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第四章 夏の嵐
5 美琴Side
しおりを挟む「どこへ向かっているの?」
車が走り始めて約十五分、何故か今南インターから名〇高速を、ただ只管西へ向かって走っているっっ⁉
おまけに今日は平日の真っ昼間なのである。
道路は空いていてあっと言う間に吹田を通り過ぎてしまった。
「ねぇちょっと本当に何処へ向かって――――っっ」
「大阪」
いやいやここは既に大阪ですよって違うわっ、自分でもわかっているよ、突っ込むところはそこじゃあないって事くらいっっ。
でも片岡さんは、龍太郎は何時も思うけれど必要な事以外余り話したがらない。
はっきり言って無口――――だっっ。
これでよくお医者さんをやっていられるんだなって思う。
余り言いたくはないけれど龍太郎は柾兄と張り合えるくらいのめっちゃイケメンでスパダリと言うモノらしい。
背も高くてハーフだから少し日本人離れした容姿に足もめっちゃ長いだけでなく最近ほっそりとした体型の柾兄とは違い、龍太郎は如何にも男性的で程よくついた逞しい筋肉……私ってばさっき成り行き上とは言え男らしいあの腕の中に抱き締められた……ってっ、一体何を考えているんだ私!!
龍太郎が無口でっ、イケメンのスパダリでっ、どんなに逞しい身体であろうともっ、私とは一切何も関係ないじゃないっっ。
いやいや関係ないどころかずっぽりと関係ありまくりのド嵌り状態でしょ。
紙切れに私がサインしていないだけで後は全て埋められているだけの、俗に言う外堀は全て完全に埋め尽くされた、場所が場所だけに大阪城の本丸のみとなってしまった……私は豊臣側で、私以外に味方になるとすれば真凜くらいな訳で、後はパパも柾兄も皆龍太郎のいる徳川側ってかっっ。
1/4とは言え私はクウォーターなのに、なんでかなぁ……この純粋の日本人顔負けの十人並みの容姿とお子様体型。
いや違うっっ。
同じクウォーターの柾兄とハーフのパパはちゃんと向こうの血を受け継いでいる所為なのかめっちゃかっこいい。
と言う事は……どっちにも属さない私は味噌っかす⁉
ただ私は無口なイケメン程少し近寄り難いのとそんな大人な龍太郎の醸し出す雰囲気に知らず知らず見つめていたくなる気持ちを封じ込みつつも、何故か思う事は自分を必要以上に貶めていて何となく情けなく感じてしまう。
でもやっぱりハーフやクウォーターは人目を惹く美しさを持っていると見られがちなのは現実な訳で、そして私はんな夢を見る人達にとっては実に地味な平々凡々な人間にしか見られないのだろうと妙に落ち込んでいたりする。
そこで思う事はやっぱり……。
もう少し美人さんだったら柾兄もただの従妹でなく一人の、柾兄が好きな女の子だって見てくれたのか……な?
現実は柾兄には美人な婚約者の七海さんがいて、私には龍太郎がいる。
どんなに抵抗してもこれはもう覆らないのかもしれない。
生まれて初めて抱いた恋心を忘れなければいけないのかと思えば思う程、私の心はずんと重くなっていく。
そうして私が思いっきり現状について思い悩んでいる間にも車は名〇高速から何時の間にか阪〇高速へと、大阪港線へと向かって走っていた。
おい龍太郎、一体私を何処へ連れて行く気なんだ?
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