもらおう」
と言って、ハルキが持ってきた鞄の中をあさり始めた。
「は、はい! 私に出来ることなら何でもします!!」
「おお、素晴らしい意気だ。それでは頼むとしよう!」
マツザカがそう言って、鞄の中からあるものを取り出す。
「え……、これって……」
思わず、固まってしまった。
「あの、マツザカさん? これを着ろと??」
「ああ、もちろんだとも。俺達全員でこれを着て、ムーンラビットをおびき出そうじゃないか!」
「ぜ、全員って、マツザカさんとハルキさんもですか!?」
「ああ、そうだとも! 異在はないな! ハルキ君!!」
「えぇ、僕も1度着てみたかったんですよ! これ!!」
よだれを垂らしながらハァハァと息を荒くするハルキ。
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