上 下
2 / 20
第一章  出会い?

約束

しおりを挟む

「ねぇ…アン…アン叔母様ってば聞いていらっしゃいますの?」



「――――っ、御免なさいルーレシア」



 少し考え事をしていたものだから…とアンフィリアンは愛しいめいへ謝罪する。



「何を…今夜の舞踏会のコトでも考えていらっしゃったの?」



 ふぅ…と溜息ためいき1ついてから、にこりとルーレシアへ微笑む。



「そう…ね、今夜も出席する様にお父様から命令れされているものだから…つい…ね」


「アンが夜会を嫌がってらっしゃるのはよくわかってます…でも今夜だけはどうしても来て欲しいのっっ」



 そう…今夜は可愛いルーレシアの社交界デビューの舞踏会…肉親として喜ばしい事なの…だけど、自身の身の上を置き換えるれば諸手もろてを挙げて喜んでもいられない。



 だけどもう…慣れている、行き遅れの王女なんてささやかれる事には…。



 可愛い姪の為に今夜は何としても出席しなければならない事も…。



「大丈夫よ、じゃあ夜会で会いましょう。ほら…早く支度をしなければ…今夜は貴女が主役なのよ。今から完璧に準備をして…広間で美しい貴女を見せて頂戴な。でも…気をつけるのよ、ろくでもない狼達が貴女を狙っているのだから…何かあれば私の傍へいらっしゃいな」


「ええ…きっとアンの傍を離れたりしないわ、私…如何どうしてアンが男性にモテないのかわかりません。いいえ…そうアンは私達だけの大切な存在なのですもの。世の男性方にアンを取られたく等ありませわっっ」



 そう言ってルーレシアはアンの胸に顔をうずめてきた。



 アンの豊満な胸はとても気持ち良く…胸に限らず彼女の持つ肌は触れると吸いつくような心地の良いもので、同性達でさえ彼女の肌に憧れる者は数知れず。



 そしてこっそりと彼女の知らない所ではファンクラブも作られているとか…?



 暫くして十分彼女を堪能たんのうしたルーレシアは侍女達に促され、部屋を後にした。



「ルーレシア様は益々ますますお美しくおなりになられましたね…アン様」


「ええ…本当に。だけど今夜はそのルーレシアを品定めに来る狼達がはっきり言ってウザいわ。王族だから仕方ないのかもしれない…だけど、あのにはどうか幸せになって欲しいもの」



 自分は結婚出来なかったけど…でも、だからと言って今が不幸ではない。

 

 まぁ…今でも結婚結婚と五月蠅うるさい両親と兄がイヤなだけで、後は公務もきちんとこなし…お友達とも交流を深めたり…何より夫に束縛されない自由がある。



 そう…なにも結婚こそが女性の幸せではない…筈。



 う~んでも…少しは憧れ…というモノはあるけれど、今は深くは考えていない。



 どんなものにも幸せはある筈なのだから…。



 そう考えて彼女はソファーから立ち上がり衣裳部屋へと移動する。



「どちらへお出かけになられるのですか?」


 これから夜会の準備がありますのに…と、侍女のクレアが吃驚びっくりしている。



「ちょっと走ってくるわ…気分転換してからでないと、どうも…ね」



 それに今夜も主役ではないのだから…、顔を出すだけならば少しくらい遅くても問題はないでしょう…と乗馬服へと着替えて部屋を後にした。



 残されたクレアは仕方ないとばかりに、主人が帰って直ぐ仕度が整えられる様に準備をする事にした。




「アイザック」


 そう呼ばれて振り返ったのは王室付き馬房ばぼう係のやや白髪交じりの男性だった。



「アン様…シェーラザードですか?」


「ええ…少し気分転換にね、最近公務も忙しかったから彼女の相手もしてられなかったし…ね」



 シェーラザードは彼女の愛馬だ。



 真っ白な身体に金色の美しいたてがみをしている。



「シェーラ…久しぶり元気にしていたかしら? 御免なさいね…忙しくて中々一緒にいてられなくて…」


 それでもシェーラザードは怒る訳でもなく、アンに甘える様自身の身体をこすりつけてくる。

 

