上 下
14 / 20
第一章  出会い?

挨拶だけでなく…

しおりを挟む



「愛しいアン…ホールへ戻ったら私と1曲踊ってから…陛下へ挨拶をしよう。そうして暫く時間をつぶしてから自室へ戻ればいい。さすれば仲の良い事のアピールは出来る」


「それでは問題が解決いたしません――――な…何っっ!?」


「いけない子猫ちゃんだね…おおやけに仲がいい事と未婚の女性が男とひそやかにむつみあっているのでは、彼らに対する…ひいては両陛下方に対する印象がどのくらい違うと言うんだい?」



 公爵は私の耳元で甘くささやくと素早く私の頬をぺろりと…まるで飴でも舐めているかのように熱い舌で舐めあげる。



 そのたびに私の心臓はバクバクと大きな音が鳴っている。



 公爵へこの音を知られたくないと思えば思う程…音は益々ますます大きくなるし、自分の身体なのに…思うようにならない。



 公爵に舐められるのもイヤな筈なのに…困った事に身体は抵抗しないのだ。




 不思議…としか言いようがない。




 彼は魔術師なのだろう…か?



 まぁ…話はれてしまったけれど、確かに公にするのとしないのとでは随分と意味が違ってくる。



 それに彼は暫く…社交界での噂が落ち着くまでの間だけだと、言ってくれている。



 人の噂も75日と言うではないか…それさえ過ぎればこの坊やと何も関係なくなるのだ。



 その間はお父様も変なお見合いなんてモノは持ってこないだろうし、私も公爵には何も求めないから…彼は彼で好きに過ごすだろう。



 その間は誰にも邪魔されずに公務や慰問いもんに専念出来ると言うモノだわ。



 晴れて噂が消えれば公爵はまた…新しいお相手を見つけるのだろう。



 若くて美しい令嬢を…ね。



 そうして私はこんな事に心をわずらわされたりはしない…わ。



 だって…1人で生きて行くって決めているもの。




 そう…だから今だけよ…坊や。



 だけど…正直私は甘かったのだ。



 いな…配慮が足りなかったと言ってもいい…この公爵の口車にまんまと乗せられ、てのひらで1人…クルクルと躍っていたのだから…。




 そんな未来…いいえ物凄く近過ぎる未来の事よっっ!!



 それから私達は…いいえ何も知らない私は、馬鹿みたいに彼に促されるままホールへ…そして真ん中で優雅にダンスをたのしむ。



「軽やかなステップだね…私はまるで妖精と踊っている様だよ、アン」


「おめの言葉として受け取っておくわ…でも、本当の妖精はもっと若くて美しいわ」


「またそんな事を言う…貴女は自分の本当の美しさを理解出来ていないらしい」


「本当の事よ」



「そんな事ばかり言っているとまた…お仕置きしてしまいたくなるね」


「や…私は飴ではなくてよっっ!!」


「やれやれ…そんなとこも可愛らしいが流石にここでは…ね」



 お…恐ろしい、気を許したらまた飴の様に舐めてくるに違いないっっ!!



 暫くと言えど気を抜かないようにしなければ…。



 だけど…何処までもこの甘く…甘過ぎるくらいに視線をからめてくるこの青灰色ブルーグレイの瞳は、不思議と嫌いではない。



 そう思いながら予定通りにダンスが終わり…2人揃って国王であるお父様とお母様の元へと歩いていく。



 勿論周囲の雀さん達は聞き耳をしっかり立てている事は間違いない。



「アンフィリアン…何やら先程より話を耳にしたのだが…」


 お父様…苦虫にがむしを潰しているのか喜んでいるのか…どちらでも結構ですので、はっきりとしたお顔をなさって下さいませ、それでは国王としての威厳いげんもあったモノではありませんわよ。



 ――――でも…残念ですけど喜びではないのです。



 親不孝な娘でごめんなさい…。



 な~んて私はしおらしくお父様のお顔を見てしみじみと思いにふけっていたら、隣にいたこの坊やはとんでもない事をのたまってきたのだっっ!!



「実は私…ウィリアム・リチャード・フェンリーガより陛下にお願いの儀があり、こうしてまかり越しました」



「なんだね…フェンリーガ公爵」


「はい…この様な場で誠に申し訳ありませんが、ここにられる麗しき姫君…アンフィリアン・ユージェニー・レクストン様との結婚をお許し頂けないでしょうか?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

おじ専女子の望まぬモテ期

蛭魔だるま
恋愛
おじさんが好きだ。声の低さ、包容力、溢れ出る魅力…。20歳を超えても彼氏のいない立川緋色は、新しく大学に来た松原宗一郎教授に一目惚れをする。彼のゼミに入り、おじさんをひたすら近くで見ていたいだけなのに、緋色に様々な邪魔が入ってくる。 表紙はノーコピーライトガール様からお借りしています。

現実は乙女ゲーよりも奇なり

春賀 天(はるか てん)
恋愛
私ことーー 橘 珠里 高3。 乙女ゲームをなによりも愛する女。 なので『現実世界』の男には全く 興味はございません。 私が恋する男は乙女ゲーのイケメン オンリーでございます。 そんな乙女ゲーの為ならば、 『ズボラ女』と呼ばれようが 『妄想オタク女』と呼ばれようが、 我が道を貫き通す所存であります。 ーーが、高3になり、卒業まであと 一年と目前に差し迫った私に何故か、 弟の親友である奏の様子が変わって きたような?? しかも『現実世界』の男達も自分の 周りに近付いてきて、まるで乙女ゲー ありきのような展開に正直、大いに 困っております。 私が“モテ期”?? まさに“奇なり”であります。 あ、あり得ねーーー!! 【別サイト**~なろう(~読もう)さん でも掲載させて頂いてます**休止中】

処理中です...