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第二章  はじまりは春

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 買い物を済ませた美琴は家が近づくにつれ彼女の心はその歩みと同じくらいの速さで離れて速さでいく。

 まるでそれは決して交わる事のない綺麗な放物線を描いているかのようだ。

 幾ら真凜と女子会をし少しは心が晴れたからと言え、問題は一昨日より何も解決はしていない。
 そして今夜はきっとその問題が何らかの形で解決するのだと美琴は確信する。
 だがその問題は時に美琴の望む解決なのかどうかは定かではない。
 
 そう、家長であり父親の周平へ何も言わず、周平を実の父親同様に思いまた尊敬している柾があのような単独行動の様な発言をするとは美琴は思って等いない。

 柾の容姿は確かにはっきりとした顔立ちのワイルド系のイケメンなのだが、しかしその内面は美琴の知っている限り誰よりも繊細で優しい。
 またなんでも卒なくこなすように見えてその現実は誰よりも努力をしている事を、美琴は幼い頃より知ってもいた。
 
 だからこそなのである。

 そんな柾が周平へに限らず柾の母親である美咲に何の根回しもせず、美琴へあのような発言をする訳がないのだっっ。
 きっと周平と美咲は美琴の将来の伴侶として片岡龍太郎を認めた――――と考えた方が妥当だと、そう決断済みなのだと思った方が美琴にはしっくりとくるのである。
 
 ではだとすれば――――だっっ。

 今夜周平達を交え家族揃っての夕食……またはその後にでも今度は柾ではなく父親である周平より美琴へ決定事項を伝えられ逃れる事は出来ないのかもしれないと、そう思うだけで美琴の足取りは更に重くなっていく。


 まだ、そうまだ何も言われてはいない。
 それに決まってはいないけれども……もしパパと美咲伯母さんにそうだと断言されたら、私はこの先どうすればいいの?
 もう、柾兄を好きでいたらあかんの?
 そ、そんなのは嫌……やっっ。
 ずっと、ずっと昔から柾兄だけが好きやったんやもんっっ。
 なのに今更……今更そんなんあかんて言われても……っっ⁉

「ま、柾……兄⁉」
 
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