3 / 20
第一章 出会い?
乗馬の途中で
しおりを挟む王宮を抜けて近くの森を駆け抜け…そして今はちょっと一休みの為、川の傍で彼女と2人きり…。
こういう時…自分が王女でも何者でもない、ただのアンフィリアンという1人の人間になれた気がする。
何時も王宮では…まぁ…生まれた所がそこなのだからして、息をするように相手の視線を受け流し…自室でさえも落ち着かない時がある。
実に気の張る…心穏やかになる事のない毎日だ。
だが…王族として生まれた者の宿命だと言われればそれだけかもしれない。
確かに…精神的には窮屈だけど、生きていく上では自分は恵まれているのだから…。
公務で国内外を慰問したり施設へ行ったりしてはいるものの、果たしてそれが何処までが国民の生活の安定に繋がっているのか…とふと考えてしま――――っっ!?
ばちゃあぁぁ――――――んっっ!!
「キャ――――ごほっっ、だす…けっっ!!!」
えっっ!?
なにっっ!!
何の事かわからずにいた彼女の目の前にある川の真ん中を見ると、5~6歳の少女が流されてきたっっ!!
「誰か…誰か助けてっっ!!」
川の傍で流れゆく少女を追いかける様に10歳前後の少年が走ってきた。
もう夕方…周囲に人影はいない…。
このままでは少女が溺れ死んでしまうっっ!!
アンは上着とブーツを手早く脱ぎ捨て…何の躊躇いもなく、川の中へと入って行った。
そう…助けられるものならば…躊躇う必要なんてないっっ!!
川へ入ったら思った程深くはないが、やはり流れは早い。
「もう少し…頑張ってっっ!!」
アンは一生懸命溺れかけている少女へと手を伸ばす。
川岸の少年は泣き喚いていた。
「――――沈まない…でっっ、もう…ごほっっ…もう少しだからっっ!!」
だが…もう1歩彼女が踏み込んだ瞬間――――足元が泥で掬われ体勢を崩したが、少女の腕を掴む事が出来た。
水中の中でアンは少女を引き寄せ抱きしめる。
そして少女はその事に吃驚し、アンへ信じられない程の力でしがみ付いてきたっっ!?
「ちょ…ごほっっ、そんな…にしがみ付いたら…っっ!!」
一緒に溺れてしまう~~~~~~っっ!!!
それでも彼女は必死になって…もう無我夢中で岸の方へと近づいてきた―――――が、あと少しなのに…身体がいう事を聞いてくれないっっ!!
何故ならシャツもショースも水を含み…それが一層彼女の枷となり進行を阻む。
少女が呼吸出来るように頭を持ち上げると、返って溺れた恐怖感で少女はアンの頭を沈める行動となる。
アンももう…これまでか…と観念しかけた時――――、不意にそれまであった少女の重みはなくなり…アンの腕も誰かに引っ張られ、川からあがってこられた。
「ごぼっっ…げほっっ!!」
多少水を呑んでしまったのだろう…アンはその場で咳き込んでしまった。
「大丈夫かい? 全くなんて無茶をするんだっっ!! 幾ら母親だからといって2人共死ぬ気ではなかっただろうね?」
「―――――…っっ!?」
はい?
今なんて…仰いました?
は…私がこの少女の…母親~~~~~~~~~っっ!?
「返事も出来ないのかい?」
誰だ…この無礼極りのない奴はっっ!!
仮にも1国の王女に対して…しかも未婚の女性に対してその言い草はないであろうっっ!!
アンは腸が煮えくるような怒りを覚えつつも、まだ声を発する事が出来なかった。
だけど…腹は立つけれどまず…溺れた少女の方が気になるっっ!!
「げほっっ…大…丈夫なの?」
傍へ寄ってみると少女の水を呑んだけど無事な様子だった。
この無礼極まりない男の従者だろう…か、少女を介抱してくれていた。
そしてその少女の兄だろう…少年がアンの元へ駆け寄り礼を言う。
「ありがとうお姉さん、お姉さんのお陰で…ルーラが無事だった…」
最後は泣きながらだったけど…。
「気にしなくていいわ、良かったわね。ちゃんとお母さんへ報告してお医者様へ診て貰ってね」
と言うが早いか…子供達の帰りを心配した母親らしき人物が、此方へ駆け寄って来た。
「ルーラ…リオンっっ、帰りが遅いと思ったらっっ!!」
「ごめんよぉ母ちゃんっっ、俺達魚を取ろうとして…そしたらルーラが川に落っこちたんだっっ」
少女も母親の姿を見て安心したのか、2人とも抱きついて泣いていた。
「ありがとう御座います…本当にありがとう御座います」
それから何度も母親はアンへお礼を言い…やがて3人で仲良く帰って行った。
「あ…いや…その…」
見送るアンの後ろからバツの悪そうな声が聞こえたのは言うまでもない。
「――――何か御用…かしら?」
0
お気に入りに追加
476
あなたにおすすめの小説
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる