上 下
17 / 20
第一章  出会い?

宣戦布告

しおりを挟む




 ソファーへ腰を下ろした私達は…いや私にこの坊やはそく私の腰や肩へ、そのたくましい腕をからめてくる――――けれどっっ!!!




 

 ぱちん――――っっ!!!




 私は思いっきり…渾身こんしんの力を込めてその腕を払った。



 それでもって思いっきり彼を睨みつけて言った。




如何どう言う事なのかしら…公爵?」


「愛しいアン…何を言うのかと思えば…本当に可愛いね、貴女は…」



 そう言ってこの坊やはたのしくて仕方ないとばかりにクスクスと笑いだす。



 勿論――――私は全く…1mmも楽しくなんかないわっっ!!



「何が可笑しいのかしら…公爵、私は怒っていますの…あ…あんな暴言を…国王であるお父様だけでなく、夜会に出席した貴族全員の前でお話ししていいモノではないでしょうっっ!!」



「暴言…?」



 公爵はいぶかしげに…その青灰色ブルーグレイの瞳をスッと細め、色香いろかの混じったテノール・スピントの声を2オクターブ程低くして呟く。




 でもそんな事には動じない…これは彼女の一生が掛っているのだから…。



「そう…あれは暴言でしょう? 私は貴方より何も申し込まれていないし、第一…昨日今日の面識めんしきだけで私は結婚を決めたりしません。まして貴方は…私より…年下…」



 つい…言いたくないのだ、って言葉が…自分はいている言う事をと認めるその言葉に抵抗を感じてしまう…のに、公爵は如何どうしてこの様な悪戯いたずらをしたのだろう…。



 そして最後には言葉がはっきりと言えなくなり、口の中でもごもごとしてしまう…。



「――――年下はイヤ?」


 自分の言葉に動揺してしまった彼女へすかさず公爵はその大きな両手で彼女の顔を包み込み、綺麗な顔を彼女の直ぐ近くまで近づけて問う。 




「――――――っっ!?」



 それをされたアンは見る見る間に顔を…いやその雪の様に白い肌を薄っすらとしゅに染め上げる。

 

「可愛い…そんなに私をあおって如何どうするの、アン?」



 公爵はそう言うと彼女の唇をペロンと、またしても彼の熱い舌で舐めてしまった。



 ついで彼女の朱に染まった頬や耳朶みみたぶももれなく舐められてしまった。



「可愛い…本当に可愛過ぎるね、そんなに赤くなってしまったら…私が止められなくなってしまう」


「な…何…何を言って、初めから貴方がそのような無体な事をなさる…ひゃあんっっ」



 またしてもぺろりと舐められてしまった。



 なんなの…この公爵ってば人の事本当に舐めてばっかりで、態度も舐められているけど…一体私をなんだと思っているのよっっ!!




 そんなに行き遅れをからかって楽しいのかしら…?




 行き遅れのユリの王女がそんなにダメな事なの?




 別に…ユリじゃないけど…。




 でも…幾ら行き遅れだって何でもされていい訳じゃあないわっっ!!




 私にも…女性にも意思というモノがあるのだからっっ!!



「お放しになって公爵」


「なにかな…愛しいアン」




 私は彼のその逞しい胸をぐいっと力一杯ちからいっぱい押して、少し距離を作る。




 それから深呼吸をして…居住いずまいを正してから口を開いた。



「私…今回の事は納得していません…ですが、貴方があのような場で公言こうげんなされたからには近い間に王室会議が開かれ、貴方の望むとおり私は公爵家へ嫁ぐ事になるでしょう」


「そうだね…そうするようにしたのは私だから…ね」



 公爵は悪びれもせずに言う。



「ですがこの婚姻は私の望むモノではない…という事をわかっていらっしゃるのでしょうか?」



「そうだね…今はまだ…かな」



 でも…今だけだよ…君は私のモノなのだから…。



「私…年下は好みではありません、それに他の女性とのお付き合いをされる行為もあまり好みません。それともう1つ…私は貴方を好ましいとは思えません…ですからこの婚姻はお互いが…っっ!!」



 ぐいっと私の両肩をつかむと、公爵はそのまま私を自身の胸の中へと押し付けたっっ!!



 まだお話している最中さなかだと言うのに…っっ!!



「――――言いたい事はこれで終わり…かな? 貴女がどの様に理由をつけられたとしても…婚姻を白紙にするつもりはないよ、貴女が不安に思われる事は理解をしているつもりだけど…年齢は…これはどうしようもないが、少なくとも私は貴女より色々な意味で経験も豊富だし…大人だとも思うのだけど…」


「ふ…不潔ですわっっ、そのようばかりおっしゃらないで下さいっっ」



 顔から火がきそうだわっっ!!



「それと――――私が愛しいと思う貴女と結婚するのだから、他の女性とは関係も清算し、貴女だけの夫となるよ。それと貴女は私を好まない…と、よろしい…では貴女が私を愛してくれるまで白い結婚といきますか」


 勿論…落とす自信はある――――。



「白い…結婚?」


「ええ…ある程度のスキンシップは必要ですが、貴女が私を好ましいと思って下さるまで…清いままでいましょう。勿論これは2人だけの秘密ですよ…アン」



 清いまま…そう…私が好きにならなければ何もしないと言う事…ね。

 

  そう…ではどちらが根をあげるか…これは勝負って事なのね。



 勿論私は自信があるわ、こんな坊やなんて好みではないもの。



 受けて立とうじゃないの…きっと私が勝ちに決まっている。



 私はにっこりとほほ笑みながら彼に宣戦布告をした。



「絶対に負けませんから…離婚となる日が待ち遠しいですわ」


「きっと貴女の方から私になびいてこられるでしょう…ね」



 絶対ないっっ!!



 かくてこれが私達のバトルの幕開けとなった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】双子の兄×幼馴染(男)のカプを横目で見ながらあたしは好きに生きます

ルコ
ファンタジー
 あたしの名前はカグラ、十五歳。一応次代の魔王候補だけどそんなにやる気はない。 だって双子の兄のショウが魔王になって、幼馴染のルイ(男)が王妃になるのが魔族の国にとって一番いいと思うから。 だってこの二人はあたし達が生まれた翌日からラブラブなんだもん。 そしてあたしはこの国の平和を守るため、今日も相棒の契約精霊、ホワイトライオンのミミと一緒にパトロールよ! まずはドラゴンを制圧しに行きますか! これは、魔族最強の母カグヤに強さも見た目も性格も激似の娘カグラが、魔王候補にもかかわらず好き勝手に無双する物語。 ーーーーーーーー ☆R18なBLで書いている、王子ちゃんシリーズの異世界編から派生した物語ですが、こちら単体でお読みいただけるようになっております。 ☆設定等はゆっるゆるです。寛大な心でお読み頂けると助かります。

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

おじ専女子の望まぬモテ期

蛭魔だるま
恋愛
おじさんが好きだ。声の低さ、包容力、溢れ出る魅力…。20歳を超えても彼氏のいない立川緋色は、新しく大学に来た松原宗一郎教授に一目惚れをする。彼のゼミに入り、おじさんをひたすら近くで見ていたいだけなのに、緋色に様々な邪魔が入ってくる。 表紙はノーコピーライトガール様からお借りしています。

処理中です...