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番外編
番外編 アイザックの苦い過去 9
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アイザックが男爵家に着いたのは翌朝だった。
門は一応閉まってはいたがそれは何時もの事であり、そもそもこの屋敷に門番はいないのだ。
だから勝手知ったる何とかでアイザックは門を開け屋敷へと入って行った。
コンコン……。
――――玄関の扉を叩いて10分が経つ。
だが誰も出てくる事はない。
幾ら使用人が少なくとも何時もなら直ぐに応対をしてくれるというのに、ただ何故か今日は誰も出ないというより何だか屋敷全体に活気というか生活しているという様子が感じられないのだ。
それが疲れたアイザックを余計に苛立たせる。
だから彼は鍵が掛けられているかもしれないと思いながらもノブを押す――――ぎいぃぃぃと古い木の軋む音と共に扉はゆっくりと開かれる。
鍵は掛けられていなかった。
その結果余計に彼を苛立たせるのではなく逆に氷点下まで冷静にさせたのだ。
何か可笑しい……。
人の気配が感じられない。
ディアは?
何時も僕が訪問するとあの明るい笑顔で出迎えてくれた彼女は何処にいる!?
嫌な予感しかしない。
もう朝の7時だというのに男爵一家が目覚めていないのは兎も角として使用人達は朝の準備で走り回っている時間なのだっっ!!
なのに廊下いや、屋敷全体に灯りが1つも点いていなくて重いカーテンも閉め切ったままで薄暗いのだ。
カーテンの隙間から日差しが差し込む程度なのだ。
これは如何考えても尋常ではないっっ!!
彼は先ず何時も通されている応接間へと足早に向かうが誰もいない。
次に厨房そして執務室、目の前にある扉という扉を開けていくが誰一人として存在しない。
まるで何かのホラー映画を彷彿とさせるものであった。
そして3階の男爵家族達の居住スペースへと向かい先ず最初にこの家で一番無事を願う存在――――一度だけ訪れたクラウディアの居室へと扉を開けるが蛻の殻だった。
然ももう何日?
否それ以上だろうか、ベッドを、この部屋を使った形跡さえないのだっっ!!
アイザックは胸が、心臓が抉り取られそうな痛みを感じつつも尚も重い身体を引き摺り別の部屋の扉を次々に開けていくが誰もいない。
そうして最後の扉――――きっと男爵夫妻の居室だろう、他の扉とは違い凝った造りが成されていたのだ。
その扉のノブへと彼は手を掛けゆっくり回すと――――っっ!?
「うぐぅっっ!?」
突然鼻孔より頭の天辺まで突き抜けその臭いで思わず吐き気と涙まで滲み出そうなくらいの強烈な腐敗臭が漂ってきたのだ。
それはアイザックが生まれて初めて嗅いだものであった。
後にも先にも強烈過ぎる臭いだけは何時までも忘れられない。
そしてその臭いを我慢して最初に目にしたのは薄暗い部屋に何かソファーらしきものに何かがあった。
恐らく臭いの元らしい。
彼は息を止め大股で歩きカーテンを開けて窓を開けてから振り返ると――――っっ!?
「ち……義父上……っっ!?」
ソファーにモノらしいもの――――それは半ミイラ化したクラウディアの父である男爵の見慣れた服を着ていた遺体だった。
首を中心に前胸部には赤黒い、いやもう黒と言っていいだろう広範囲に染みが付着している。
恐らくは頸動脈を誰かに切り付けられ出血多量の失血死と予想出来た。
「義父上っ、如何してこんな事に……クラウディアと義母上は如何なさったのですかっっ!!」
アイザックは遣り切れない表情で半ミイラ化した男爵へ力なく問い掛ける。
一体俺のいない間に何がこの一家に起こったというのだっっ!!
そしてどうして義父上以外誰もいないのだっっ!!
ディアっ、貴女は今どこでどうしているのだっっ!!
