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第三章 もう一つの春
2 柾Side
しおりを挟むもうあれから五年も経ったなんて信じられない。
あの時は自分自身の慾を抑える――――ただそれだけの為……いや、何時の日か美琴の隣に立てる男になりたいっっ。
だが12歳と言う年齢差はどうしようもない。
それでもだっ、気づいてしまった気持ちには嘘偽りはなく僕自身生まれて初めて何が何でも欲しいとっ、何物にも代え難い存在が従妹の美琴だっただけの事なんだ。
勿論五年前自分の気持ちがわかった時点で叔父であり実の父親とも言える存在の周平叔父さんと母さんには包み隠さず報告した上でこれからの事を正面から相談したんだ。
まあ流石に当時13歳の美琴と25歳の俺じゃあ、誰がどう考えても犯罪級レベルなのは間違いない。
最初は琴ちゃんを失って日々呆然と暮らしていた周平叔父さんとその叔父さんの代わり……看護部長だった琴ちゃんを失った故に急遽副看護部長だった母さんは代理の看護部長として、また抜け殻同然の周平叔父さんの尻をこれでもかと蹴り飛ばしながら仕事に忙殺された毎日を送っていたのだが、流石に僕の相談を聞いた時には二人とも声を揃えて『『ロリコン野郎!!』』と叫ばれたよ。
正直に言ってあれは堪えたな。
僕自身まさか12歳も年下の美琴へ本気になるなんて――――いや、正確には美琴が生まれた瞬間に僕は既に恋に堕ちていただけであって、それを僕自身素直に認められずにいただけなんだ。
その証拠に自分で言うのもなんだけれど、日本人と英国人のクウォーターで然も見目も良かったかもしれないけれども、僕のバックには京都でもまあまあ知名度のある大きな総合病院の経営者一族と言うブランドがあったらしい。
僕自身別に何も思ってはいないけれども、そういうものが好きな者達にとっては僕は格好の優良物件だそうな。
しかし今更ながらだけれど僕は美琴が好き――――いやっ、この気持ちはそんな軽いもんじゃあないっっ。
愛している……よりももっと魂レベルで美琴の事を無意識にずっと想い続けていたんだ。
だからどんなに綺麗な女の子達から告白されても心が1㎜も動かなかった筈だ。
でもあの時その恋心を自覚した僕はもうそれを隠したまま、何もなかった日常の様に美琴の傍にいるのは無理だった。
だってそうだろ。
ずーっと十三年前より恋してきた相手なんだ。
それが一度でも自分の気持ちに気づいてしまえば、幾らまだ美琴は13歳の子供とは言えほんの少しでも性的な意味合いで彼女を見てしまえば僕は身の内より、泉の様に枯れる事無く湧き出る欲望を何時までも、そう少なくとも美琴が無事に成人するだろう七年後まで手を出す事無く、何時もの優しい従兄のお兄さんを演じられる程僕は聖人君子なんかじゃあない。
寧ろ今直ぐにでも美琴の隙をついて頭から、いやいや全身隈なくがっつりと貪り尽くす狼になれる自信があるっっ。
僕だって25歳の遣りたい盛りの成人男子なんだよ。
初めての恋に有頂天になって、相手の気持ちよりもきっと自分の気持ちを優先させ、何時か本当に……いいやそれは時間の問題だと思う。
それ程までに美琴――――お前を愛しているんだっっ。
だから僕はまだ自分の気持ちを、何とかなけなしの理性で抑えられる間に母さん達へ相談を持ち掛けた。
まあ母さんはあの通りの性格だし、琴ちゃんを失った叔父さんは仕事以外では抜け殻同然だけれども流石に一人娘の身の危険をしっかりと察知したらしい。
しかし反対されると思いきや、特に問題なく二人共美琴の将来の相手として僕を認めてくれた。
但し最終的な判断は美琴次第と言う条件の下で――――だ。
そうして浮かされた頭と心を持て余している僕へ周平叔父さんはある提案をしてくれた。
『私の親友がアメリカで働いている。向こうで若い奴が欲しいとこの前言っていたから柾――――一度アメリカへ行っておいで』
『周平叔父さん……』
『数年してそうだなぁ、美琴が無事に成人した時にそれでも柾の気持ちが変わらず、尚且つ美琴も柾を好きでいるのであればその時は二人をちゃんと祝福するよ。うん、まあ他の男に嫁へやるよりも柾なら美琴はずーっと私の許にいてくれるからね。あーでも二人でいちゃつく姿はやっぱり見たくないなぁ。はああぁぁ……琴奈さんはどうして私を置いて逝ってしまったんだろう』
そう言って暫く……約三時間くらい琴ちゃんへの愛を僕は正座のままエンドレスで聴かされた。
うん、まあ『許さんっっ』とか言って殴られるよりかはなんぼもましだな。
そうして僕は一か月後渡米し、周平叔父さんの紹介先の大学病院で働く事となった。
英語は祖母がイギリス人だけあって会話には然程困る事はなかった。
因みに美琴は英語は全くと言っていいくらいに離せない。
その美琴だが急に僕が姿を消したものだから最初の一年はめっちゃ大変と言うか、もう凄いとしか言いようがなかったな。
エアメールや国際電話、li〇eにフックブック……13歳の女の子の思いつく限りの方法を行使していたと思う。
勿論美琴の書いた手紙やメールはちゃんと……いやいや便箋はもうボロボロになるくらい何度も読み返しているし、メールもこれでもかと言うくらい繰り返し読んでいる。
当然の事ながらスマホに保存されている写真達も――――だ。
僕にとって美琴のそれらは聖書と同格かそれ以上の存在なんだ。
ただ美琴には可哀想な事をしたな……と深く反省もしているんだ。
それは渡米する前に周平叔父さんと一つの約束を交わしたんだ。
『いいか柾、アメリカへ行っている間美琴との連絡は一切禁止だ。何年かかろうとも向こうでしっかりと腕を磨き、私の跡継ぎとして朝比奈総合病院と美琴の両方を護れるくらい器の大きな男になって帰ってこい。それまでは美琴への想いは邪魔になるだけや。私も最愛の一人娘の人生がかかっているからな。甥とは言え中途半端な男に大事な琴奈さんとの間に出来た可愛い愛の結晶を託す訳にはいかん。これだけはぜーったいに譲らんからな』
まあ周平叔父さんの言いたい事も気持ちもわからなくもない。
でもそのお陰でしっかりと集中して勉強も頑張れた。
だがまさかその先の未来でこんな展開になるとは一体誰に分かったのだろう。
いや、恐らく誰もわからないし誰も悪くはない。
今は何よりも一番美琴――――君に逢いたい。
逢って、少し大人の女性となった美琴の顔を見て、愛らしい声を聴いて――――美琴、お前を抱き締め甘い匂い心行くまで堪能したい!!
あぁここからでも見える。
桜がもう直ぐ……今年も咲くんだな。
いや、今年と言わず来年もその翌年もずっと毎年お前は美しも儚く咲き誇るんだな。
だが僕はきっと来年の桜は――――。
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