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第三章  お城からのお触れと今更ながらに気づく諸事情

3  今更的な世界背景やその他諸々とは言ってもやはり物語は進行しているようです  天音Side  Ⅲ

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 物語が進むと共にお母様の心情の変化。

 これがね、うん何と言いますか兎に角エラをと呼ぶようになったと同時に、彼女を使用人へと貶めたのである。
 勿論私達にもシンデレラ呼びを強要したのは言うまでもない。
 
 でもね、今更エラからシンデレラってなんか違和感があるし、第一シンデレラって名前の意味は灰塗れのエラシンダーエラからきているのだもの。
 当然そこには物語の強制力って、抑々そもそも異世界にそんな強制力なんてものがあるのかも最近怪しいじゃないかって思うのよ。

 確かにこれまでの登場人物は物語と同じ名前だったけれどもっ、性格は思いっきり違うと私はそう断言するっっ。

 何故なら発行の美少女でもあるシンデレラがアレじゃあね。
 流石の私でも疑ってしまいたくなるのは否めないと思う。
 そうあれはお母様の命令で使用人が全て姿を消してしまった日より始まったの。


「嘘ぉ、何でっ、いやいや第一何で私がこんな仕事をしなきゃあいけないって言うのよっっ!!」

 地下より聞こえてくるのはエラの悲鳴と言うより怒気を孕んだ叫び声と共にエラ激しく割れているのだろう数多なるお皿達の断末魔。

「お、お母様私……エラが心配なので様子を見てきますわ」

 正直この時はエラが余りにも可哀想だと思ったの。
 だって物語の強制力か何だかわからないけれども、昨夜までこの屋敷で蝶よ花よと大切に育てられたお嬢様のエラがよ、一晩明ければボロボロのお仕着せに今までした事もないお掃除やお料理、その他諸々の家事一切をまだ成人にも満たない彼女が一人でこなすなんて、幾ら物語の進行の為だけとは言えこれってめっちゃ酷いよね。

 それにエラが叫ぶ度にお皿達が何枚も割れていくのも忍びないなのにお母様と言えば――――。

「私の娘は貴女とアナスタシアの二人だけです。シンデレラは私の娘ではありません。シンデレラは朝から晩まで屋敷の家事一切をさせなければいけないのです。そうしなければ……それがあの……」
「お母・・・…様?」

 何時もの紫水晶の様にキラキラと美しい瞳をしたお母様ではなく、なんだか上手く言えない……けれども今までに一度も見た事のない、虚ろな表情そして濁ったような紫の光のない瞳をしたまま、『私の娘は貴女とアナスタシア――――』とはおっしゃってはいても決して私達の顔を、瞳を見て何時もの様にお話をされる事のないお母様。
 ただただ呪文を繰り返す様にぶつぶつとお話をされるかと思えば、また暫くの間お部屋へと籠られる日々が続く。

 当然私もアナもそんなお母様を心配したのと同時に何とも言えない不安に駆られてしまうの。
 だからお部屋へ籠られるお母様の資質へ何度も姉妹揃って足を運ぶのだけれども、姉妹お母様の私室への出入りを許されているのはエラただ一人だけ。 

 そうして時折エラがお母様のエラ私室にいる頃に決まって頃彼女を酷く叱責するお母様の怒りに満声と、エラの悲鳴が聞こえてくる。
 アナと二人で直ぐにお母様の資質へと向かえば、そこには何かの液体でびしょびしょになって泣いているエラの姿があった。

「「どうしたのエラっっ⁉」」
「いいえ何もありませんお義姉様」
「何もなくはないでしょっ、さあ早く身体を洗って、髪もよ。それから洋服も着替えなきゃ風邪を引いてしまうわっっ」
「そ、そうよエラっ、ドリゼラ姉様の仰る通りよ!! だけど何故何時もお優しいお母様がどうして……」

 それは私も思う所はある。
 幾ら物語の強制力とは言ってもこれは余りにも酷い。
 抑々物語の強制力って今の所お母様の行動だけであって私は兎も角アナは何も変わって――――いやいや今はそんな事なんてどうでもいいっっ。

 考え事よりも今は先ずスープか紅茶か何かの液体らしいモノで汚れた濡れ鼠のエラを何とかしなければっっ。
 
 私達は直ぐにエラを連れて浴室へと向かった。
 そして私達三人は使用人達の達有難さを身を以って思い知ってしまった。
 
 そう、この世界に湯沸かし器なんてものは存在してはいなかったのである。

 お風呂に入りたければ地下よりお湯を持ってこなければいけない。
 それも浴槽にお湯が溜まるまで何回もである。

「「「嘘っっ⁉」」」

 誰が最初に発言をしたのかなんてこの際どうでもいい。
 そして非力なお嬢様三人は浴室でカチコチに固まってしまった。
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