上 下
1 / 20

序章  (改)

しおりを挟む

 私…アンフィリアン・ユージェニー・レクストンもう直ぐ40歳になる。



 一応このレクストン王国第一王女という肩書等というものがある。



 だけど…その肩書は一体何になると言うのだろう…。



 いや…この肩書こそ今は私の人生において、余計なお荷物となっているのだから…。


 この肩書がなかったら…私はもう少し自由でいられたかもしれない。


 それに結婚なんてモノに縛られる事もなかったかもしれない。



 そう…全てはこの王女という肩書が私の人生を邪魔しているのだから…。




 私は自室のソファーに腰掛けてふぅーっと深い溜息ためいきをつく。



 今日もまた1日が終わろうとしている――――という事は、40歳まであと…。


 あ゛あ゛……考えたくもないわね。


 大体だいたいこの国の女性が皆…晩婚ばんこんなのではない。



 通常女性の結婚適齢期は大体何処の国でも18歳~23歳くらいまで。



 誰が如何どうしてそう決めたのかは謎だけど…。



 勿論18歳以下なんてのもざらだし…むしろそっちの方が多いのかって感じだわ。



 何処の世界…そしていつの時代も、男性は若くて可愛いを好むと言う。



 だから早婚そうこんしとされているのかもしれないわね、とんだ男尊女卑だんそんじょひ…だわ。




 だけど…私も昔…そう昔ね、そんな若い頃が…あったわね。



 現在はその結婚適齢期よりも折り返している真っ最中だけど…まるでマラソンランナーかっていうのっっ!!



 だけど我がレクストン王国は私が結婚しなくても問題はないわ。



 だって4つ年上のお兄様…そうこの国の王太子には正妃もいて、子供もちゃんといる。



 王子と王女…つまり私の甥と姪だ。



 その子達も今は大きくなって姪は結婚適齢期の18歳となり、今は彼女を何処へ嫁がせるのか…とお兄様とお義姉様の悩みの種となっている。



 王族の結婚なるモノとは本人の自由で決められる事なんて殆ど…全くと言っていい程ない。


 
 きっと国益に通じる何処かの王族か公爵家等に、私の愛する姪は嫁がされるのだろう。



 私の例があるから…彼女は幼い頃から両親へ口答くちごたえ等しない様に厳しくしつけけられた。


 
 私のいい被害者だわね…その点は。



 でも彼女…姪のルーレシアは叔母おばの私から見ても、お義姉様譲りの美しい顔立ちにキュートな唇…それがまたレクストン王家より受け継がれる青みがかった濡れた様に艶やかな黒髪に、アメジストを思わせる紫に輝く瞳。



 また…やや小振りな胸も形よく…そして何より細くくびれた腰。



 ほっそりとした華奢きゃしゃで可憐な美少女なのだ。



 同じ王家の出身で同じ材料DNAなのに…こうも姿形が違うといっそ清々すがすがしい。




 そして今夜はその姪のルーレシアのデビュッタントの舞踏会。



 国中の貴族や他国方も王族方がこれでもかとやってくる。



 そして私はまた溜息を漏らす。



 10人並みの容姿に体型もめちゃくちゃ太ってはいないが、どうみてもふくよかだわ…ね。



 ホント…若い頃はそれなりにお見合いも来ていたわ。



 でも…誰も私を見て…選んでなかったの、私というフィルターを通して豊かなレクストンを見ていたのよね。



 だからお父様やお母様が持ってきたお見合いの全てをことごとく断っていた。



 上っ面だけの私を見て…そしてあわよくば我がレクストンを手に入れようなんて、虎視眈々こしたんたんと狙っている男性へ嫁ぐ気なんか起こりっこないのよ。




 幾ら王族の務めだとしても…不思議と私にはそれがわかってしまって、何だかんだと理由つけては結婚に応じなかった。


 嘆く家族と国民には申し訳ない…とは思うのだけど…。



 それでも時々ふと願ってしまう。



 何時か…私の事を真剣に愛して結婚を申し込んでくれる男性が現れる事を…。



 でも…世の中そんなに甘くはないわね、だってもう直ぐ40歳。



 こんなおばさん…誰が貰ってくれると言うのだろう。



 確かにヨボヨボのヒヒジジイだったらあるかもしれない…だけど、初めての結婚でそれはないだろうっっ!!



 私だって…選ぶ権利はあるのだから…。



 それにもう…私の事は周辺の国でも有名なんだよね…。



 行き遅れの王女って。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

生贄

竹輪
恋愛
十年間王女の身代わりをしてきたリラに命令が下る。 曰く、自分の代わりに処女を散らして来いと……。 **ムーンライトノベルズにも掲載しています

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

旦那様は大変忙しいお方なのです

あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。 しかし、その当人が結婚式に現れません。 侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」 呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。 相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。 我慢の限界が――来ました。 そちらがその気ならこちらにも考えがあります。 さあ。腕が鳴りますよ! ※視点がころころ変わります。 ※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

処理中です...