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第二章 はじまりは春
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五年前――――大好きな母が亡くなってから美琴の生活は一変した。
13歳だった美琴はそれまで普通の子供らしく夕食の用意が出来るだろう時間まで友達と仲良く遊んでいた生活より、授業が終われば直ぐ家へ帰り、家事に勤しむ主婦へと徐々に変貌していく。
勿論父親の周平は愛妻を失った傷は中々癒えず色々と腑抜けてはいたが、それでも我が子に全ての家事を押し付けようとはしないが、如何せん亡き妻によって散々甘やかされていた所為なのか、見事なまでに家事は一切出来ない。
また隣家とは言えお互いのリビングを回廊で繋がっている義姉の美咲も何かと仕事の合間に美琴を手伝ってはくれるのだが、元々家事不適合者で尚且つ義妹に甘えていたと言う過去に付け加え、周平の経営する病院の看護部長となった為、未だ腑抜けている周平の尻を叩きつつ部長としての激務もあり結果、余り美琴の助けとはなってはいない。
そこへ折衷案として浮かび上がったのは家政婦さんを雇う事である。
しかし蓋を開けてみると現実は中々思うように運ばないのである。
家政婦と言ってもやはりそこはピンキリなのだ。
例えば若い女性が来ると必然的にイケオジな周平へ色目を使いあからさまに媚を売り、娘の美琴に対しては新しい母親宜しくと言ったところで馴れ馴れしい態度で接してくる。
かと言って年配の女性は性格的にも体力的にも難しく、これは……と思う人へ巡り合わない。
そうこうしている間にあっと言う間に一年が過ぎた頃にやっと条件や好み等々叶った家政婦さんは来たのだが、彼女の事情で半年しか勤められないと言われてしまい、そこで美琴はその家政婦さんに半年の間様々な家事を教えて貰い、これより先は自分がこの家を守ろうと決意した。
当然周平も美咲も美琴の考えに反対したのだが結局半年後予定通り家政婦が辞めた時、美琴のほぼほぼ完璧な家事能力を前にして、両者は何も言えなくなってしまった。
だが周平達は出来る事なら美琴にはもっと子供らしく皆と遊んで欲しいし、それに勉強にも勤しんでにも勤しんで貰いたいと何度も美琴を交えて話し合いを行った。
結果家事は美琴が無理をしない範囲でするという事に落ち着くけれども、実際中々どうして家事を甘く見てはいけない。
掃除や洗濯も毎日しなければ直ぐに山の様に貯まってしまうのだっっ。
そんな状態からのを片づけるよりも、毎日少しずつでもからのこなした方が余程高率的だという事を大人達は全く気付かなかった。
それはそれで問題なのだが、美琴は敢えて大人達にこれ以上言わなかった。
そう大人達は仕事は文句なしに出来るのに何故家事一切がが壊滅的にダメなのか……。
父親は兎も角美咲は結婚して柾と言う子供もいるのにそれでも家事は苦手だったらしい。
本当に亡くなった琴奈の存在は、美琴を含め父や伯母にとっても大きな存在だったという事。
そして幼かった美琴なりに父や伯母の手助けにもなりたいと思ったからこそ家事はそんなに苦痛でもなく、ほんの少し友人達と遊ぶ時間は減ったけれども、母が亡くなって明かりの消えた家より小さな明かりが再び灯ったのは、朝比奈家にとって新たなる小さなママの存在となった美琴の頑張りによるものなのだ。
13歳だった美琴はそれまで普通の子供らしく夕食の用意が出来るだろう時間まで友達と仲良く遊んでいた生活より、授業が終われば直ぐ家へ帰り、家事に勤しむ主婦へと徐々に変貌していく。
勿論父親の周平は愛妻を失った傷は中々癒えず色々と腑抜けてはいたが、それでも我が子に全ての家事を押し付けようとはしないが、如何せん亡き妻によって散々甘やかされていた所為なのか、見事なまでに家事は一切出来ない。
また隣家とは言えお互いのリビングを回廊で繋がっている義姉の美咲も何かと仕事の合間に美琴を手伝ってはくれるのだが、元々家事不適合者で尚且つ義妹に甘えていたと言う過去に付け加え、周平の経営する病院の看護部長となった為、未だ腑抜けている周平の尻を叩きつつ部長としての激務もあり結果、余り美琴の助けとはなってはいない。
そこへ折衷案として浮かび上がったのは家政婦さんを雇う事である。
しかし蓋を開けてみると現実は中々思うように運ばないのである。
家政婦と言ってもやはりそこはピンキリなのだ。
例えば若い女性が来ると必然的にイケオジな周平へ色目を使いあからさまに媚を売り、娘の美琴に対しては新しい母親宜しくと言ったところで馴れ馴れしい態度で接してくる。
かと言って年配の女性は性格的にも体力的にも難しく、これは……と思う人へ巡り合わない。
そうこうしている間にあっと言う間に一年が過ぎた頃にやっと条件や好み等々叶った家政婦さんは来たのだが、彼女の事情で半年しか勤められないと言われてしまい、そこで美琴はその家政婦さんに半年の間様々な家事を教えて貰い、これより先は自分がこの家を守ろうと決意した。
当然周平も美咲も美琴の考えに反対したのだが結局半年後予定通り家政婦が辞めた時、美琴のほぼほぼ完璧な家事能力を前にして、両者は何も言えなくなってしまった。
だが周平達は出来る事なら美琴にはもっと子供らしく皆と遊んで欲しいし、それに勉強にも勤しんでにも勤しんで貰いたいと何度も美琴を交えて話し合いを行った。
結果家事は美琴が無理をしない範囲でするという事に落ち着くけれども、実際中々どうして家事を甘く見てはいけない。
掃除や洗濯も毎日しなければ直ぐに山の様に貯まってしまうのだっっ。
そんな状態からのを片づけるよりも、毎日少しずつでもからのこなした方が余程高率的だという事を大人達は全く気付かなかった。
それはそれで問題なのだが、美琴は敢えて大人達にこれ以上言わなかった。
そう大人達は仕事は文句なしに出来るのに何故家事一切がが壊滅的にダメなのか……。
父親は兎も角美咲は結婚して柾と言う子供もいるのにそれでも家事は苦手だったらしい。
本当に亡くなった琴奈の存在は、美琴を含め父や伯母にとっても大きな存在だったという事。
そして幼かった美琴なりに父や伯母の手助けにもなりたいと思ったからこそ家事はそんなに苦痛でもなく、ほんの少し友人達と遊ぶ時間は減ったけれども、母が亡くなって明かりの消えた家より小さな明かりが再び灯ったのは、朝比奈家にとって新たなる小さなママの存在となった美琴の頑張りによるものなのだ。
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