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第二話 聖魔導師ディアナを巡る恋の予感
8 アレクサの密かな楽しみ
しおりを挟む王妃としてのアレクサは多忙を極めている。
先ず対外的な公務として、クリスと一緒に各国からやって来た使者への謁見、それが他国の王族ともなれば妃を伴っての外交であれば尚の事、アレクサは王妃として彼女達を持て成さねばならない。
伯爵家以上の令嬢や令夫人を招き情報収集の為のお茶会に、施設や病院への慰問、夜には華々しく国王夫妻の主催する舞踏会が催される。
その合間を縫って王妃であるアレクサは、王宮内を取り仕切る為に何かと忙しく動いている。
それは王宮内だけでなく、後宮や子供の宮の管理も今や事実上アレクサが取り仕切っているのだ。
毎日が分刻みのスケジュールが立てられ、普通では大凡成し得ない筈なのに、何故かアレクサは必ず週二回、王都にあるレオンの医療所へ赴いている。
一体何がアレクサをそんなにも動かしているのかはわからない。
ただベアが以前、一度だけアレクサへ質問した事があった。
するとアレクサは花が綻ぶ様な笑みを浮かべ――――。
『聖魔導師である事が私の生き甲斐だから? 患者さんと触れ合う為ならば王妃としてどの様に多忙を極めても街へ行き、ブランカフォルトの王妃でもなく、ましてやノースウッドの皇女でもないただの聖魔導師――――ディアナとして、一個人として生きられる。素肌で直に風を感じる事が出来る幸せは、何物にも変え難いものなのよ。だから私はどの様に多忙を極めても、王妃としての務めを果たす事が出来るのだと思うわ』
澱みなく澄みきった心と声でアレクサはベアへ語る。
「――――気をつけて下さいませ、そしてご無事な御戻りを心待ちにしております」
「ふふふ、ありがとう。ベアも皆も後の事は任せますね。では行ってきます」
「「「行ってらっしゃいませっっ」」」
明るい茶色の髪を靡かせ、笑顔と共にアレクサは眩い光へと包まれ今日も医療所へ、聖魔導師ディアナとしての時間を過ごす。
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