 アンもそんな彼女が愛しかった。



「じゃあ行ってくるわね」


 
 そう言ってシェーラへと慣れた手付きでまたがる。



「誰か供の者は…っっ」



 仮にも彼女は1国の王女なのだから…と、アイザックは心配するけどもアンはそんな者必要ない…と勢いよく掛けて行った。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]勇者の旅の裏側で

八月森
ファンタジー
神官の少女リュイスは、神殿から預かったある依頼と共に冒険者の宿〈剣の継承亭〉を訪れ、そこで、店内の喧騒の中で一人眠っていた女剣士アレニエと出会う。                                      起き抜けに暴漢を叩きのめしたアレニエに衝撃を受けたリュイスは、衝動のままに懇願する。               「私と一緒に……勇者さまを助けてください!」                                        「………………はい?」                                                   『旅半ばで魔王の側近に襲われ、命を落とす』と予見された勇者を、陰から救い出す。それが、リュイスの持ち込んだ依頼だった。                                                       依頼を受諾したアレニエはリュイスと共に、勇者死亡予定現場に向かって旅立つ。                             旅を通じて、彼女たちは少しずつその距離を縮めていく。                                          しかし二人は、お互いに、人には言えない秘密を抱えていた。                                         人々の希望の象徴として、表舞台を歩む勇者の旅路。その陰に、一組の剣士と神官の姿が見え隠れしていたことは、あまり知られていない。                                                これは二人の少女が、勇者の旅を裏側で支えながら、自身の居場所を見つける物語。                            ・1章には勇者は出てきません。                                                     ・本編の視点は基本的にアレニエかリュイス。その他のキャラ視点の場合は幕間になります。                    ・短い場面転換は―――― 長い場面転換は*** 視点切替は◆◇◆◇◆ で区切っています。                    ・小説家になろう、カクヨム、ハーメルンにも掲載しています。

秘密 〜官能短編集〜

槙璃人
恋愛
不定期に更新していく官能小説です。 まだまだ下手なので優しい目で見てくれればうれしいです。 小さなことでもいいので感想くれたら喜びます。 こここうしたらいいんじゃない?などもお願いします。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

僕だけ個別で異世界召喚

kamine
ファンタジー
妖怪の王、妖狐の「健」と英雄の魔導師「音子」の間に産まれた天音。産まれた時から力が強く、天音の器が小さすぎて力が漏れ出ていた。両親は天音自身のために力と器を切り離し、力は異世界で封印、器である天音は地球に飛ばされた。地球で13年過ごした天音の器は力と対等なものになり異世界に勇者として召喚される生徒のみんなに混ざって、学校に遅刻してきた天音は個別で召喚される。召喚された時上手く生徒に紛れることができ安心した天音だが、手違いがあり、魔の森へと生徒全員召喚され魔物に遭遇する。召喚されるさい実の両親にあって色々聞かされていた天音は生徒の中で唯一自分の力のことを知っていた。戦う手段のない生徒の仲間を守るため魔物を引きつけるべく無理やり力を引っ張り出し駆け出す。数時間魔物の相手をしたが力が足りなく死が目の前まで迫っていたところをお爺さんとお婆さんに助けられ事情を知った2人は天音を鍛えることに。それから2年、力を得た天音はさらに物事を学ぶべく学園に行く。そこで意外な再開をすることに.....学園で色々学び、色んなことに巻き込まれる天音の物語である。 ハーレムでちょっとヤンデレになるかも、、、? 設定を若干修正....! 内容修正中!

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

婚約者すらいない私に、離縁状が届いたのですが・・・・・・。

夢草 蝶
恋愛
 侯爵家の末姫で、人付き合いが好きではないシェーラは、邸の敷地から出ることなく過ごしていた。  そのため、当然婚約者もいない。  なのにある日、何故かシェーラ宛に離縁状が届く。  差出人の名前に覚えのなかったシェーラは、間違いだろうとその離縁状を燃やしてしまう。  すると後日、見知らぬ男が怒りの形相で邸に押し掛けてきて──?

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...