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第二章 はじまりは春
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しおりを挟む帰宅してお風呂にお湯を溜めている間に掃除と洗濯をさっと済ませてから、やや温めのお湯に浸かって天国天国。
肩というか全身凝りまくった身体やパンパンになった足もお湯の中でマッサージをすると少しだけまし……かな。
はああぁぁぁ……それにしても湯船に浸かって浴槽に顎を置いて、盛大な溜息って、18歳にして既にオヤジだなぁ……と美琴はふと思う。
だけどさっきのアレは何やったんだろう。
いやホント失礼な奴としか思えないんだけれどねっっ。
然も赤の他人様に行き成り『おいっ』はないでしょう。
私はあんたの所有物じゃないってゆーの!!
ホントに気分悪い。
気分よく晩御飯の買い物を頑張ってしたというのに、あー何だか余計にイラっとする。
それでなくても朝からちょっと複雑な気分……なのに。
柾兄が帰ってくる。
然も今晩って、そう今晩ってそれも行き成り過ぎだって言うのっっ。
まだ心の準備も何も出来てないって言うか、柾兄の部屋の掃除も空気の入れ替えもまっ、まだだっっ。
あ〰〰〰〰ご飯どうするのかな?
食べてくるのか、それとも久しぶりに家族揃って一緒に食べるのかな?
一応柾兄の用意もしないとだし、長風呂している時間なんてないんだけれど……う~ん、身体が解れた加減です、睡魔が……。
なんか変に朝から緊張してからのさっきの腹黒イケメンのお陰で睡魔が……。
いやいやいやいや寝ている場合じゃないっっ!!
睡魔なんてこの際隅っこへ追いやって、早く用意しないとそれこそ何もかも間に合わないっっ。
のへら~とお湯の中で漂っていた身体を起こし、美琴は重い身体を踏ん張るようにして浴室を後にし、リビングから隣家へと入り二階の柾の部屋へと上がって行く。
部屋に入ると相変わらずの相変わらずの柾の几帳面な性格が表れている。
美琴はすっきりと整頓された部屋の奥へと入り窓を開け、ベッドシーツを換え掃除機をかけていく。
ついでに美咲のベッドのシーツも交換する。
掃除を終わらせるとキッチンへ戻り、買ってきたサンドウィッチを摘まみながら夕食の準備を始めた。
そうして野菜を煮込んでいる間にTVを点け、何気にニュースを聞きつつサラダに大根ときゅうりとナスの浅漬けに、鮭を焼いて解しておく。
朝比奈家では、特に一見西洋的なの顔立ちをしているのに何故か周平は、シチューや洋食の後は決まってお漬物や焼き鮭に梅とワサビたっぷりのお茶漬けがなくてはならないのだ。
然も何故か焼き鮭は必ず解したモノ!!
これは亡き母琴奈が周平を甘やかした所為だと美琴は思っている……いや、断言出来る。
そうして次にベシャメルソースを作ってスープで煮込んだモノと合わせ、牛乳に生クリームと塩、胡椒で味を整えれば――――。
「うん、美味しい」
出来上がりだ。
テーブルセッティングも出来ているし準備万端。
時間ももう直ぐ19時だ。
もうそろそろ皆は帰ってくる頃だけど、慣れない大学生活と家事の両立で美琴の疲れもピークに達した所にリビングにある白いふかふかのソファーへ少し凭れていると我慢していた睡魔が容赦なく襲い、TVを見て父と伯母の帰りを待つ心算が5分もしない間に瞼は重く夢の中へと引き込まれていく?
カチャ。
はっ、帰ってきたんだっっ。
美琴はがばっと身体を起こそうとするが、身体はドロドロに疲れていて思い通りにすっと起きれない。
ついふかふかソファーでもたついていると……。
「ただいま美琴、寝ていなくて良かったのかい?」
「ん、あぁパパ? う……ん、折角だから一緒にご飯食べよう……っっ!?」
両手を上げて伸びと一緒に欠伸をすると目の前には父周平だけではなかったっっ。
リビングに入ってきたのは、少し痩せてはいるが見間違える筈なんてない。
柔らかい黒髪に青みがかった漆黒の瞳をした、そう黒豹をイメージしてしまうワイルド系の彫りの深い濃い顔立ちの男性は、忘れたくても忘れられない――――っっ!?
「柾兄っっ」
「元気そうだね美琴。それに随分と綺麗になったよ。もうあの頃の幼い女の子じゃあなくなったね」
「柾兄こそっ、ちっともううん、前よりもずっとカッコ良くなったよ。お仏壇にある伯父さんとそっくり。でもどうして? 何で急にアメリカへ行っちゃったの? 何も言ってくれなくて、何の便りもなくて、心配してめっちゃ電話や手紙を送ったのに全然柾兄からなんのれんらくもなくてっ、なのに何の前触れもなく急に帰ってくるんだもんっっ。もう何処にも行っちゃヤダっ、ま、ママがいなくなって直ぐ柾兄もいなくなって美琴はめっちゃ寂しかったんだから……っっ⁉」
美琴は柾の顔を見るなりソファーから飛び降り入り口前にいる柾へと抱きつきつつ泣きだした。
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