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第一章  出会い?

乗馬の途中で

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 王宮を抜けて近くの森を駆け抜け…そして今はちょっと一休みの為、川の傍で彼女と2人きり…。



 こういう時…自分が王女でも何者でもない、ただのアンフィリアンという1人の人間になれた気がする。



 何時も王宮では…まぁ…生まれた所がそこなのだからして、息をするように相手の視線を受け流し…自室でさえも落ち着かない時がある。



 実に気の張る…心穏やかになる事のない毎日だ。


 だが…王族として生まれた者の宿命だと言われればそれだけかもしれない。



 確かに…精神的には窮屈だけど、生きていく上では自分は恵まれているのだから…。




 公務で国内外を慰問いもんしたり施設へ行ったりしてはいるものの、果たしてそれが何処までが国民の生活の安定に繋がっているのか…とふと考えてしま――――っっ!?






 ばちゃあぁぁ――――――んっっ!!







「キャ――――ごほっっ、だす…けっっ!!!」






 えっっ!?





 なにっっ!!





 何の事かわからずにいた彼女の目の前にある川の真ん中を見ると、5~6歳の少女が流されてきたっっ!!



「誰か…誰か助けてっっ!!」



 川の傍で流れゆく少女を追いかける様に10歳前後の少年が走ってきた。



 もう夕方…周囲に人影はいない…。



 このままでは少女がおぼれれ死んでしまうっっ!!



 アンは上着とブーツを手早く脱ぎ捨て…何の躊躇ためらいもなく、川の中へと入って行った。



 そう…助けられるものならば…躊躇う必要なんてないっっ!!



 川へ入ったら思った程深くはないが、やはり流れは早い。



「もう少し…頑張ってっっ!!」



 アンは一生懸命溺れかけている少女へと手を伸ばす。



 川岸の少年は泣きわめいていた。



 「――――沈まない…でっっ、もう…ごほっっ…もう少しだからっっ!!」



 だが…もう1歩彼女が踏み込んだ瞬間――――足元が泥ですくわれ体勢をくずしたが、少女の腕を掴む事が出来た。



 水中の中でアンは少女を引き寄せ抱きしめる。



 そして少女はその事に吃驚びっくりし、アンへ信じられない程の力でしがみ付いてきたっっ!?



「ちょ…ごほっっ、そんな…にしがみ付いたら…っっ!!」



 一緒に溺れてしまう~~~~~~っっ!!!




 それでも彼女は必死になって…もう無我夢中で岸の方へと近づいてきた―――――が、あと少しなのに…身体がいう事を聞いてくれないっっ!!



 何故ならシャツもショースも水を含み…それが一層彼女のかせとなり進行をはばむ。



 少女が呼吸出来るように頭を持ち上げると、返って溺れた恐怖感で少女はアンの頭を沈める行動となる。



 アンももう…これまでか…と観念しかけた時――――、不意にそれまであった少女の重みはなくなり…アンの腕も誰かに引っ張られ、川からあがってこられた。



「ごぼっっ…げほっっ!!」



 多少水を呑んでしまったのだろう…アンはその場で咳き込んでしまった。




「大丈夫かい? 全くなんて無茶をするんだっっ!! 幾ら母親だからといって2人共死ぬ気ではなかっただろうね?」






「―――――…っっ!?」





 はい?





 今なんて…おっしゃいました?





 は…私がこの少女の…母親~~~~~~~~~っっ!?





「返事も出来ないのかい?」



 誰だ…この無礼きわまりのない奴はっっ!!



 仮にも1国の王女に対して…しかも未婚の女性に対してその言い草はないであろうっっ!!




 アンははらわたが煮えくるような怒りを覚えつつも、まだ声を発する事が出来なかった。



 だけど…腹は立つけれどまず…溺れた少女の方が気になるっっ!!



「げほっっ…大…丈夫なの?」




 傍へ寄ってみると少女の水を呑んだけど無事な様子だった。



 この無礼極まりない男の従者だろう…か、少女を介抱してくれていた。



 そしてその少女の兄だろう…少年がアンの元へ駆け寄り礼を言う。




「ありがとうお姉さん、お姉さんのお陰で…ルーラが無事だった…」



 最後は泣きながらだったけど…。



「気にしなくていいわ、良かったわね。ちゃんとお母さんへ報告してお医者様へ診て貰ってね」



 と言うが早いか…子供達の帰りを心配した母親らしき人物が、此方こちらへ駆け寄って来た。



「ルーラ…リオンっっ、帰りが遅いと思ったらっっ!!」




「ごめんよぉ母ちゃんっっ、俺達魚を取ろうとして…そしたらルーラが川に落っこちたんだっっ」



 少女も母親の姿を見て安心したのか、2人とも抱きついて泣いていた。



「ありがとう御座います…本当にありがとう御座います」



 それから何度も母親はアンへお礼を言い…やがて3人で仲良く帰って行った。







「あ…いや…その…」



 見送るアンの後ろからバツの悪そうな声が聞こえたのは言うまでもない。



「――――何か御用…かしら?」










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