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第二章  こうして物語はこうしてゆっくりとでも確実に動いていく?

9  悪魔の甘い囁き  エラSide  Ⅳ

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 それから――――とは言ってもほんの暫くの間のエドモンは実に大人しかったわ。

 まあ誰でも隠して置きたい暫く秘密ってあるものよね。
 エドモンにとってのアレは、きっと私に、いやいや誰一人として絶対に気付かれたくなかったでしょうね。
 でもそれこそお馬鹿さんよね。
 
 昔から幼い私へ異常な執着を示す辺り、私でなくとも誰だって気付くでしょう。

 兎に角こんなウザいおじさんはさっさとポイよ、ポイ!!

 ゴミは速やか且つ迅速に処分するに限る。
 だから私は茫然自失中のエドモンの前で堂々と紅茶の中に妖精の誘惑を入れて、おまけにしっかりと掻き混ぜて溶かしたの。

 そうして私が促すままに彼はそれを静かに飲み干した。
 ちゃんとごっくんと嚥下を確認したのは当たり前。
 
「ではエドモン、これから私の言う事をよく聞くのよ。じゃあ――――」

 私は次々と彼へ命令を下す。
 そして操り人形と化したエドモンはただ静かに命令を遂行する。
 その命令とは……。


 最初に何時までもうじうじと鬱陶しく泣き暮らすトレメイン夫人へ妖精の誘惑入りのお茶を必ず飲ませる事。

 方法は問わない、ただしっかりと彼女の胃袋へ納めればいいと言ったの。
 暫くすれば妖精の誘惑を飲んだらしいトレメイン夫人とエドモンが私の部屋へとやって来たわ。

 ふふん、そんな彼らの虚ろな表情ったらない。
 見ていてめっちゃ気分が良いんだもん。
 だってこの女は私のお父様を盗った?
 あー盗ったじゃあないか、アレは私がお膳立てしたんだもんね。
 まあ確かに予想外の事は起こったのだけれどさ。

「じゃあずお義母様は使用人全てを解雇しなさい。それから私をあなた達親子の使用人にするとあの娘達へ伝えるの。勿論私と二人きりの時の立場は私が上、それは当然だからね。でも、あのドリゼラ達の前ではしっかりと意地悪な義母を演じなさい」
「はい、承りましたわエラ様」

 私の命令を遂行するべく部屋を後にしようとするトレメイン夫人を私は再び呼びとめる。

「ああそれからね、少ししたら、そうね私が暖炉の傍で寝転がった時に、私の名前を変えなさい。エレオノーラから灰塗れのエラシンダーエラと呼ぶのよ」

 トレメイン夫人が去った後は残ったエドモンへ次の命令を下したわ。

 それはあの鈍間のろまなアナスタシアにも妖精の誘惑を飲ませる事。
 また幾ら女主人の命令だからと言って、素直に全ての使用人達が言う事を聞くとは思えない。
 だから彼にはその補佐を命じたわ。
 何としても後今夜中に使用人全てを屋敷より追い出さなければいけない。

 あ、ドリゼラにもこれを飲ませれば問題なかったんじゃあ……あ゛あ゛、駄目だわ。
 もうアナスタシアの分しか残ってはいない。
 仕方がないからそれとなく周りから私を虐める様に追い立てよう。

 三対一。

 うん、どう考えても私達の方に部がある。
 流石に本気で虐められたら困るけれど、そこはトレメイン夫人とアナを上手く使えば問題はないわよね。
 さぁてこれから益々愉しくなってくるわよぉ。
 
 これでサクサクと物語が進めば私は、誰もが羨む麗しの王子様と幸せで贅沢三昧の暮らしが待っているんだわっっ。
 待っていてね、私の愛する王子様マイダーリンっっ。
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