14 / 75
第二章 はじまりは春
3
しおりを挟む
五年前――――大好きな母が亡くなってから美琴の生活は一変した。
13歳だった美琴はそれまで普通の子供らしく夕食の用意が出来るだろう時間まで友達と仲良く遊んでいた生活より、授業が終われば直ぐ家へ帰り、家事に勤しむ主婦へと徐々に変貌していく。
勿論父親の周平は愛妻を失った傷は中々癒えず色々と腑抜けてはいたが、それでも我が子に全ての家事を押し付けようとはしないが、如何せん亡き妻によって散々甘やかされていた所為なのか、見事なまでに家事は一切出来ない。
また隣家とは言えお互いのリビングを回廊で繋がっている義姉の美咲も何かと仕事の合間に美琴を手伝ってはくれるのだが、元々家事不適合者で尚且つ義妹に甘えていたと言う過去に付け加え、周平の経営する病院の看護部長となった為、未だ腑抜けている周平の尻を叩きつつ部長としての激務もあり結果、余り美琴の助けとはなってはいない。
そこへ折衷案として浮かび上がったのは家政婦さんを雇う事である。
しかし蓋を開けてみると現実は中々思うように運ばないのである。
家政婦と言ってもやはりそこはピンキリなのだ。
例えば若い女性が来ると必然的にイケオジな周平へ色目を使いあからさまに媚を売り、娘の美琴に対しては新しい母親宜しくと言ったところで馴れ馴れしい態度で接してくる。
かと言って年配の女性は性格的にも体力的にも難しく、これは……と思う人へ巡り合わない。
そうこうしている間にあっと言う間に一年が過ぎた頃にやっと条件や好み等々叶った家政婦さんは来たのだが、彼女の事情で半年しか勤められないと言われてしまい、そこで美琴はその家政婦さんに半年の間様々な家事を教えて貰い、これより先は自分がこの家を守ろうと決意した。
当然周平も美咲も美琴の考えに反対したのだが結局半年後予定通り家政婦が辞めた時、美琴のほぼほぼ完璧な家事能力を前にして、両者は何も言えなくなってしまった。
だが周平達は出来る事なら美琴にはもっと子供らしく皆と遊んで欲しいし、それに勉強にも勤しんでにも勤しんで貰いたいと何度も美琴を交えて話し合いを行った。
結果家事は美琴が無理をしない範囲でするという事に落ち着くけれども、実際中々どうして家事を甘く見てはいけない。
掃除や洗濯も毎日しなければ直ぐに山の様に貯まってしまうのだっっ。
そんな状態からのを片づけるよりも、毎日少しずつでもからのこなした方が余程高率的だという事を大人達は全く気付かなかった。
それはそれで問題なのだが、美琴は敢えて大人達にこれ以上言わなかった。
そう大人達は仕事は文句なしに出来るのに何故家事一切がが壊滅的にダメなのか……。
父親は兎も角美咲は結婚して柾と言う子供もいるのにそれでも家事は苦手だったらしい。
本当に亡くなった琴奈の存在は、美琴を含め父や伯母にとっても大きな存在だったという事。
そして幼かった美琴なりに父や伯母の手助けにもなりたいと思ったからこそ家事はそんなに苦痛でもなく、ほんの少し友人達と遊ぶ時間は減ったけれども、母が亡くなって明かりの消えた家より小さな明かりが再び灯ったのは、朝比奈家にとって新たなる小さなママの存在となった美琴の頑張りによるものなのだ。
13歳だった美琴はそれまで普通の子供らしく夕食の用意が出来るだろう時間まで友達と仲良く遊んでいた生活より、授業が終われば直ぐ家へ帰り、家事に勤しむ主婦へと徐々に変貌していく。
勿論父親の周平は愛妻を失った傷は中々癒えず色々と腑抜けてはいたが、それでも我が子に全ての家事を押し付けようとはしないが、如何せん亡き妻によって散々甘やかされていた所為なのか、見事なまでに家事は一切出来ない。
また隣家とは言えお互いのリビングを回廊で繋がっている義姉の美咲も何かと仕事の合間に美琴を手伝ってはくれるのだが、元々家事不適合者で尚且つ義妹に甘えていたと言う過去に付け加え、周平の経営する病院の看護部長となった為、未だ腑抜けている周平の尻を叩きつつ部長としての激務もあり結果、余り美琴の助けとはなってはいない。
そこへ折衷案として浮かび上がったのは家政婦さんを雇う事である。
しかし蓋を開けてみると現実は中々思うように運ばないのである。
家政婦と言ってもやはりそこはピンキリなのだ。
例えば若い女性が来ると必然的にイケオジな周平へ色目を使いあからさまに媚を売り、娘の美琴に対しては新しい母親宜しくと言ったところで馴れ馴れしい態度で接してくる。
かと言って年配の女性は性格的にも体力的にも難しく、これは……と思う人へ巡り合わない。
そうこうしている間にあっと言う間に一年が過ぎた頃にやっと条件や好み等々叶った家政婦さんは来たのだが、彼女の事情で半年しか勤められないと言われてしまい、そこで美琴はその家政婦さんに半年の間様々な家事を教えて貰い、これより先は自分がこの家を守ろうと決意した。
当然周平も美咲も美琴の考えに反対したのだが結局半年後予定通り家政婦が辞めた時、美琴のほぼほぼ完璧な家事能力を前にして、両者は何も言えなくなってしまった。
だが周平達は出来る事なら美琴にはもっと子供らしく皆と遊んで欲しいし、それに勉強にも勤しんでにも勤しんで貰いたいと何度も美琴を交えて話し合いを行った。
結果家事は美琴が無理をしない範囲でするという事に落ち着くけれども、実際中々どうして家事を甘く見てはいけない。
掃除や洗濯も毎日しなければ直ぐに山の様に貯まってしまうのだっっ。
そんな状態からのを片づけるよりも、毎日少しずつでもからのこなした方が余程高率的だという事を大人達は全く気付かなかった。
それはそれで問題なのだが、美琴は敢えて大人達にこれ以上言わなかった。
そう大人達は仕事は文句なしに出来るのに何故家事一切がが壊滅的にダメなのか……。
父親は兎も角美咲は結婚して柾と言う子供もいるのにそれでも家事は苦手だったらしい。
本当に亡くなった琴奈の存在は、美琴を含め父や伯母にとっても大きな存在だったという事。
そして幼かった美琴なりに父や伯母の手助けにもなりたいと思ったからこそ家事はそんなに苦痛でもなく、ほんの少し友人達と遊ぶ時間は減ったけれども、母が亡くなって明かりの消えた家より小さな明かりが再び灯ったのは、朝比奈家にとって新たなる小さなママの存在となった美琴の頑張りによるものなのだ。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる