Supreme love  至上の恋~  愛おしいあなたへ

雪乃

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第二章  はじまりは春

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 そして本当に現実は美琴に優しくはなかった……いやはっきり言って粗塩対応と言ってもいい。

 そのまま突っ伏したっまま、声が漏れないように顔を布団に押し付け泣き堕ちした翌日は当然ながら目と言わず顔全体がブクブクに腫れ上がっていた。
 
 幾ら温かいタオルを押し当てても、冷たい冷水で洗顔しても――――だっっ。
 直ぐには何もなかった事に戻る訳等ないのである。
 それでも確実に朝はやってきて、朝比奈家の主婦である美琴は朝から何かと忙しい。

 皆の朝食にお弁当は勿論の事、仏壇の水を変えてお線香をあげるのだが、何時もは母琴奈へ色々話しているのだが、流石に今は……そう誰が美琴と琴奈の会話を聞いているかわからない状況において彼女は素直に母親へ語り掛ける言葉が見つからなかった。
 だからお線香が消えるまでじっとただ黙ったまま遺影の中で優し気に微笑んでいる母の笑顔を静かに見つめ、柾達がダイニングへ来るまでに家を後にした。

 大学へ行くにはまだまだ早い時間だと言う事は十分美琴も承知していた。
 だがこの腫れぼったい目と顔をどうしても柾には見られたくなかったと言う乙女心を理解して貰いたい。
 そこで向かった先は親友真凜の住む学生用のマンションであった。

 ビー

『ふぁあ……っっ⁉ 誰って美琴なん⁉ あんたなんやその顔っっ』
「あはは……起こしてごめ、う、うぅ……ま、真凜〰〰〰〰っっ」

 インターンフォン越しにでも腫れぼったいのがわかる程めっちゃ腫れているんだぁ……と何気に美琴はそう思った瞬間、今まで我慢していたものが昨夜で流しきっていたと思っていたのに、真凜の寝起きの声を聴いたと共に涙が後から後から泉のように溢れ出てきてしまう。
 
 一方インターフォン越しとは言え親友の変わり果てた姿を見て一瞬で目覚めた真凜は、ロックを解除すると共にスリッパのまま、いやいやパジャマ姿で階段を駆け下り自動ドアの前でうずくまって泣いている美琴を抱き締めた。

「一体何があったんや? あんた昨日は家にって抑々そもそもあんたん家は、あの娘超絶ラブなおじさんが外泊なんて絶対に許さへんやろうし、第一いまだに門限20時って言うんもめっちゃウケるんやけどそんな美琴が外でって……いやいや家ん中じゃあ親子喧嘩も――――ってまさかのおじさんと喧嘩でもしたんかっっ⁉」
「…………」
「ほなおじさんと違ったら伯母さん……はあり得へんやろ。美咲おばさんもどっちかと言うと美琴を自分の娘みたいに可愛がってはるからなぁ」
「…………」
「なあ美琴。ここやったら人も通るさかい、それにまだまだ朝は寒いやろ――――っくしゅんっ、ごめ、私パジャマのまんま出てきてしもうたわ」

 真凜はそう言ってガタガタと小刻みに身体を震え始めた。
 確かにまだ四月とは言え、昼間ならまだしも朝方はまだ肌寒いと言うかしっかりと寒いのである。
 そして美琴もそんな真凜に気づいたのか、ゆっくりと涙で濡れた顔を上げる。

「ごめ、ごめん真凜。で、でもわ、私っっ⁉」
「あーわかったわかった。取り敢えず話は部屋へ行ってからや。ここはめっちゃ寒いしな。それに今日は別に休んでもさして問題ない講義やし――――って言ったら怒られるんやけど、まあ講義よりもあんたの話を聞く方が先やろ。後でコンビニ行って何かお菓子と飲み物やら買って、今日はパーっと女子会でもしようか」
「うん、ありがと真凜、それとごめんね」
「小さい時からの仲やん、あんたが困った時には時私がいるし、私が一人暮らししたいって言った時も美琴は私の味方になって父さんとの話し合いに参加してくれたやん。だ・か・らおあいこや」
「うん、うん、真凜愛してる〰〰〰〰っっ」
「はは、出来たらめっちゃ男前なイケメンに言われたいわな。さ、部屋へ行こか」
「うん、真凜の分のお弁当も持ってきた」
「ラッキーっ、美琴のご飯は母さんのよりも美味しいんやもん。うーん美琴ちゃん愛してるっっ」
「うわっ、真凜ここで抱き着くっっ⁉」
「いーじゃん、うち等の仲やし~」

 そう言うと二人は今時のJDらしく楽しげに笑いながら、時にはじゃれ合いつつも仲良く部屋へと続く階段を上がっていくのであった。
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