Supreme love  至上の恋~  愛おしいあなたへ

雪乃

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第二章  はじまりは春

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 そして笑う事を忘れていた大人達に再び笑顔を取り戻させたのも美琴と言う存在がいたからこそ。

 だがだが美琴は自身も母を亡くし悲しかったのもあるが、それ以上に恋い慕う柾の存在を忘れたかったのかもしれない。

 最愛の母を失いその傷も癒えない内に恋い慕う柾が何も言わず渡米し、美琴の心はこれ以上ないくらい悲鳴をあげていた。
 ぽっかり大きな穴の空いた心に少しでも蓋をしたくて、自分を必要とされればされる程にその間は泣かなくても済むと幼心に思い、隙間を埋める様にして家事へ勤しみその結果今も父と伯母に喜ばれている。


 そうして五年――――やっと大学生にとなり自身の未来予想図を模索し始めた頃になってっ、そう今になって『』と言う父からの衝撃的な一言が、美琴の心を激しく動揺させる。

 嬉しくもあり、嬉しくもない様な複雑な想い。

 五年掛けてようやく心穏やかに笑える様になったと言うのに、父のあの一言を聞いた瞬間――――それまで硬く蓋をしていた感情があれよあれよと蓋を軽々と押し退け溢れ出してくるのだ。

 柾兄が好き――――という想いが……。

 心が震える程に嬉しい……と思う反面、五年という長い時間は美琴を言い様のない不安へと陥れる。

 もしかしなくても向こうで恋人が出来たかもしれない。
 ううん、恋人でなく結婚していたら……。
 今回はその報告だったら……。
 嬉しさで綻びかけた心が見る間にしぼんでいく。


「ま、まだ決まった事じゃない」

 そう、思い込むのはまだ早い、もしかしたら自分存在にしぼ漸く気づいてくれたかもしれない……とやや楽観的に思い込もうとした刹那――――。

 美琴の前に黒のスポーツカータイプの車が止まり、そしてウィンドウが静かに降りて……。

「おい、朝比奈総合病院を知っているか?」

 ウィンドウより出てきたのは、ふんわりとした明るい茶色の髪に黒い瞳をした甘く優しげな顔立ちのイケメン!?
 何処となく品があってノーブルな感じはするけれども……。

「確かにこの辺りだったのだが、まさかだろうな?」

 な・ん・で・す・っ・て〰〰〰〰っっ!!
 何っ、この横柄極まりない話し方はっっ!!
 見た目だけ品があってもその口はとんでもなく、ちょい悪どころかだっっ!!
 こんな横柄な奴に教えてあげる義理合なんてものはないし、そもそもどうしてうちが潰れてるって言われなきゃいけないんっっ。

「おい、聞こえないのか? 耳糞でも溜まっているのか?」
「――――はあっ、じょ、女性に対して失礼やないんっっ!! なんで耳糞……あ゛〰〰〰〰大体人の機嫌が悪いって時にって、なんでこんな変な奴に絡まれなきゃいけないんやっっ」

 しかも本当に失礼な奴!!
 出来れば二度と会いたくない!!
 いえ、お会いしたくはない!!

 ムカついた美琴はその失礼なイケメンの問い掛けに返事もせずにすたすたと歩き出す。

「おいっ、訊いた質問に答えろ!!」

 何が答えろ――――やっ、私はあなたの部下でも家族でもないんやから答える義理合いなんてない!!

 そんな無視する美琴へ車はゆっくりと彼女の歩くスピードに合わせてくる。

「まともに口も利けないのか、それとも本当に病院は潰れたのか?」

 何処となく愉悦を含んだ男の物言いに美琴はキレた――――。
 歩みを止め男へと身体を向ける。

「さっきから何なんっっ。人の病院潰れた潰れたって言っていい事と悪い事の区別もつかへんのっっ!! それにな〰〰〰〰ひ、人にモノを尋ねんのにはないんんとちゃうっっ。先に言っとくけれど私はあなたの知り合いでも家族でもないんやからねっっ。そ、それとき、気安ぅ話しかけんといてや!! そ、それにそないに病院の場所が知りたいいんやったらあそこにがあるからそこで聞いたらいいんとちゃうの!! 最後に私からはぜーったい言わへんしっ、では失礼します、それと絶対ついてこないで下さい!!」

 そう言い放つと美琴は両手に握っている買い物袋をしっかり握り直し、一目散に自宅へと向かって走り出した。
 ただし荷物が重たくてダッシュがちょっときつい。
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