アイザックはその場で崩れる様に座り込みそして拳で思いっきり床を叩いた。
門は一応閉まってはいたがそれは何時もの事であり、そもそもこの屋敷に門番はいないのだ。
だから勝手知ったる何とかでアイザックは門を開け屋敷へと入って行った。
コンコン……。
――――玄関の扉を叩いて10分が経つ。
だが誰も出てくる事はない。
幾ら使用人が少なくとも何時もなら直ぐに応対をしてくれるというのに、ただ何故か今日は誰も出ないというより何だか屋敷全体に活気というか生活しているという様子が感じられないのだ。
それが疲れたアイザックを余計に苛立たせる。
だから彼は鍵が掛けられているかもしれないと思いながらもノブを押す――――ぎいぃぃぃと古い木の軋む音と共に扉はゆっくりと開かれる。
鍵は掛けられていなかった。
その結果余計に彼を苛立たせるのではなく逆に氷点下まで冷静にさせたのだ。
何か可笑しい……。
人の気配が感じられない。
ディアは?
何時も僕が訪問するとあの明るい笑顔で出迎えてくれた彼女は何処にいる!?
嫌な予感しかしない。
もう朝の7時だというのに男爵一家が目覚めていないのは兎も角として使用人達は朝の準備で走り回っている時間なのだっっ!!
なのに廊下いや、屋敷全体に灯りが1つも点いていなくて重いカーテンも閉め切ったままで薄暗いのだ。
カーテンの隙間から日差しが差し込む程度なのだ。
これは如何考えても尋常ではないっっ!!
彼は先ず何時も通されている応接間へと足早に向かうが誰もいない。
次に厨房そして執務室、目の前にある扉という扉を開けていくが誰一人として存在しない。
まるで何かのホラー映画を彷彿とさせるものであった。
そして3階の男爵家族達の居住スペースへと向かい先ず最初にこの家で一番無事を願う存在――――一度だけ訪れたクラウディアの居室へと扉を開けるが蛻の殻だった。
然ももう何日?
否それ以上だろうか、ベッドを、この部屋を使った形跡さえないのだっっ!!
アイザックは胸が、心臓が抉り取られそうな痛みを感じつつも尚も重い身体を引き摺り別の部屋の扉を次々に開けていくが誰もいない。
そうして最後の扉――――きっと男爵夫妻の居室だろう、他の扉とは違い凝った造りが成されていたのだ。
その扉のノブへと彼は手を掛けゆっくり回すと――――っっ!?
「うぐぅっっ!?」
突然鼻孔より頭の天辺まで突き抜けその臭いで思わず吐き気と涙まで滲み出そうなくらいの強烈な腐敗臭が漂ってきたのだ。
それはアイザックが生まれて初めて嗅いだものであった。
後にも先にも強烈過ぎる臭いだけは何時までも忘れられない。
そしてその臭いを我慢して最初に目にしたのは薄暗い部屋に何かソファーらしきものに何かがあった。
恐らく臭いの元らしい。
彼は息を止め大股で歩きカーテンを開けて窓を開けてから振り返ると――――っっ!?
「ち……義父上……っっ!?」
ソファーにモノらしいもの――――それは半ミイラ化したクラウディアの父である男爵の見慣れた服を着ていた遺体だった。
首を中心に前胸部には赤黒い、いやもう黒と言っていいだろう広範囲に染みが付着している。
恐らくは頸動脈を誰かに切り付けられ出血多量の失血死と予想出来た。
「義父上っ、如何してこんな事に……クラウディアと義母上は如何なさったのですかっっ!!」
アイザックは遣り切れない表情で半ミイラ化した男爵へ力なく問い掛ける。
一体俺のいない間に何がこの一家に起こったというのだっっ!!
そしてどうして義父上以外誰もいないのだっっ!!
ディアっ、貴女は今どこでどうしているのだっっ!!
アイザックはその場で崩れる様に座り込みそして拳で思いっきり床を叩いた。
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